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新型コロナウイルス感染症の偽情報の削除

今回のポリシーに関する忠告は、Metaが新型コロナウイルス感染症に関連するある種の偽情報を引き続き削除するべきか、あるいは制限の緩いアプローチを採るほうが同社の価値観と人権保障責任にマッチするのかについて分析したものです。

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I. 概要

2022年7月、監督委員会はMetaから1件の諮問を受理しました。評価を求められたのは、同社が新型コロナウイルス感染症に関連するある種の偽情報を引き続き削除するべきか、あるいは制限の緩いアプローチを採るほうが同社の価値観と人権保障責任にマッチするのか、という点です。今回のポリシーに関する忠告は、この諮問に対する委員会の回答となります。

委員会は広範な調査を実施し、パブリックコメントを広く募集しました。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対して単一のグローバルなアプローチを採るべき、とのMetaの主張を踏まえると、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症について国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言し続ける限り、Metaが現在のポリシーを維持するべきだと委員会は結論付けます。つまり同社は、重大かつ差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報を引き続き削除するべきです。一方で委員会は、Metaが現時点で削除している80件の主張それぞれを再評価するためのプロセスに着手し、幅広い関係者と連携する必要があると判断します。また同社は、WHOの宣言が解除された場合に講じる措置を計画しておき、このような新たな状況において表現の自由やその他の人権を保護できるようにする必要もあります。委員会は、Metaが新型コロナウイルス感染症関連のコンテンツ削除に関する政府機関の要請の情報を公開し、同社のプラットフォームに関する独立した調査を支援するための措置を講じ、同社のプラットフォームのアーキテクチャと偽情報の関連性を調べ、全世界において新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対する理解を促進するよう強く勧告します。

背景

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが確実なものとなった2020年初頭に、Metaは新型コロナウイルス感染症関連の偽情報と認識した複数の主張をFacebookおよびInstagramから削除し始めました。このパンデミックの間に、同社が削除する新型コロナウイルス感染症関連の主張のリストは発展しています。Metaは現時点で、同社の「公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報」ポリシーに基づき、新型コロナウイルス感染症関連の約80件の偽情報の主張を削除しています。このポリシーは、「主張された新型コロナウイルス感染症治療法」の事例に関する決定における委員会の勧告を受けて設けられた、偽情報に関するコミュニティ規定の小区分です。今回のポリシーに関する忠告では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの発生中に「公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報」 ポリシーに基づきMetaが取った措置のみを対象としています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの発生中にそれ以外のポリシーに基づきMetaが取った措置は対象外です。

Metaは「公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報」ポリシーに基づき、「偽情報については、保健当局がその情報は虚偽であり差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高いと判断した場合、公衆衛生上の緊急事態の間」その情報を削除します。この基準を満たしているかどうかを判定するうえで、公的保健機関のみを頼りとしていたのです。同社が現時点で削除している80件の主張には、新型コロナウイルス感染症の存在を否定するものや、新型コロナウイルス感染症のワクチンが磁気を発生させると断言するものなどがあります。Metaは2020年3月~2022年7月の間に、FacebookおよびInstagramから新型コロナウイルス感染症関連の偽情報2,700万件を削除しましたが、そのうち130万件は異議申し立てを経て復元されました。削除の基準を満たしていない新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対しては、ファクトチェック、ラベル付け、降格が可能です。ファクトチェッカーがコンテンツを(「虚偽」や「背景の説明不足」などと)評価すると、Metaがコンテンツにその旨のラベルを付け、その話題に関するファクトチェッカーの記事にリンクを張ります。また同社は、ファクトチェッカーによってラベル付けされたコンテンツを降格します。つまり、複数の要因により、利用者のフィードで当該コンテンツが通常よりも低い頻度で、かつ目立たない形で表示されるようになります。Metaは新型コロナウイルス感染症関連のコンテンツに対して「中立的なラベル」も適用します。このラベルは「一部の承認されていない新型コロナウイルス感染症の治療薬は深刻な危害を及ぼす可能性があります」などの記述を含むもので、予防策、ワクチン、公的保健機関のリソースに関する情報を提供する、Metaの新型コロナウイルス感染症情報センターに利用者を誘導します。

Metaは委員会への諮問の中で、新型コロナウイルス感染症に関連する一定の偽情報を引き続き削除するべきかどうかを尋ねています。同社は別の方法として、削除を中止し、代わりにコンテンツの降格、第三者ファクトチェッカーへの送付、ラベル付けを実施することもできると述べています。Metaは新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対して国や地域ごとにアプローチを変えるのではなく、単一のグローバルなアプローチを採るべきだと主張しています。同社によると、ポリシーに対する国や地域ごとのアプローチを大規模に採用した場合、利用者にとっての透明性の不足や不適切な施行につながるほか、同社にはそのようなアプローチを採用できるだけのキャパシティもありません。本諮問の検討にあたり、委員会はパブリックコメントを広く募集しました。これには、市民社会との協力により開催された、全世界の人々が参加する一連のバーチャル討論会も含まれます。この機会を通じて、委員会は幅広い専門家や関係者の意見を伺いました。

主な調査結果と勧告

委員会は、世界規模の公衆衛生上の緊急事態が続く間に「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」新型コロナウイルス感染症関連の偽情報を削除し続けることが、Metaの価値観や人権保障責任に合致すると判断します。委員会は初めに、Metaが新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対して国や地域ごとのアプローチを大規模に採用することが望ましいかどうかを検討しました。しかしMetaは、利用者にとっての透明性や公平性が著しく損なわれ、ポリシー施行の誤りが著しく増加してしまうというデメリットを防ぎつつ、これを実現することは不可能だと主張しました。Metaの懸念は正当だと考えられます。しかし、この選択肢が除外されたため、新型コロナウイルス感染症関連の有害な偽情報に最適な形で対処しつつ、人権(特に表現の自由の権利)を尊重する方法に関する、関係者や委員会メンバーの立場の対立を調整しようとする委員会の取り組みは思うように進まなくなりました。今回のポリシーに関する忠告における18件の勧告は、この制約の下で導き出されました。以下はその一部の要約です。

委員会はMetaが次の対応をするよう勧告します。

「世界規模の公衆衛生上の緊急事態が続く間に差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」、新型コロナウイルス感染症に関する虚偽のコンテンツを引き続き削除するとともに、現時点で削除している80件の主張に関する透明性の高い包括的な審査および再評価に着手すること。公衆衛生上の緊急事態は、健康に対する重大かつ直接的な危険をもたらします。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対して単一のグローバルなアプローチを採るべき、とのMetaの主張を踏まえると、Metaが公的保健機関の判断に従い、差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い虚偽の情報を削除するという現在の例外的な措置によって対応することは正当化されると委員会は判断します。特に重要な点として、Metaは適切な公的保健機関と改めて連携し、同社が削除している主張を再評価するよう依頼してはいません。また、個々の主張またはポリシー全体を再評価するべく、幅広い関係者や専門家と協議しているわけでもありません。Metaがまだポリシー変更に関するデューデリジェンスのプロセス(Metaがまず果たすべき責務)を実施していないため、委員会は最も弱い立場にある人々に影響が偏る可能性のあるポリシー変更を勧告できる立場にありません。

しかし、目下の危機の初期段階はすでに過ぎ去っているので、Metaは同社の人権保障責任を果たすために、ポリシーで定められている削除基準が引き続き満たされているかどうかを定期的に評価する必要があります。したがって、削除の対象となっている80件の主張を定期的に審査するための透明性の高いプロセスを開始し、幅広い関係者に助言を求める必要があります。ある主張が差し迫った実際の危害をもたらす可能性を示す明確な根拠を関係者が提示した時点で初めて、それを削除対象の主張のリストに含めることを正当化できます。Metaは、この定期的な審査の結果を一般大衆と共有する必要があります。

国や地域ごとのアプローチの採用を検討すること。Metaは、WHOが新型コロナウイルス感染症について世界規模の衛生上の緊急事態としての指定を解除する一方で、地域の公的保健機関が引き続き公衆衛生の緊急事態としての指定を維持する場合にどうするべきかを計画しておく必要があります。委員会は、リスク評価のプロセスを開始し、この状況下で講じる措置を明確化するよう勧告します。この措置では、全世界における表現の自由を脅かすことなく、重大かつ差し迫った実際の危険を直接助長する可能性が高い偽情報に対処する必要があります。リスク評価においては、同社のポリシーを国または地域ごとに施行するアプローチが実現可能かどうかも評価する必要があります。

同社のプラットフォームのアーキテクチャによる影響を評価すること。専門家は、Metaのプラットフォームのアーキテクチャが有害な健康関連の偽情報を拡散しているとの懸念を提起しています。こうした主張を踏まえ、委員会はMetaが設計上の選択による人権への影響を評価するよう勧告します。同社は、ニュースフィードやおすすめ機能のアルゴリズムといった各種機能が有害な健康関連の偽情報をどの程度拡散しているか、そしてそれが人権にどう影響するかについて、委託による評価を実施する必要があります。

政府機関の要請に関する透明性を高めること。パンデミックのピーク時に、Metaが政府機関の要請を受けて新型コロナウイルス感染症関連のコンテンツを審査していることについての懸念が提起されました。これは特に、政府機関が平和的なデモの参加者や人権擁護活動家を取り締まったり、パンデミックの起源に関する意見交換を管理したり、公衆衛生上の危機に対する政府機関の対応を批判または疑問視している人々を黙らせたりする目的で要請を行う場合に問題となります。国連は、一部の政府機関が民主主義の理念を破壊するための口実としてパンデミックを利用している、との懸念を表明しています。Metaは、「公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報」ポリシーに基づくコンテンツ審査に関する国家的主体の要請について、透明性を高め、定期的に報告する必要があります。

独立した調査を支援し、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対する理解を促進すること。委員会には専門家から、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報や、それに対するMetaの対応の有効性を把握するための広範な取り組みが、同社のデータや調査結果へのアクセス権が限定されているために妨げられている、との意見が寄せられています。データの不足は、委員会が今回のポリシーに関する忠告の本案を評価する際にも問題となりました。委員会では、ほかのソーシャルメディア企業と比較した場合、Metaは外部研究者とデータを共有するために有効な施策を実施していると認識しています。研究者の多くが委員会に対し、CrowdTangleやFacebook Open Research and Transparency (FORT)といったMetaツールがいかに重要かを語っているからです。同時に、研究者はFORTなどのツールへのアクセスが困難であることについての不満も漏らしています。Metaは引き続きこうしたツールを提供するとともに現状よりもアクセスしやすくし、外部研究者が非公開のデータにアクセスできるようにする必要があります。また委員会は、同社が新型コロナウイルス感染症関連のポリシーを施行する取り組みについて調査の実施やデータの公開を行い、委員会と共有された「中立的なラベル」に関する調査の結果を公開するよう勧告します。最後に、Metaがグローバルマジョリティ(グローバルサウスとも呼ばれる)、研究者、大学に同社のデータに対するアクセス権を拡大するための措置を講じ、世界のデジタルリテラシープログラムを支援するよう勧告します。

新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の削除に関する公平性、透明性、一貫性を高めること。Metaはその人権保障責任を果たすうえで、同社のルールを利用者にとって分かりやすいものにする必要もあります。そのために、同社が削除している新型コロナウイルス感染症関連の主張が差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する理由をそのカテゴリごとに説明する必要があります。また、主張が虚偽であると評価した根拠を説明し、削除対象の主張のリストに加えた変更の記録を作成する必要もあります。あらゆる言語および地域において同社のルールを一貫した形で適用できるようにするために、コンテンツモデレーターが使用する社内向けガイダンスを、運用で使用する諸言語に翻訳しなければなりません。Metaは、ファクトチェッカーによるラベルに対する利用者の異議申し立ての権利を拡大し、そのような異議申し立てが当初の決定を下したファクトチェッカーによって審査されないようにすることで、利用者の救済措置を受ける権利を保護する必要もあります。

II. Metaからの諮問

1.今回のポリシーに関する忠告は、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関連したものです。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報については、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するMetaのポリシーに記載があります。当該ポリシーは偽情報に関するコミュニティ規定の一部です。2022年7月、Metaは委員会に対してポリシーに関する今回の忠告を諮問しました。その中で、Metaはこのポリシーに基づいて引き続き新型コロナウイルス感染症に関する一定のコンテンツを削除するべきか、あるいは制限の緩いアプローチを採るほうが同社の価値観と人権保障責任に合致するのではないかという質問を委員会に提示しています。

2.Metaは諮問の中で、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基づき、公衆衛生上の緊急事態が続く間、「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」偽情報を削除すると説明しています。当該ポリシーについては、以下のセクションIIIでさらに詳しく説明します。偽情報がこの基準に合致しているかどうかを判断するにあたり、Metaは知見や専門知識のある公的保健機関と連携し、特定の主張が虚偽であるか、また差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高いかどうかを評価しています。この評価はグローバルな規模で行われます。Metaは、利用者にとっての透明性や公平性が著しく損なわれ、ポリシー施行の誤りが著しく増加してしまうというデメリットを防ぎつつ、ポリシーの施行に対して国や地域ごとの大規模なアプローチを採ることは不可能だと委員会に対して明らかにしました。この高い基準を満たさない偽情報については、降格、ラベル付け、ファクトチェックといった他の措置が講じられます。

3.2020年1月から2021年2月にかけて新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対するアプローチを策定する際に(以下セクションIIIを参照)、Metaはさまざまな分野の180人を超える専門家に助言を求めました。助言を求めた専門家には、公衆衛生や感染病の専門家、国家安全保障や公共の安全の専門家、虚偽情報・偽情報の研究者、ファクトチェッカー、表現の自由やデジタル著作権の専門家などがいます。また、地域の関係者にも助言を求めました。以下で詳しく述べるとおり、Metaはさまざまな分野の専門家や世界のさまざまな地域の関係者から、時には相反する、多様な助言や見方を得ました。Metaは、現在のポリシーを採用するにあたり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりもたらされた世界規模の公衆衛生上の緊急事態を踏まえると、一定の偽情報に関連したリスクは、削除を必要とするだけの重大なものだと判断したと述べています。委員会への諮問の中でMetaは、2年以上前に新型コロナウイルス感染症関連の一定の偽情報を削除することを決定してから、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況は変化していると説明しました。こうした変化があることから、そのような偽情報の削除が依然として必要なのか否かが検討されることになりました。Metaは、委員会の検討材料として3つの変化を指摘しています。

4.Metaによると、まず新型コロナウイルス感染症に関する情報のエコシステムが変化しています。パンデミックが始まった時には信頼できる指針がなかったため、情報の空白が生じ、偽情報の拡散が助長されました。現在はこの状況が大きく変わっていると同社は指摘します。現在は、リスクが高い人がどう行動すべきかを伝え、行動に影響を及ぼすことのできるような、ウイルスに関する信頼できる情報や公的保健機関にアクセスすることができます。

5.次に、ワクチン接種、および変異株の進化により、新型コロナウイルス感染症の死亡率が2020年初頭に比べて低下しているとMetaは指摘しています。このような進展と有効なワクチンの配布に伴い、現在は新型コロナウイルス感染症の重症化を防止、抑制する手段があります。また、公衆衛生の専門家によると、現在の変異株は過去の変異株に比べて重症化しにくく、治療法も急速に進化しています。

6.また、Metaは、新型コロナウイルス感染症がそれほど深刻でない状況に進化しているかどうかという点について、複数の公的保健機関が前向きな評価をしており、「世界の一定の地域で、パンデミックはそれほど深刻でない状況に移行し始めていると一部の公的保健機関が指摘している」と述べています(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問14ページ)。この見解の裏付けとして、米国のアンソニー・ファウチ博士、欧州委員会、タイの保健大臣の発言が引用されています。

7.一方で、Metaはパンデミックの進行状況が世界全体で異なることを認めています。委員会への諮問の中で、Metaは以下のように記しています。

高所得国ではワクチン、医療、信頼できる指針が入手しやすくなっていますが、医療制度がそれほど発達していない低所得国の人がこれらにアクセスするのには遅れが生じると専門家は予測しています。現在生じている最も重大なばらつきは、先進国と(…)発展途上国との間の差異です。(…)高所得国に住む80パーセントの人は少なくとも1回ワクチン接種を受けているのに対し、低所得国に住む人の割合はわずか13パーセントです。また、低所得国では高所得国に比べると、医療制度のキャパシティが低く、経済が好調でなく、かつ政府の指針に対する信頼度が低い傾向にあります。これらすべての要因により、ワクチン接種や新型コロナウイルス感染症の感染者の治療にさらなる課題が生じます。

(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問3ページ)

Metaから委員会への質問

8.上記の事項を踏まえ、Metaは委員会に以下のポリシーの選択肢を検討対象として提示しました。Metaが提示した下記の手段については、以下のセクションIIIに詳しく記載します。

  • 新型コロナウイルス感染症関連の一定の偽情報を引き続き削除する: この選択肢は、「公衆衛生上の緊急事態が続く間、差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性がある」虚偽のコンテンツを削除するというMetaの現在のアプローチを継続することを意味します。Metaは、この選択肢ではいずれ偽情報が差し迫った実際の危害のリスクを助長する恐れがなくなった場合にはその偽情報の削除を停止することになると述べており、この判断をどのように下すべきか委員会に指針を求めています。
  • 一時的な緊急削減措置を実施する: この選択肢では、Metaは新型コロナウイルス感染症の偽情報の削除を停止する代わりに、このような情報の配信を減らします。これは一時的な措置となり、Metaはこの選択肢を採用した場合は終了時期をいつにするべきか、委員会に指針を求めています。
  • 第三者ファクトチェックを実施する: この選択肢では、現在削除の対象となるコンテンツは独立した第三者ファクトチェッカーに諮られ、評価されます。委員会への諮問の中で、Metaは「コンテンツを評価できるファクトチェッカーの数は常に限られており、Metaがこの選択肢を導入するとしたら、ファクトチェッカーは弊社プラットフォームにある新型コロナウイルス感染症関連のすべてのコンテンツを確認することはできず、一部のコンテンツは正確性のチェック、降格、ラベル付けを免れる」と指摘しています(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問16ページ)。
  • ラベル付けを実施する: この選択肢では、Metaがコンテンツにラベルを追加します。このラベルは利用者によるコンテンツの閲覧を妨げるものではありませんが、信頼できる情報へのダイレクトリンクを提供します。Metaはこれを一時的な措置と見なしており、同社がこれらのラベルの使用停止を決定する際にはどのような要素を検討すべきか、委員会に指針を求めています。

9.Metaは、これらの選択肢には、特に拡張性、正確性、影響を受けるコンテンツの量において、それぞれにメリットとデメリットがあると述べています。また、ポリシーは全世界で一貫して運用可能なでありつつ、すべての地域にとって適切なものにすべきだと強く促しています。各国ごとのポリシーに関して、Metaは「技術的な理由により、新型コロナウイルス感染症に関しては、各国あるいは各地域のポリシーではなく、全世界共通のポリシーを維持することを強く提言します」と述べています。また、委員会への諮問の中でMetaは「国レベルでポリシーを施行すると、市場審査担当者のあるグループが複数の国を担当している場合に過度な施行につながるおそれがあるとともに、コンテンツは国や地域を越えて拡散する可能性があるため、施行が不十分になるおそれもあります」としていました(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問17ページ、脚注37)(国や地域ごとの大規模な施行について詳しくは、以下の第61項を参照)。

III. 公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するMetaのポリシー

10.新型コロナウイルス感染症のパンデミック、およびプラットフォームで確認された偽情報の急増を受け、Metaは2020年1月に新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の削除を開始しました。同社のポリシー、および削除対象となる主張の種類はその後2年にかけて発展し、偽情報に関するコミュニティ規定の公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報の現在のセクション、および付随するヘルプセンターのページという形になっています。

11.偽情報に関するコミュニティ規定では冒頭、ポリシーの基本理念で、施行措置として削除、ファクトチェック、降格、ラベル付けを利用するなど、偽情報に対するMetaのアプローチを説明しています。Metaによると、「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」場合に限って偽情報は削除されます。そのうえで、ポリシーでは削除の対象となる偽情報として、(1) 実際の危害や暴力、(2) 有害な健康関連の偽情報、(3) 投票者または国勢調査への干渉、および(4) 加工されたメディア(強調は引用者による)の4つのタイプを明示しています。

12.偽情報に関するコミュニティ規定の有害な健康関連の偽情報のセクションには、(i) ワクチンに関する偽情報、(ii) 公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報、および(iii) 健康上の問題に対する有害な「奇跡的な治療法」の宣伝または擁護(強調は引用者による)という3つの小区分があります。新型コロナウイルス感染症に関する主張には他のコミュニティ規定が適用される可能性もありますが、今回のポリシーに関する忠告では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに適用される、偽情報に関するポリシーの公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報のセクションのみを対象としています。本忠告が他のポリシーに対応するものと解釈してはなりません。

新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の主張の削除

13.公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーには以下のような記載があります。

偽情報については、保健当局がその情報は虚偽であり差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高いと判断した場合、公衆衛生上の緊急事態の間、弊社はその情報を削除します。これには、個人が有害な疾病に感染したり、それを拡散させたりするリスクや、関連するワクチンを拒否するリスクを助長するものが含まれます。弊社では、世界と地域の保健機関と連携して公衆衛生上の緊急事態を特定しています。これには現在、ウイルスの存在または深刻度、治療や予防の方法、ウイルスの感染経路、免疫のある人に関する、専門の保健当局によって検証された新型コロナウイルス感染症関連の偽の主張や、新型コロナウイルス感染症に関する正しい衛生習慣(検査を受けること、社会的距離を置くこと、マスクの着用、新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種など)を阻害する偽の主張が含まれます。新型コロナウイルス感染症およびワクチンについて、弊社が許可していない偽情報の種類をまとめたルール一覧についてはこちらをクリックしてください。

14.このポリシーに基づいて、Metaは1) 公衆衛生上の緊急事態が発生した場合、2) 主張が虚偽である場合、および3) その主張が差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い場合、という3つの要素を満たす場合に偽情報を削除しています。Metaはこの基準を新型コロナウイルス感染症のパンデミックに適用するうえで、公的保健機関の結論に依拠して、削除の対象となる約80件の主張を特定しました。該当の主張(定期的に更新されます)、およびポリシーの施行方法に関するよくある質問は、こちらのヘルプセンターのページで閲覧することができます。

15.ポリシーで述べられているとおり、これらの80件の主張は以下の5つのカテゴリに分類されています。(1) 新型コロナウイルス感染症の存在を否定する主張や、その深刻度を軽視する主張など、新型コロナウイルス感染症の存在または深刻度に関する主張(例えば新型コロナウイルス感染症による死亡者はいないとする主張)。(2) 新型コロナウイルス感染症が5G技術によって伝播するという主張など、新型コロナウイルス感染症の伝播および免疫に関する主張。(3) 塗り薬で新型コロナウイルスを治療できる、または新型コロナウイルスの感染を防止できることを認める主張など、新型コロナウイルス感染症に対する確実な治療法および予防方法に関する主張。(4) 例えばマスクには有害なナノワームが含まれるとする主張や、新型コロナウイルス感染症のワクチンは人々のDNAを改変したり磁気作用を生じさせたりするという主張など、正しい衛生習慣の阻害に関する主張。(5) 病院は収益を増やしたり人々の臓器を売ったりするために患者を殺しているとする主張など、保健衛生上の基幹サービスへのアクセスに関する主張。

16.Metaは諮問において、公衆衛生上の緊急事態が存在するかどうかを判断する際には(1) 世界保健機関(WHO)が公衆衛生上の緊急事態を宣言しているかどうか、もしくは(2) WHOが伝染病、死に至る病気、あるいはリスクの高い病気と指定しているかどうかに依拠し、または(3) WHOによるリスク評価を利用できない場合には、Metaは所与の国に関して、地域の保健当局による公衆衛生上の緊急事態の指定に従うと説明しました。Metaの説明のとおり、WHOはMetaに対し、緊急事態宣言下において「暴露のリスク、感染率、暴露とリスクとの関連性、罹患率および死亡率が異常に高い場合には、個人に対して取り返しのつかない実際の危害が生じるリスクが高くなる」と助言しています(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問6ページ)。WHOは2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症の発生が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だと宣言しました。

17.Metaのポリシーによると、公衆衛生上の緊急事態という状況下で、Metaは専門家である公的保健機関に依拠して、虚偽かどうか、また虚偽の主張が「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」かどうかを判断しています。Metaは委員会に対し、現在削除の対象である主張を評価するにあたってはWHOや米国疾病対策予防センター(CDC)など、公衆衛生の専門家に依拠していると伝えました。過去には、例えばUNICEFの国別責任者やパキスタンの国民保健省(National Health Ministry)などにも助言を求めています(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問6ページ)。委員会が審査したMetaと公的保健機関との間の書簡のサンプルに基づくと、Metaが自社のプラットフォームのモニタリングを通じて一部の主張を特定し、評価を求めて公衆衛生当局にその主張を提出しています。公的保健機関自身が削除すべき主張を特定したり明確にしたりしているわけではありません。このような評価を行っているある公的保健機関とのやり取りの例では、Metaがある主張(新型コロナウイルス感染症のワクチンが心臓発作を引き起こすというもの)を特定し、公的保健機関に対し、その主張が虚偽なのか、またこの主張がワクチンの拒否につながるおそれがあるかどうかを尋ねています。この公的保健機関からの回答では、「新型コロナウイルス感染症のワクチンが心臓発作を引き起こす証拠はない」という結論を裏付ける情報源と分析が提示されています。当該機関は、ワクチン接種後、特に男性の思春期・若年成人に心筋炎(心筋の炎症)の症例が報告されていることに触れています。この公的保健機関は、「ワクチンが心臓発作(心筋梗塞)などの心臓病を引き起こすという根拠のない恐怖により、ワクチンの拒否につながるおそれがある」という結論も出しています。

18.偽情報に関するMetaのポリシーには例外が規定されています。これにより、Metaは一定の発言を削除の対象外としています。例えば、「新型コロナウイルスに関して義務付けをしても機能しない」や「ワクチン企業が私腹を肥やしたいだけだ」など、政治や政治的決定に焦点を当てた発言は許可されます。また、例えば「ブラッド・ピットの血液だけが新型コロナウイルスを治療できる[笑い泣きの絵文字2つ]」といった、明らかなユーモアや皮肉を交えてシェアされたコンテンツもポリシーに違反しません。個人的な逸話や体験を表現する主張については、特定の人の個人的体験をシェアするコンテンツであって、その人の身元が投稿で明確に言及されており、かつ、そのコンテンツが明確な主張をしておらず、行動の呼びかけが含まれていない場合には許可されます。また、例えば「ワクチンは自閉症を引き起こすのだろうか」といった、思案したり、疑問を投げかけたり、懸念を表明したりするコンテンツも許可されます。

19.Metaは、通常の大規模な施行システムである自動ツール(分類システム)、コンテンツモデレーター、および社内エスカレーションチームを利用して、偽情報に関するポリシーに列挙される主張を削除しています。同社は委員会に対し、当該ポリシーに対する違反のおそれを特定するために、19言語で分類システムを訓練していると伝えました。偽情報に関するポリシーを施行するコンテンツモデレーターには社内ガイドラインが提供されており、ヘルプセンターのページで説明されているとおり、ユーモア、皮肉、または個人的な逸話としてプラットフォームに引き続き掲載すべきコンテンツの特定方法の指針などが示されています。コンテンツの削除が行われた場合、利用者には「決定に同意しない」選択肢が認められます。審査が保証されるわけではありませんが、異議申し立てがあり、対応できる人員がいる場合には、一部の決定について審査が行われます。Metaは2020年3月から2022年7月までの間に、FacebookとInstagram全体で、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報として2,700万件のコンテンツを削除したと委員会に伝えました。2,700万件の削除のうち130万件は、Metaが評価できた異議申し立てを経て復元されました。

第三者ファクトチェックおよび偽情報の降格

20.削除対象である主張のリストには該当しないものの、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に当たる可能性があるコンテンツは、第三者ファクトチェックの対象になります。偽情報の可能性がある投稿は機械学習テクノロジーによって検知され、第三者ファクトチェッカーに諮られます。Metaは、コンテンツの審査とラベル付けを行う独立したファクトチェック団体と提携しています。Metaがファクトチェッカーのパフォーマンスを評価することはありません。組織を評価し、品質を確保するに当たっては、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)に依拠しています。IFCNは、非党派性と公平性、情報源の透明性、資金源の透明性、および明確で誠実な訂正ポリシーに対する約束などを定めたファクトチェック綱領をファクトチェック団体が遵守しているかどうかを評価します。

21.ファクトチェック待ちのリストに入れられたコンテンツは、利用者のフィードの下の方に一時的に表示されることがあります。これは特に、拡散しているコンテンツの審査前に生じます。Metaはランキングのアルゴリズムを利用してファクトチェックにかけるコンテンツの優先順位をつけており、拡散しているコンテンツはファクトチェック待ちのリストで優先されます。委員会からの質問への回答で、Metaは、ファクトチェック待ちのリストにあるコンテンツの圧倒的多数はファクトチェッカーによる審査を受けることはないとしました。Metaによると、待ちリストにあるほとんどのコンテンツが虚偽でないとのことですが、そうした主張を裏付ける証拠はMetaからは提供されませんでした。Metaによると、ファクトチェックパートナーは明らかに虚偽の主張や明確なデマであって、事実無根であり、タイムリーなもの、トレンド中のもの、重大なものを優先します。ファクトチェッカーは、Metaが提示する待ちリスト以外に、審査するコンテンツを自身で主導して見出すこともできます。

22.政治家による投稿と広告はファクトチェックの対象にはなりません。Metaによる「政治家」の定義には、「公職選挙の立候補者、現職の公職者、閣僚に指名された人、政党関係者や政党の党首など」が含まれます。Metaによると、このポリシーが定められているのは、「[報道の自由が保証された成熟した民主主義社会においては]、政治的発言は最も慎重に調査されるべきであり、[...]政治的発言を制限した場合、一般市民は公選された役職者の発言について十分な情報を得られなくなり、政治家にとっては発言に対する責任が軽くなってしまう」ためです。

23.ファクトチェッカーはコンテンツを、「虚偽」、「改変」、「一部虚偽」または「背景の説明不足」と評価することができます。これに応じてMetaはコンテンツにラベルを付け、そのトピックに関するファクトチェッカーの記事にリンクを張ります。利用者が記事を読むには、Facebookを閉じて別のページにアクセスしなければならず、これには追加データの利用が必要です。つまり、Metaのプラットフォームが無償(すなわち、利用者がMetaのアプリにモバイルアクセスするのにデータ使用量などの使用量を支払っていない)である国では、一部の利用者に追加費用が生じるということになります。「虚偽」、「改変」のラベルが付けられたコンテンツには、コンテンツにぼかしを入れた警告表示が付され、利用者はクリックをしないとそのコンテンツを見ることができません。「一部虚偽」、「背景の説明不足」のラベルが付けられたコンテンツにはぼかしは入りません。Metaは委員会に対し、2022年12月9日までの90日間で、Facebookユーザーの10%、Instagramユーザーの43%が、「虚偽」または「改変」のラベルが付けられ、コンテンツにぼかしを入れる画面が付された投稿を開き、コンテンツを見たと述べました。同期間中、平均で3%のFacebookユーザー、および19%のInstagramユーザーが、「虚偽」、「改変」、「一部虚偽」または「背景の説明不足」のラベルを付けられた投稿について、「理由を見る」のプロンプトをクリックしたとMetaは報告しています。クリックすると、利用者は、コンテンツが評価された理由とファクトチェッカーの記事へのリンクに関する情報を提供する別画面に移動します。

24.ファクトチェッカーがコンテンツにラベルを付けると、Metaはユーザーフィードにおけるそのコンテンツのランク付けを低くします。「虚偽」、「改変」、「一部虚偽」のラベルを付けられた新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に適用される降格の強度は、「背景の説明不足」のラベルを付けられたコンテンツに適用される降格の強度に比べて大きくなります。Metaによると、降格が、個々の利用者のフィードにおけるコンテンツの表示場所に及ぼす影響は一様ではありません。Metaによれば、それぞれの利用者が最も興味を持ちそうなユーザーコンテンツを表示することを目的として、利用者が見るコンテンツは各人に合わせてパーソナライズされています。コンテンツが降格すると、そのコンテンツのランキングスコアは下がります。ランキングスコアが下がっても、そのコンテンツの特定の表示数、あるいは特定の表示割合が減ることにはなりません。降格したコンテンツを特定の利用者が見る可能性は、当該コンテンツのランキングスコアが、利用者のフィードにある他のコンテンツと比較してどの程度高いかによって異なってきます。結果として、降格がコンテンツにどのようなインパクトをもたらすかは、利用者や利用者のフィードの他のコンテンツに応じて異なってきます。多数のフォロワーがいるグループや利用者によってコンテンツがシェアされる場合には、そうしたフォローや、グループやページでの定期的なアクションを理由として、そのコンテンツのランキングスコアは、フィードの他のコンテンツのランキングスコアよりも高くなる、あるいは同等となる可能性が高くなります。この場合、降格をしても、意図した効果が得られない可能性があります。

25.ページやグループで作成されたコンテンツがMetaの偽情報に関するポリシーに違反しているとファクトチェッカーが判断した場合、ページ管理者またはグループ管理者は異議を申し立てることができます。Facebookのプロフィールは、ファクトチェックのラベルに異議を申し立てる選択肢がありません。グループによる違反に関しては、iOSやAndroidのFacebookアプリ、またはウェブブラウザーから異議を申し立てることができます。ページによる違反に関しては、ウェブブラウザーを通じて異議を申し立てることはできません。Facebookヘルプセンターには、「この製品内での異議申し立て機能は、現時点では一部の国のグループ管理者とページ管理者のみご利用いただけます。それ以外の方は、これまでどおり、メールでファクトチェッカーに異議を申し立てることができます」と記載されています。

26.委員会への諮問の中で、Metaは、コンテンツを評価できるファクトチェッカーの数は常に限られていると説明しています。Metaは委員会への要請で、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報への対応で採ることができるさまざまなアプローチの評価を求める際に、仮にファクトチェックだけに依拠した場合、あるいは主としてファクトチェックに依拠した場合に、ファクトチェッカーはプラットフォームにある新型コロナウイルス感染症関連のコンテンツすべてを確認できるわけではないと説明しました。そのため、一部の偽情報は正確性のチェック、降格、ラベル付けを免れることになります。

ラベルの適用

27.Metaは、「中立的な関連情報提供の措置」(NIT)という中立的な措置のラベル、およびある事項に関する事実の関連情報提供の措置(FAXIT)という2つの措置も適用します。これらはMetaが直接適用するもので、ファクトチェッカーは関与しません。FAXITでは、利用者を情報センターに誘導する前に、投稿でシェアされるコンテンツについて状況に応じたメッセージを提示します。MetaはFAXITのラベルとして、(1) 「新型コロナウイルス感染症ワクチンは、多数の臨床試験で安全性と有効性を確認されたのち、注意深くモニタリングされています」、および(2) 「一部の承認されていない新型コロナウイルス感染症の治療薬は深刻な危害を及ぼす可能性があります」という2種類のラベルを用意しています。分類システムによって新型コロナウイルス感染症を取り扱っていると特定されたコンテンツにはすべて、ラベルが適用されます。コンテンツは正しい可能性も、虚偽である可能性もあります。ラベルはそのコンテンツについて具体的な意見を述べているわけではありません。NITはすべて、Metaの新型コロナウイルス感染症情報センターに利用者を誘導します。

28.今回のポリシーに関する忠告をめぐって議論している最中に、Metaから委員会に対し、2022年12月19日からNITの規模を縮小する予定だと連絡がありました。この決定は、Metaの製品・インテグリティチームがNITの有効性について実施した世界規模の実験結果を基に下されたものであり、プラットフォームにおける新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の表示頻度を抑制することを目的としています。テストには、何の制限もなく新型コロナウイルス感染症に関するNITを見続けるコントロールグループが参加するとともに、別のテストグループが3つ設定されました。1つ目は、新型コロナウイルス感染症に関するNITを3日でそれぞれ1件見ることができるグループ、2つ目は新型コロナウイルス感染症に関するNITを30日でそれぞれ1件見ることができるグループ、3つ目は全くラベルが表示されないグループです。Metaによると、コントロールグループを含む全グループの中で、信頼できる情報の平均クリック率が最も高かったのは、2つ目のグループ(新型コロナウイルス感染症に関するNITを30日でそれぞれ1件見ることのできるグループ)でした。NITを見るのに費やされた平均時間も、このグループが最長でした。また、コントロールグループとテストグループとの間で、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の表示頻度に「統計的に有意な後退」はありませんでした。実験結果に基づき、Metaは、2022年12月19日よりプラットフォームで利用者が閲覧できる新型コロナウイルス感染症関連のNITの数を、新型コロナウイルス感染症関連の各ラベルに30日で1件に制限したことを委員会に伝えました。その後、利用者に表示されるラベルの数が少なくなるよう、新型コロナウイルス感染症に関するすべてのNITの利用を停止したと連絡がありました。これは、他の公衆衛生上の危機でもNITを実効性のあるものとするためです。

ペナルティ

29.Metaは、偽情報の拡散に影響を与えるペナルティをアカウントレベルとグループレベルで適用しています。このポリシーに基づき削除されたコンテンツや、「虚偽」または「改変」のラベルを付けられたコンテンツを投稿するプロフィール、ページ、グループにはストライクが適用されます。ストライク回数の基準を満たすと、おすすめから削除され、収益化ができなくなるとともに、そのページやグループへの訪問者には当該ページが偽情報をシェアしたことを知らせるポップアップが表示されるようになります。また、ヘルプセンターのページによると、「弊社の新型コロナウイルス感染症およびワクチンに関するポリシーに違反するコンテンツをシェアした、プラットフォーム上でワクチン接種を思いとどまらせるような情報を拡散することを目的とする」ページ、グループ、およびInstagramアカウントは削除される場合があります。

IV. 外部関係者

30.今回のポリシーに関する忠告を練る過程で、監督委員会はいくつかの方法で関係者やMetaと接触しました。

パブリックコメント

31.今回のポリシーに関する忠告に関連し、監督委員会には2022年8月に、181件のパブリックコメントが寄せられました。地域別の内訳としては、ラテンアメリカ・カリブ海地域からが4件、中央・南アジアからが5件、アジア太平洋・オセアニアからが8件、ヨーロッパからが81件、米国およびカナダからが83件でした。中近東・北アフリカまたはサブサハラアフリカからはパブリックコメントは寄せられませんでした。

32.提出意見には、以下のような内容がありました。

  • マレーシアにある政策研究所、Khazanah Research Instituteからの提出意見(PC-10703)は、健康関連の信頼できる情報へのアクセス水準が国ごとに異なること、また、偽情報をモデレーションの対象としないリスクの水準がそれぞれ異なることを強調しました。グローバルなアプローチが必要なのであれば、Metaが慎重すぎるくらいに慎重な立場をとり、新型コロナウイルス感染症関連の有害な偽情報を引き続き削除するよう提言しています。また、「差し迫った実際の危害」の明確な定義がない点や、この基準の使用について有効な評価を確保するために、文脈の理解、継続的なモニタリング、施行の透明性が重要である点についてもコメントがありました。
  • アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union)からの提出意見(PC-10759)では、事実とフィクションの区別や、意見と経験、事実の主張の区別を大規模に行うことが難しいことから、許可されるべき発言をMetaが抑え込むことになるのではという懸念が提起されました。
  • 米国の非営利団体、Asian Americans Advancing Justiceからの提出意見(PC-10751)では、米国にウイルスを持ち込んだ責任がアジア系アメリカ人にあるとする「罪の転嫁」について指摘しました。
  • エジンバラ大学のSimon Wood教授からの提出意見(PC-10713)は、複雑な科学論文やエビデンスを効果的にファクトチェックするための技術的な知識がファクトチェッカーに欠けているのではないかという懸念を強調しました。
  • メディア・マターズ・フォー・アメリカ(Media Matters for America)からの提出意見(PC-10758)は、Metaのクロスチェック制度に、偽情報に対応する取り組みの効果を薄れさせる影響があると、注意を喚起しました。有名人、政治家、ジャーナリストなどの著名な利用者は、コンテンツの違反に対して「よりゆっくり、あるいはより寛大な施行が認められて」いたため、プラットフォームに偽情報を引き続き掲載することが認められていました。
  • 一部の提出意見は、Metaの影響が及ぶ範囲と偽情報の拡散におけるMetaのシステムの役割を踏まえると、Metaは公共の安全に対するリスクに対処する責任を負っている、と指摘し、危害のリスクに対処する際にラベル付けや降格が適切なのかどうか、懸念が提起されました。例えば、Center of Internet and International Studiesのシニア・バイス・プレジデントからの提出意見(PC-10673)は、政治家や著名なインフルエンサーが広める偽情報に対処するのに、ラベルでは不十分ではないかという懸念を強調しました。その理由として、「単に投稿にラベル付けするだけでは潜在的なリスクに対応するのに不十分です。死や重大な病気の危険性を高めるような虚偽の情報の公開を許可することは、責任の放棄に当たります」としています。
  • 一部の提出意見は、偽情報を削除するのではなく、ラベル付けや降格を利用するよう提言していました。ノースイースタン大学およびメキシコ国立自治大学(UNAM)のSaiph Savage助教からの提出意見(PC-10519)では、先住民族コミュニティが「宗教的信仰により、新型コロナウイルス感染症を治療するベストプラクティスについて異なる形で意見を表明している」としたうえで、削除のポリシーとそれに関連したペナルティが先住民族コミュニティと先住民族の意見にもたらす影響について注意を喚起しました。

33.今回のポリシーに関する忠告に関して提出されたパブリックコメントを読むにはこちらをクリックしてください。

地域の関係者との討論会

34.委員会は、地域の関係者との一連の討論会を通じて、関係者とさらなる議論を交わしました。委員会は市民社会団体と協力して、北米、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア、ヨーロッパの関係者らと6回の討論会を開催しました。これらの討論会を通じて、委員会は約100名に及ぶファクトチェック団体の代表者、公衆衛生機関と公衆衛生の専門家、偽情報の研究者、デジタルリテラシーとコミュニケーションの専門家、人権運動家と議論しました。こうした接触は、率直な議論の場を確保し、参加者を保護するために、チャタムハウスルールの下で開催されました。

35.これらの協議では、以下のテーマや問題が論じられました。

  • 全地域で共通のテーマ: Metaのデータと社内調査結果へのアクセス権が限定されているため、データが不足しており、各国での偽情報の規模とMetaの既存ポリシーの影響を測定するのが困難であること。かなりの数の偽情報が、ウイルスの深刻度、家庭療法・代替療法(漂白の促進を含む)、パンデミックの度合いと5G技術との関連性、ワクチン接種反対に関する偽情報であること。削除ポリシーにより、発言を抑え込み得る過度な施行につながるのではないかという懸念があること。偽情報を促進するようなFacebookの基礎的な構造に対処する必要があること。偽情報を拡散する人の多数が、金銭的・政治的動機があってコンテンツを促進していること。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報は公衆衛生上の危機を深刻なものにするだけでなく、公共機関、科学的なコミュニケーション、ワクチンなどの科学的・医学的な処置に対する人々の信頼を損なうこと。
  • ラテンアメリカの関係者が特定したテーマ: ファクトチェックは有効な手段となり得るものの、偽情報にラベルが付けられるのは、コンテンツがターゲットオーディエンスにリーチした後であることが多いこと。ファクトチェックは規模を拡大することができず、また、英語以外の言語で対象とできる数が著しく少ないという懸念があること。偽情報を疑う科学者に対して嫌がらせが生じること。ファクトチェッカー個人に脅しや嫌がらせが生じており、身体の安全に対する恐怖から、国や地域を逃れた人もいること。ファクトチェック団体がファクトチェックに関して訴えられており、訴訟の防御を行わなければならず、既に限定されているリソースがさらに枯渇していること。政治家や著名人がファクトチェックの対象とならないこと。偽情報のキャンペーン、特に悪評の高いインフルエンサーや、政治的・経済的関心のある人が促進するキャンペーン(新型コロナウイルス感染症の効果のない代替薬の促進など)に効果的に対抗するための知識や能力を、公衆衛生の専門家や医療従事者が有していないこと。
  • 北米の関係者が特定したテーマ: 偽情報への対処がかなりの時間とリソースを要し、医療従事者が心身共に消耗してしまい、医療従事者の大きな負担となっていると医療専門家が報告していること。コンテンツを削除された利用者が利用できる異議申し立てのメカニズムを、より公正でより優れたものとする必要があること。偽情報の表示頻度やさまざまな介入の有効性を調査する研究のほとんどが、米国や西欧に焦点を当てているという懸念があること。ファクトチェックは規模を拡大することができず、また、英語以外の言語で対象とできる数が著しく少ないという懸念があること。アカウントに対してより効果の高いペナルティが必要であること。偽情報の削除に一貫性がないと、既存の陰謀説を改めて認めるようなことになりかねないという懸念があること。動画フォーマットに対するコンテンツモデレーションが難しいこと。
  • アジアの関係者が特定したテーマ: パンデミックが始まった際に偽情報が広まり、ソーシャルメディアや伝統的なメディアを通じてこれらが拡散していること。複数の国において偽情報の語り口が、ウイルスの拡散者として、外国人労働者や宗教的少数派などのマイノリティや弱い立場にある人々を標的としていること。偽情報が発生するペースでファクトチェックを進めることはできず、ファクトチェックは遅きに失することが多いこと。マスコミを標的にして反対意見を封じるために、政府が偽情報の脅威を利用していること。ファクトチェックを受けた記事は、偽情報を含むコンテンツと同様にアクセスしにくい、あるいは説得力がないこと。同一、あるいは類似の語り口がある国から別の国に広がっていくため、地域にあるファクトチェック団体間で連携が増えると有益であること。多くの国で話されている多様な言語でファクトチェック記事を提供するリソースがファクトチェック団体にはないこと。
  • アフリカの関係者が特定したテーマ: 偽情報の拡散者として、アフリカの宗教指導者らがひときわ目立っていたこと。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の拡散者として、政府や野党がひときわ目立っていたこと。政府や公的機関への不信感が、偽情報が根を下ろす恰好の材料となったこと。公的保健機関は広報活動において深刻な課題に直面しており、公的保健機関の有効性とリソースの可用性という点においては各国間で大きなばらつきがあること。ファクトチェックはすべての言語で利用できるわけでなく、これによりファクトチェックの効果が限定的になっていること。
  • ヨーロッパの関係者が特定したテーマ: 偽情報による影響は、デジタルリテラシー、政府や公的保健機関への信頼感、開かれたメディア環境の水準に応じて、国ごとに異なること。偽情報の削除により、社会的関心事に対するオープンな議論を抑え込むことになると懸念を提起している人がいること。偽情報によって最も影響を受けるのは、免疫不全の人、子ども、デジタルリテラシーが低い人、多様なメディアにアクセスしにくい人、適切な医療制度にアクセスしにくい人など、最も弱い立場にある人々であると主張する人がいること。偽情報には、意思決定プロセスに対する抑止効果があること。マスクの利用や社会的距離戦略といった公衆衛生上の措置について、オープンに議論できるような措置の採用が必要だとする人もいること。あるプラットフォームで削除された偽情報は容易に別のプラットフォームに移動することから、協調的なアプローチが必要だと指摘する人がいること。虚偽情報に対しては、対応型のアプローチではなく、予防型のアプローチを設計する必要があること。Metaのプラットフォームで、適切で正確な情報を促進する必要があること。

Metaの参加

36.ポリシーに関する忠告に関してMetaから諮問があった後、2022年7月から12月までに委員会はMetaに50件の質問を書面で提出しました。3回にわたる質疑応答セッションで、Metaはこれらの質問に書面または口頭で回答しました。このうち、40件については全面的な回答を得られ、10件の回答は部分的なものでした。回答が部分的だったものは、地域・言語ごとにデータを分類するよう求める要請、さまざまな施行措置の有効性に関する社内調査、ポリシーを立案する際にMetaが両立しない考慮事項や専門家のアドバイスを比較検討する方法に関連した内容でした。委員会が提出した質問内容は、Metaのプラットフォームでの新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の表示頻度に関するMetaの社内データや社内調査結果で、全世界を対象としたものおよび国・言語ごとに分類したものに関する内容、削除ポリシーを施行するのに用いられるプロセスと措置、削除数のデータに関する内容、偽情報に関するコミュニティ規定に対する施行データの公表に関する内容、削除ポリシーを策定、施行する際の公的保健機関や公衆衛生の専門家の役割に関する内容、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の削除の効果と影響の調査に関する内容、ファクトチェックや中立的なラベル、降格など、その他の措置の効果と影響の調査に関する内容、第三者ファクトチェック団体の役割に関する内容、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に適用されるペナルティに関する内容、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーを実施する社内ガイドラインに関する内容、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーの有効性に対するクロスチェックプログラムの影響をMetaが評価したのか否かに関する内容、ステークホルダーエンゲージメントのプロセスとポリシーの策定過程で協議した専門家、および寄せられた意見をMetaが評価した方法に関する内容、一部の国だけで削除を施行する二層型のポリシー施行を採用する実現可能性に関する内容、デジタルリテラシーへの投資などのさらなる代替措置に関する内容でした。

V.公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーを委員会が分析、評価する枠組み

37.Metaは諮問において、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基づいて、新型コロナウイルス感染症に関連するある種の偽情報を引き続き削除するべきか、あるいは制限の緩いアプローチを採るほうが同社の価値観と人権保障責任にマッチするのかという点を委員会に問いました。この問いに答えるに当たり、委員会は、現時点において同ポリシーに必要性と相応性があるかどうか、あるいは新型コロナウイルス感染症に関連した偽情報に対処するのにMetaが制限の緩いアプローチを採るべきかどうかという点を含め、同ポリシーがMetaの価値観と人権に関する約束に合致しているかどうかを分析しています。この分析から得られた勧告については、ポリシーに関する本忠告の最終セクションに記載しています。

38.Metaは、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーを策定する際に実施した戦略の概要説明において、リスクや軽減措置の評価には、さまざまな分野の専門家やさまざまな地域の関係者の間でかなり大きな相違がある点に注意するよう促しています。委員会も、独自に行った調査やステークホルダーエンゲージメントの中で、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報をプラットフォームに残す際に伴うリスクや、リスクに対処する際の各種措置の有効性について、全く異なった対立する立場の意見を伺いました。

39.新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の問題や、そのような偽情報が特に最も弱い立場にある人々にある人の人権、生命、健康に対して示すリスクに対して、合意できる単一の解決策は存在しません。より地域に根差したアプローチを採れば、偽情報と差し迫った実際の危害との間で必要となる関連性をより良い形で規定できるでしょう。一方で、委員会は、既存システムの現在の限界と、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の語り口が世界中に広がる状況に関してMetaが表明している内容を考慮する必要がありました。この懸念に対する委員会メンバーの反応は異なっており、今回のポリシーに関する忠告は、可能な範囲で委員会の多様な見方を調和させています。委員会の忠告は、Metaの技術的限界とされる事項を考慮したうえで、公衆衛生上の緊急事態の渦中において新型コロナウイルス感染症に関連した偽情報に対する世界各地で異なるアプローチを考慮する必要性について、慎重に、妥協しつつ導かれたものです。そのため、本忠告は、委員会の各メンバーの個人的見解を反映したものでない場合があります。

Metaが重んじる価値観

40.Metaが重んじる価値観は、Facebookコミュニティ規定の「はじめに」の部分にその概要が示されており、そこには「意見」の価値観が「何よりも大切」であることが記されています。Metaは他の4つの価値観を重んじることを目的として、「意見」を制限します。本事例に関連するのは、「安全性」と「尊厳」という2つの価値観です。「安全性」の価値観を守るため、Metaは「身体の安全に危害を及ぼすリスクにつながり得るコンテンツを削除」しています。「尊厳」の価値観では、「すべての人の尊厳と権利は平等」とし、利用者には「他の人の尊厳を尊重し、嫌がらせや誹謗を行わないこと」が期待されると述べています。

41.委員会は、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するMetaのポリシーが、「意見」、「安全性」および「尊厳」というMetaの価値観に適合したものだと考えます。公衆衛生上の緊急事態が続く間、危害のリスクは重大であると同時に、健康に関する偽情報が「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」ことから、「意見」の価値観は「安全性」の価値観に資することを目的として制限することができます。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報による差し迫った危害は、免疫障害を持つ人やその他の基礎疾患がある人、障害を持つ人、貧しい地域社会、高齢者といった最も弱い立場にある人々や、医療従事者に偏った形で降りかかります。

Metaの人権保障責任

42.2021年3月16日、Metaは人権に関する企業ポリシーを発表し、その中で、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)に従って権利を尊重することへの決意の概要を示しました。UNGPsは、国連人権理事会により2011年に採択された、人権に関して民間企業が負う責任について自主的な枠組みを定めた基準です。

43.UNGPsの原則12によると、人権を尊重する企業の責任は国際的に承認された人権に拠っており、それは少なくとも、国際人権章典に規定されている人権と理解されます。国際人権章典は、世界人権宣言、市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)、ならびに経済的・社会的および文化的権利に関する国際規約(ICESCR)で構成されます。この責任は、企業が「他者への人権侵害を回避し、企業が関与した人権への悪影響に対処すべき」ことを意味します(原則11)。企業は、「(a) 企業活動による人権への悪影響の惹起またはその助長を回避し、惹起した際には対処すること。(b) 企業活動と直接関連する、または取引関係による製品もしくはサービスに直接関連する人権への悪影響については、企業がその惹起に寄与していなくても、回避または軽減に努めること」ことが期待されます(原則13)。

44.また、原則17には、「人権への悪影響を特定し、予防し、軽減し、対処方法を説明する」ために、企業が「人権デューデリジェンスを実施」すべきだと記載されています。この手続には、現実のおよび潜在的な人権への影響の評価、調査結果の統合と対処、対応の追跡調査、対処方法の周知も含める必要があります。人権に関するリスクは企業活動の状態やその変遷により時間とともに変化する可能性があることを踏まえ、人権デューデリジェンスを実施する責任は継続的な性質を有します。さらに、原則20では、企業は適切な質的・量的指標に基づいて、人権への悪影響を受けた利害関係者を含む社内外からの意見を活用し、その対応の実効性を追跡調査すべきであると規定しています。

45.今回のポリシーに関する忠告で委員会は、次に掲げる人権基準に基づいて分析を行いました。

  • ICCPR第19条第2項で保護される表現の自由の権利。同条では、国境を問わずあらゆる媒体を通じた表現の自由に対する幅広い保護を規定しています。表現の自由の権利は、あらゆる種類の情報を求め、受け、伝える権利にまで及びます。
  • 生命に対する権利(ICCPR第6条): すべての人間が有する、生命に対する固有の権利。
  • 健康に対する権利(ICESCR第2条および第12条): すべての者が有する、到達可能な最高水準の身体および精神の健康を享受する権利。第12条第2項は、この権利の実現を達成するためにとる措置には、「病気の場合にすべての者に医療および看護を確保するような条件の創出」が含まれると規定しています。これには、健康関連の教育や情報へのアクセスといった「健康の基礎となる決定要因」のほか、「地域社会、国家、国際レベルにおける健康関連のあらゆる意思決定への住民参加」も含まれます(ICESCRに関する一般的意見14、第11項)。情報へのアクセスのしやすさには、健康に関する情報および考えを求め、受け、伝える権利が含まれます。健康に対する権利を尊重するということは、公衆衛生に関するテーマの正当な議論を保護するということを意味します。
  • 科学の進歩およびその利用による利益を享受する権利(ICESCR第15条第1項(b))
  • 差別を受けない権利(ICCPR第26条): 第26条は差別を禁止し、保護特性を根拠とした差別に対する平等かつ効果的な保護をすべての人に保障しています。
  • 実効性のある救済を受ける権利(ICCPR第2条)

46.表現の自由に関する国連特別報告者は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという状況において表現の自由に対する権利が重要であることを強調しており、「情報へのアクセスを促進することで、健康、生命、自律性、適切なガバナンスの促進が強化される」と指摘し、「見解に基づく差別をしないよう警告」しています( A/HRC/44/49、第2項、第52項)。公衆衛生上の緊急事態が続く間、偽情報は、健康に対する権利や生命に対する権利の保護に必須である、信頼できる情報や健康関連の指針やリソースにアクセスする権利に大きな影響を及ぼす可能性があります。国連特別報告者が指摘しているとおり、「嘘やプロパガンダは、人々から自律性、批判的に思考する能力、自分自身や情報源に対する信頼、および社会状況を改善するような議論に参加する権利を奪う」ことになります( A/HRC/44/49、第60項)。また、特別報告者は、「利用者をプラットフォームに引き付けておく扇情的なコンテンツを助長するよう設計されたアルゴリズムやビジネスモデルによって、虚偽の情報が拡散されている」状況について指摘し、企業に対し、「コンテンツモデレーションの改善はもとより、ビジネスモデルの見直しも行い、このような懸念に対応する」よう呼びかけています( A/HRC/47/25、第16項、第95項)。

47.第19条は、合法性(明確性)、正当性、および必要性という3つのテスト(相応性の評価も含む)という、局限された特定の条件を満たす場合に表現の自由に対する権利を制限することを許可しています。意見および表現の自由に関する国連特別報告者は、ICCPR第19条第3項がプラットフォームのコンテンツモデレーション慣行の指針として有益なフレームワークであること、また企業が自社のコンテンツポリシーを人権原則に関連付けるべきであることを提言しています(A/HRC/38/35、第10-11項、A/74/486、第58項)。ICCPRは国家を対象としているため、Metaに対して義務を生じさせるものではありませんが、同社はUNGPsで定められている人権尊重の遵守に積極的に取り組んでいると委員会は認識しています(A/74/486、第47- 48項)。このため、表現の制限を正当化するために国家が満たさなければならない高い基準と、Metaのポリシーが異なる場合、Metaは、尊重することを約束している人権基準に沿って、ポリシーの違いについて理にかなった説明をしなければなりません(第47- 48項)。

合法性(規則の明確性とわかりやすさ・閲覧可能性)

48.表現の自由に対する制限は、どのようなコンテンツがプラットフォーム上で認められ、どのようなコンテンツが認められないかに関する指針をユーザーやコンテンツの審査担当者に提供できるように、アクセスしやすく、かつ適用範囲、意味合い、効果の点で十分に明確である必要があります。明確さや正確さに欠けると、一貫性のない、恣意的なルールの施行につながる可能性があります(A/HRC/47/25、第40項)。

49.委員会は、「主張された新型コロナウイルス感染症治療法」に関する決定[2020-006-FB-FBR]で、Metaが「保健衛生にかかわる偽情報に関する明瞭でわかりやすいコミュニティ規定を策定し、既存のさまざまな規則を1か所にまとめ、明確なものにする(偽情報のような重要な用語を定義することも含まれます)よう勧告します。この規則策定作業は、利用者にとってより明確な規則にするために、「[これらの]規則の解釈および適用に見られる微妙な差異を説明する詳細な仮説」を伴って行われるべきです」としています。委員会からの勧告を受けて、Metaは偽情報に関するコミュニティ規定を作成しました。また、ヘルプセンターで、削除の対象となる主張のリストと、ポリシーの施行方法に関するよくある質問を提示する記事も公開されました。記事には、同社がポリシーに基づき、ユーモアや皮肉、個人的な逸話に対処する方法についても記載されています。委員会はMetaがこれらの措置を講じたことを高く評価します。

50.同ポリシーに基づいて削除される主張の内容は、範囲が広いか、具体的かという点で多様です。例えば、現在削除対象である主張では、Metaが細かな規定を設けている場合もあれば(例: 「新型コロナウイルス感染症の社会的距離戦略は単に5G無線通信技術のインフラストラクチャを設置するためのものであるとする主張」)、より幅広い文言で表現されている場合もあります(例: 「社会的・物理的な距離を確保することは新型コロナウイルス感染症拡散の予防に役立たないとする主張」)。委員会は、このような各主張における制限が十分に明確かどうかを分析することはしていません。正確さと明確さを確保する責任は、まずはMetaが負うべきものだからです。委員会は、どのような主張によって施行の不足と過度な施行がシステム上生じたかについて、Metaが情報収集すべきだと指摘します。このような情報により、関連する曖昧さの問題が示されるかもしれません。また、委員会は、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーに基づいて削除対象となる具体的な主張がヘルプセンターのページで提供されていることに注目しています。このページには、主張が追加、削除、編集された時期が分かるような変更履歴がありません。

51.公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーをより合法性の基準に合致させるため、委員会は、勧告1、2、3、4および11を行います。これらについては以下のセクションVIで詳しく説明します。

正当な目的

52.表現の自由を制限するには、正当な目的を追求するものである必要があります。正当な目的には他者の権利や公衆衛生の保護などがあります。規約人権委員会は、ICCPRおよびより一般的な国際人権法で認められている人権を含める形で「権利」という用語を解釈しています(一般的意見34、第28項)。

53.公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するMetaのポリシーは、衛生上の危機が続く時期に公衆衛生を守るという正当な目的、ならびに個人が有する、情報にアクセスする権利、生命に対する権利、健康に対する権利、科学の進歩およびその利用による利益を享受する権利、差別を受けない権利を保護するという正当な目的に向けたものです。

必要性と相応性

概要

54.表現の自由に対する制限は、「その保護機能の達成に適したものでなければならず、その保護機能を達成する可能性がある手段の中で最も干渉性の低いものでなければならず、保護すべき利益に相応でなければなりません」(一般的意見34、第34項)。

55.以下で説明する理由により、委員会は、公衆衛生上の緊急事態が続く間、「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の削除をMetaに認めるポリシーは必要かつ相応なものだと判断しています。このため、原則として、当該ポリシーは同社が重んじる価値観と人権保障責任に適合しています。国連の公的保健機関は公衆衛生上の緊急事態を宣言することにより、異常事態が生じていて、「重大かつ直接的な危険」をもたらす可能性がある病気の世界的拡大を通じて、この異常事態が公衆衛生や人の生命にとってのリスクとなることを確認しています(WHO国際保健規則2005)。非常に不確実で、危険かつ死に至る結果をもたらす病気である新型コロナウイルス感染症に関して、WHOが世界的な公衆衛生上の緊急事態に関する宣言を出していることを踏まえ、委員会は、Metaの対応が相応のものだったと判断します。このような緊急事態において、健康に関する一定の有害な偽情報は、特に大規模に配信されたり著名なインフルエンサーによって配信されたりした場合には重大な公衆衛生上の危害につながり、Metaのプラットフォーム内外の個人の権利に悪影響を及ぼす可能性があると監督委員会は理解しています。委員会は、公衆衛生上の緊急事態の一番のピーク時に、偽情報に関する個々の主張について数多くの専門家と着実に事前相談することは不可能だろうと認識しています。Metaのアプローチの相応性を評価するにあたり、委員会は、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対して国や地域ごとのアプローチをとることは不可能だというMetaの見解も考慮しました。

56.一方で、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況の変化に伴って、必要性や相応性の捉え方も必然的に変化しています。委員会は、新型コロナウイルス感染症の影響は世界で異なっていると認識しています。影響は、ウイルスの広がり、国の保健制度、新型コロナウイルス感染症に関する情報を受け取り共有できる市民空間の質などによって変わってきます。WHOによる新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言は引き続き有効ですが(2023年1月に継続が発表されました)、世界の多くの地域で新型コロナウイルス感染症の症状は弱まり、緊急措置は劇的に縮小しています。このため、相応性のテストを満たしたグローバルなアプローチを実施することは難しくなります。下記の勧告1で示すとおり、Metaは、削除対象の80の主張がもはや虚偽、あるいは「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」状況でないのかどうかを判断するために、透明性の高い包括的なプロセスを開始すべきです。このプロセスには、反対意見を聴取、考慮するためのメカニズムを盛り込む必要があります。この際には、科学界、表現の自由の専門家、オンラインで偽情報が出回る方法とその影響について専門知識を有する人の多種多様な見方を聴取、考慮すべきです。また、委員会は下記の勧告4において、一部の国で持続する人権上のリスクを特定するプロセスを開始するとともに、世界的な衛生上の緊急事態が終了した際にリスクを軽減するために採る、国や地域により即したアプローチを計画しておくようMetaに求めます。

関係者から寄せられた意見

57.委員会には、世界各地域の関係者から、ファクトチェッカー、科学の専門家、公的保健機関が継続的に接触できない、知名度のある政治家、宗教指導者、インフルエンサー、医療当局が偽情報を助長したことについて意見がありました。また、各地域の関係者から、代替療法の利用やワクチン接種の希望に偽情報が及ぼす影響についても意見を聞きました。関係者らは、偽情報が公衆衛生上の指針に従ったり予防措置を採用したりする個人の意思に影響を及ぼしたと指摘しました。関係者らは、この種の偽情報が予防措置やリスク管理を妨げると強調しました。こうした偽情報は次に、一般の人に影響を与え、免疫障害を持つ人や障害を持つ人、基礎疾患がある人、高齢者、貧しく社会の隅に追いやられたコミュニティといった弱い立場にあるグループに偏って影響を及ぼします(新型コロナウイルス感染症関連のより詳しいデータについては、WHOのダッシュボードを参照)。オンラインの偽情報による影響に関して行われた確固たる研究は、公衆衛生上の指針の無視が増加し、将来的に診断検査やワクチンを受ける可能性が低下することを示しています。委員会は、科学的権威や公的保健機関への信頼の低下など、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に起因する害が他にも報告されていると把握しています。これにより、新型コロナウイルス感染症や他の公衆衛生上の危機に対して公衆衛生上の措置を効果的に実施することが妨げられます。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の害として他に報告されているものには、ファクトチェック団体やファクトチェッカー個人に対する直接の攻撃、嫌がらせ、戦略的訴訟などがあります。

58.また、専門家は、Metaが新型コロナウイルス感染症関連の偽情報を削除し始めてからプラットフォーム上の偽情報の量が全体として大幅に減少したことを指摘しており、こうした措置がなければ偽情報は再び増加し、Facebookなどのソーシャルプラットフォームではワクチン反対のコンテンツが議論の中心になるだろうと主張しています。これらの専門家は、Metaのデータや社内調査結果が透明性に欠き、これらにアクセスできないことが、偽情報に対処する措置(削除を含む)の有効性について明確な証拠を得る妨げになっていることを指摘しました。一方で、世界中の関係者が委員会に対し、人命の喪失の広がりや数えきれないほどの人の健康リスクが継続している限り、Metaは緊急措置を継続するとともに、間違いを犯すにしても、リスクの高い人、特に最も弱い立場にある人々の命を救って失敗する方を選ばなければならないことを受け入れる必要があると主張しました。新型コロナウイルス感染症に関して信頼できる科学的情報を入手できるかどうかは、パンデミックが始まったときから大幅に改善しましたが、こうした情報にアクセスできるかどうかは国や地域社会によって異なります。また、虚偽の情報や誤解を招くような情報の規模が大きいことから、世界中の人が既存の科学的情報にアクセスしてそれを評価することが難しくなっており、アクセスする利益を揺るがしています。これに関連して、例えば、マレーシアにある政策研究所、Khazanah Research Instituteからの提出意見(PC-10703)は、健康関連の信頼できる情報へのアクセス水準は国ごとに異なること、また、偽情報をモデレーションの対象としないリスクの水準がそれぞれ異なることを強調していました。世界の他の地域の他の専門家や関係者、特に所得水準が低い国の専門家や関係者も、この見解を支持しました。Khazanah Research Instituteからの提出意見は、グローバルなアプローチが必要なのであれば、Metaが慎重すぎるくらいに慎重な立場をとり、新型コロナウイルス感染症関連の有害な偽情報を引き続き削除すべきだと提言しています。

59.委員会への諮問でMetaが認めているとおり、パンデミックの進行状況は世界中で異なっており、今後もこのような状態が続きます。重大な違いとしては、ワクチンの接種率、医療制度のキャパシティとリソース、信頼できる指針に対する信頼度があります。これにより、ウイルスの影響は、さまざまな国の最も弱い立場にある人々に偏ることになります。米国やその他の世界各国ではワクチンが開発され、利用しやすい状態になっていますが、これは世界的な動向ではありません。Metaは、「高所得国に住む80パーセントの人は少なくとも1回ワクチン接種を受けているのに対し、低所得国に住む人の割合はわずか13パーセントです。また、低所得国は医療制度のキャパシティが低く、経済が好調でなく、かつ政府の指針に対する信頼度が低い傾向にあり、これらすべての要因により、ワクチン接種や新型コロナウイルス感染症の感染者の治療にさらなる課題が生じます」と述べています(Metaによるポリシーに関する忠告の諮問15ページ(2022年7月))。ワクチン接種率に大きなばらつきがあることを示す例をいくつか挙げると、2023年2月時点で、イラクの人口のうち初回接種を完了しているのは20%未満であり、追加接種を受けているのは1%未満です。ブルガリアでは、初回接種を完了したのは人口の約30%です。初回接種率はシリアでは13%、パプアニューギニアやハイチでは5%未満です。委員会が助言を求めた専門家には、グローバルなポリシーやアプローチを採るに当たって、西洋諸国に圧倒的に焦点を当てた情報やデータに依拠することの危険性を警告する者もいました。これらの専門家は、偽情報や虚偽情報に関する実証的研究のほとんどが狭い地理的視点に基づいていることも指摘しています。

60.WHOは2023年1月、「オミクロン株の感染がピークを迎えた1年前の時期に比べると世界の状況は良くなっているものの、世界で170,000人を超える人がここ8週間で新型コロナウイルス感染症関連で死亡したと報告されて」おり、医療制度は「新型コロナウイルス感染症とインフルエンザやRSウイルスの患者の治療、医療従事者の労働力不足、医療従事者の疲弊と現在戦っている」と述べました。同時にWHOは、「新型コロナウイルス感染症への対応は、最も必要としている人、高齢者、医療従事者に[ワクチン、治療、診断を]提供できないあまりに多くの国々で引き続き停滞している」と強調しました。WHOの委員会は、「ワクチン接種へのためらいや偽情報の継続的拡散が、重要な公衆衛生介入を実施するうえで、引き続き必要以上のハードルとなっている」と述べています。

グローバルなアプローチを採るべきというMetaの主張

61.パンデミックの進行状況が世界各地で異なっており、先進国と発展途上国の間に最も大きなばらつきがみられることをMetaは認めています。委員会の指針を求めるに当たり、同社は、国や地域ごとの施行措置を採用した場合、「透明性や公平性に重大な懸念が生じ、ユーザーエクスペリエンスの低下につながるだけでなく、これは運用上実現不可能だ」と述べたうえで、国や地域ごとのアプローチをほぼ排除しています。Metaによると、地域や国ごとの施行措置を大規模に採用した場合には、利用者や情報が国境を越えて行き来することを踏まえると、コンテンツに適用されるポリシーやペナルティの内容が利用者にとって不明確になります。このアプローチを採った場合、「さまざまな主張を削除降格、またはその他の施行対象とするケースと状況の概要をまとめた」さらに複雑で冗長なポリシーが必要になります。Metaによると、国や地域ごとのアプローチを採用するキャパシティは現在なく、こうしたアプローチを策定するには大規模なリソースと時間が必要となるため、このアプローチは目下のところ実現不可能です。Metaは、「国レベルでポリシーを施行すると、市場審査担当者のあるグループが複数の国を担当している場合に過度な施行につながるおそれがあるとともに、コンテンツは国や地域を越えて拡散する可能性があるため、施行が不十分になるおそれもある」と主張しました。これを踏まえ、Metaは、ポリシーの案は「全世界で一貫して運用可能であると同時に」すべての地域にとって適切なものにすべきだと述べています。

分析

62.相応性の問題について結論に達するに際して、委員会はさまざまな要因を検討しました。検討した内容には、(i) 公衆衛生上の緊急事態が続く中で生じ得る人権上の危害、(ii) 表現の自由への負担、(iii) 削除対象のコンテンツは、虚偽であると同時に、重大かつ差し迫った実際の危害を直接助長する可能性があるとみなされなければならないという、関連するコミュニティ規定の要件、(iv) 一部の専門家が有害なコンテンツの拡散を助長する可能性があるとする、プラットフォームのアーキテクチャ(プラットフォームの設計上の選択に関して人権影響評価を実施する必要性に関する勧告10を参照)、(v) 削除以外のコンテンツモデレーションの措置の拡張可能性と有効性について提起される重大な懸念(ファクトチェック、降格およびラベル付けに関して以下の段落で説明するとおり)、(vi) 国や地域ごとの大規模なアプローチを採ることはポリシーの実施において実現不能だとしたMetaの表明などがあります。

63.グローバルなアプローチを採るべき、とのMetaの主張を踏まえ、WHOによって新型コロナウイルス感染症が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に指定されている間、委員会は、Metaがさらなるデューデリジェンス、およびポリシーやさまざまな施行ツールの影響に関する評価を行うことなくグローバルなポリシーの実施方法を変更するよう勧告することはできません。こうした状況で変更を勧告した場合、世界中の最も弱い立場にある人々に偏って影響を及ぼす可能性があります。こうした影響を受けるのは、高齢者、免疫障害を持つ人、基礎疾患がある人のほか、リソースが少なく、市民空間がより不安定で、信頼できる他の情報源がなく、保健制度が乏しく、または保健サービスへのアクセスが不足した、貧しく社会の隅に追いやられたコミュニティなどです。上述のとおり、委員会は公衆衛生上の危機の一番のピーク時に、Metaが例外的な措置を用いたと認識しています。委員会は、本事例の場合のように、公衆衛生上の緊急事態が宣言されている間、差し迫った実際の危害が生じる可能性を防ぐ目的で、公的保健機関のみによって提示された評価に基づいて偽情報のカテゴリ全体を削除することにより、Metaが例外的な措置を講じる必要があったことを理解しています。委員会は、パンデミック特有の状況を踏まえ、この措置が相応のものだったと判断しています。

64.一方、このような例外的措置は一時的な措置とすべきであり、状況の緊急性に合わせて厳密に調整し、公表する必要があります。状況が変化するにつれ、必要性と相応性の分析も変わっていきます。進化していくパンデミックの性質を踏まえ、Metaはこれから、可能な限り速やかにより確固たる協議プロセスを実施して、特定の主張の自動削除が公共の関心事に関する議論を抑制したり、Metaのコンテンツモデレーションに対する政府の不当な影響力につながったりすることにならないことを確保するよう努める必要があります。協議プロセスでは、反対意見を含め、より多様な関係者の専門知識を参考にすべきです(以下の勧告1に記載するとおり)。委員会は、UNGPsの原則17が「人権への悪影響を特定し、予防し、軽減し、対処方法を説明する」ために、企業が継続的に人権デューデリジェンスを実施するべきだと定めていることを指摘します。この手続には、「現実のおよび潜在的な人権への影響の評価、調査結果の統合と対処、対応の追跡調査、対処方法の周知」が含まれます。さらに、UNGPsの原則20に記載されているとおり、Metaは「適切な質的・量的指標に基づいて」、「人権への悪影響を受けた利害関係者を含む社内外からの意見を活用して」、自社の対応の実効性を追跡調査すべきです。

65.上述のとおり、委員会は結論に至るに際して、コンテンツの削除以外のより干渉性の低い措置で大規模な偽情報に対処し、公衆衛生上の緊急事態が続く間、公衆衛生およびプラットフォーム内外の人の権利を守ることができるのかどうかを検討しました。まず、コンテンツへのファクトチェックのラベルの追加は、コンテンツを削除することなく情報を是正する1つの手段ですが、一部の関係者、およびMetaが提供した情報は、公衆衛生上の緊急事態が続く間、有害な可能性のある健康関連の偽情報のスピードと規模に対処するにはこのツールの対応能力に限界があることを示しています。Metaは委員会に対し、待ちリストにあるコンテンツの圧倒的大部分をファクトチェッカーが審査できていないと伝えました。また、Metaは、ファクトチェックプログラムの規模を拡大することはできないだろうと述べました。これらを実施するのはMetaが管理・所有していない外部の団体であるためです。さらに、プログラムに制限を組み込むと、この措置の有効性は低くなります。Metaは、政治家によってシェアされたコンテンツをファクトチェッカーが審査することを認めていません。対象には、公職選挙の立候補者、現職の公職者およびその被任命者、ならびに政党関係者や政党の党首が含まれます。各地域の関係者が広く報告し確認しているとおり、これらの利用者は、偽情報の拡散者としてひときわ目立っています。ファクトチェッカーによる確認は、大規模な自動削除に比べてより時間がかかります。この要素は、公衆衛生上の危機という状況で有害な偽情報に対処する際には決定的な要素となり得ます。この措置ではさらに、通常はプラットフォーム外にある記事に利用者を誘導します(このため、追加データを消費するリソースのない人にとっては利用しにくくなります)。このような記事の文言は、偽情報を拡散するような短くて感情に訴えるメッセージではなく、とりわけ技術的で複雑になることが多くあります。エジンバラ大学のSimon Wood教授からの提出意見(PC-10713)は、複雑な科学論文やエビデンスを効果的にファクトチェックするための技術的な知識がファクトチェッカーに欠けていることが多いという懸念を強調しました。

66.第2に、降格は利用者のフィードでコンテンツが表示される場所に影響を及ぼしますが、各利用者のフィードが個人に合わせた性質を持つということは、コンテンツのバイラリティやリーチに対してこの措置が及ぼす影響を判断するのが難しいことを意味します。コンテンツのランキングスコアは、利用者が「最も興味を持ちそうな」ユーザーコンテンツを表示することを目的としており、利用者がフォローするグループやページでシェアされるコンテンツはランキングが高くなる可能性が高いです。その結果、かなりのフォロワーがいる利用者がシェアするコンテンツや、グループでシェアされるコンテンツのリーチに降格が有効に対処できるかどうかは明確ではありません。利用者のニュースフィードに表示される全体的なコンテンツ構成を踏まえると、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報を定期的にシェアする複数のアカウント、ページ、グループをフォローしている利用者に降格が及ぼす影響は、最小限のものでしょう。また、Metaは、どれだけの利用者が降格したコンテンツにアクセスしにくくなるかに関してデータを有していないようです。これは、コンテンツの降格が大幅な場合であっても同様です。降格自体は、ストライクやペナルティを伴うものではありません。利用者はコンテンツの降格について異議を申し立てることができないため、最終的に、この選択肢は利用者の公平な取り扱いに関して重大な懸念を提起することになるでしょう。

67.第3に、Metaの社内調査によると、中立的なラベルが利用者への大規模なリーチや、知識や考え方の普及に効果的であることを示す証拠はありません。Metaは、投稿の新型コロナウイルス感染症関連のトピックを検知する自動システムを通じてNIT(中立的なラベル)を適用しています。これらのラベルでは、新型コロナウイルス感染症に関して信頼できる情報を提供する新型コロナウイルス感染症情報センターへのリンクが提示されます。Metaによると、これらのラベルに関する同社の予備調査では、利用者がNITを目にすることが増えると、「クリック率」(信頼できる情報を見るために利用者がラベルをクリックする割合)は減少することが示されました。さらに、Metaは委員会に対し、新型コロナウイルス感染症関連のNITの利用を停止したと伝えました。Metaによると、これらのラベルについては、ファクトチェックを受けた偽情報や、ワクチンに関して悲観的なコンテンツを利用者が読み、作成し、または再シェアする可能性に対して効果を有することが検出できません。最終的に、Metaは初期の調査により、これらのラベルが利用者の知識やワクチンに対する考え方に影響を及ぼさない可能性があることが分かったと報告しました。

68.これらを総合して、委員会は、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対してグローバルなアプローチを採るべきとのMetaの主張、およびWHOによる緊急事態宣言の継続を踏まえ、Metaが差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーの適用を継続すべきだと結論付けます。同時に、Metaは、現在削除対象である主張について、確固たる包括的なデューデリジェンスのレビュープロセスを開始すべきです。公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーをより必要性および相応性の基準に合致させるため、委員会は、勧告1、 4、5、9、10、12、13、14、15および18を行います。これらについては以下のセクションVIで詳しく説明します。

VI.勧告

コンテンツポリシーに関する勧告

69.勧告1: 新型コロナウイルス感染症が世界的な衛生上の緊急事態であるという世界保健機関の宣言、およびグローバルなアプローチを採るべきとのMetaの主張を踏まえると、Metaは、「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」新型コロナウイルス感染症関連の虚偽のコンテンツを全世界で削除する既存のアプローチを継続すべきです。同時に、Metaは(1) 新型コロナウイルス感染症に関して削除対象である特定の主張それぞれが虚偽であり、「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」こと、および(2) Metaの人権に対する約束が適切に実施されていること(例: 合法性や必要性の原則)を確認するため、削除対象である80の主張それぞれについて強固で定期的な再評価を行うための、透明性の高い包括的なプロセスを開始すべきです。この再評価のプロセスに基づき、Metaは、主張がもはや虚偽ではないのか、あるいは「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」状態でなくなったのかを判断する必要があります。主張がもはや虚偽ではない、あるいは「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」状態でなくなったとMetaが判断した場合、当該主張はこのポリシーに基づく削除対象から外すべきです。委員会は、Metaがヘルプセンターのページで再評価のプロセスを発表するとともに、80の主張に変更がある場合にはその変更について発表した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

70.以下の小区分では、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基づき削除の対象となる主張の再評価を実施するためのベストプラクティスについて、委員会の勧告をまとめています。勧告の小区分はそれぞれ、勧告1とは別個の勧告とみなされます。つまり、委員会は、勧告を実施するMetaの行動を個別に確認します。

勧告1A: より幅広い専門家や関係者との協議

71.Metaは、危機的状況により各主張の削除が必要となるのかどうかを評価する際に、より幅広い見方を考慮するためのプロセスを可能な限り速やかに整備すべきです。この際には、公衆衛生の専門家、免疫学者、ウイルス学者、感染症の研究者、偽情報や虚偽情報の研究者、技術関連ポリシーの専門家、人権団体、ファクトチェッカーおよび表現の自由の専門家などの専門家、団体から助言を求めるべきです。委員会は、Metaが公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーについて、多様な専門家らに助言を求めるためのプロセスに関する情報、およびこうした協議がMetaのポリシーに及ぼす影響に関する情報を公開した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

72.上述のとおり、委員会は、公衆衛生上の緊急事態が宣言されている間、公的保健機関のみによって提示された評価に基づいて偽情報のカテゴリ全体を削除することにより、Metaが本事例において例外的な措置を講じる必要があったと納得しています。公衆衛生上の緊急事態が続く間、個々の主張について直ちに数多くの専門家と着実に事前相談することは不可能だろうと認識しています。しかし、今までにないパンデミックに関して情報が進化を続け、パンデミック関連の偽情報への対処に対する最善のアプローチをめぐってさまざまな見方があることを踏まえると、可能な限り速やかに、幅広い専門家や関係者に助言を求めなければなりません。Metaが述べているとおり、これまで削除対象だった少なくとも2つの主張(ウイルスの起源に関する主張と、新型コロナウイルス感染症の死亡率に関する主張)について、同社は立場を変更する必要がありました。より幅広い協議を行い、そこから得られた内容について透明性を高めることは、より適切な意思決定や、不当な検閲からの保護にとって必須です。

73.委員会はMetaに対し、同社の諮問にまとめられている3つの変化の影響を考慮に入れるために、(虚偽で、「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」とみなされるとして)「禁止されている投稿」のリストに含まれる主張を再評価しているかどうかを尋ねました。Metaは、現在削除対象である主張がもはや虚偽ではない、あるいは差し迫った危害のリスクを直接助長する可能性が高い状態でなくなったという結論の裏付けになる情報はないと委員会に伝えました。しかし、Metaは適切な公衆衛生当局と改めて連携し、主張を再評価するよう依頼してはいません。また、個々の主張またはポリシー全体を再評価するべく、関係者や専門家と協議しているわけでもありません。Metaによれば、同社は諮問を遅らせることのないよう、ポリシーの変更に関して社外のステークホルダーエンゲージメントを実施するのではなく、ポリシーに関する忠告の諮問で委員会に諮ることを選択しました。委員会は、世界的な緊急事態中に策定されたポリシーについてMetaが外部の意見を求め、再評価の必要性を認識していることを高く評価します。しかし、人権を尊重するMetaの責任はその段階にとどまるものではありません。各主張の削除を続けることが必要かどうかを評価するプロセスを整備することで、Metaは、UNGPsに従った関連デューデリジェンスを確実に実施することができます。

勧告1B: レビューのタイミング

74.Metaは、このレビューを行うタイミングを定めて(例: 3か月ごと、あるいは6か月ごと)これについて公表し、案内と情報提供を徹底すべきです。委員会は、Metaが透明性センターにおけるポリシーフォーラムの議事録の公表と同様の方法で、レビューミーティングの議事録を公開した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

勧告1C: 一般からの意見を収集するための手続

75.Metaは、興味のある個人や団体が特定の主張の評価に異議を唱えるための手段を含め、通常のレビューの明確なプロセスをはっきりさせるべきです(例: パブリックコメントやバーチャル協議用のリンクをヘルプセンターのページで提供する)。委員会は、Metaが一般の人の意見に関するメカニズムを構築し、その意見が社内プロセスにもたらす影響に関する情報を委員会に共有した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

勧告1D: 検討・評価すべき情報の種類に関する指針

76.Metaが主張をレビューする際には、オンラインにおけるその健康関連の偽情報の拡散や影響に関して最新の調査をすべきです。これには、削除、ファクトチェック、降格、中立的なラベルなど、Metaが利用できるさまざまな措置の相対的有効性に関する社内調査を含める必要があります。Metaは、自社が事業展開するすべての地域、特に、Metaのプラットフォームが主要な情報源となっている地域や、デジタルリテラシーが低く市民空間が脆弱で、信頼できる情報源に欠け、医療体制が不安定な地域におけるパンデミックの状況を考慮すべきです。また、このような主張について施行を行う有効性についても評価すべきです。Metaは、どのような主張によって施行の不足と過度な施行という問題がシステム上生じたかに関する情報がまだないのであれば、そうした情報を収集すべきです。この情報により、ある主張の削除を継続すべきか、それとも別の措置で対処すべきかが分かるはずです。委員会は、Metaがポリシー施行のレビューに関するデータを共有し、当該情報を公開した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

勧告1E: 意思決定をめぐる透明性の提供に関する指針

77.どのような分野の専門家に助言を求めているか、その専門家らの意見、検討した社内外の調査、およびこうした情報が分析結果に及ぼした影響について透明性を提供するため、Metaは、各主張の決定の根拠についての概要を委員会に提供すべきです。この概要には、主張の削除を継続する決定の根拠を具体的に記載する必要があります。また、もし政府職員や政府機関が意思決定に関与しているのであれば、その役割についても開示すべきです。特定の主張の削除をやめることとした場合には、その決定の根拠を説明する必要があります((a) どのような意見により、その主張がもはや虚偽でないとMetaが判断するに至ったか、(b) どのような情報源からのどのような意見により、その主張がもはや差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い状況でなくなったとMetaが判断するに至ったか、またその評価は、ワクチン接種率が最も低い国や公衆衛生インフラのリソースが乏しい国にも当てはまるかどうか、(c) 施行システムが原因で特定の主張の過度な施行が生じたとMetaが判断したのか、(d) その主張はプラットフォームでもう広まっていないとMetaが判断したのかなど)。委員会は、Metaがポリシーの判定プロセスの評価を共有した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。この情報は、本勧告の最初の段落に記載のとおり、ヘルプセンターの投稿で公表されているポリシーの変更理由に合致している必要があります。

78.勧告2: Metaは、削除可能な主張の各カテゴリがなぜ「差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い」のか、明確な説明を直ちに提供すべきです。委員会は、Metaがヘルプセンターのページを修正してこの説明を提供した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

79.ヘルプセンターのページでは現在、「新型コロナウイルスの感染リスクを上昇させるもの、新型コロナウイルス感染症が伝播する可能性を増大させるもの、公衆衛生体制がパンデミックに対処する能力に悪影響を及ぼすもの」など、特定の主張とその主張が差し迫った実際の危害を助長する理由との関連の例を提供しています。そのうえで、同ページでは、Metaが「差し迫った実際の危害を助長する可能性」の基準を満たすとする虚偽の情報の5分類を明確にしています。ただし、ヘルプセンターのページは、削除可能な主張の各カテゴリが、定められた基準をどのように満たすのかに関して体系的に説明することはしていません。Metaは、それぞれの主張が差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高い理由をそのカテゴリごとに説明するとともに、その結論に達する際に依拠した情報源を明確に説明すべきです。

80.勧告3: Metaは、「虚偽」の情報という要件はポリシーを最後に再評価した時点で利用可能であった最善の証拠に従って虚偽である情報を指していることを説明し、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーを明確にすべきです。委員会は、関連するヘルプセンターのページでMetaがポリシーを明確化した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

81.Metaは、既知の情報が変わった際、または病気の発展により主張が不正確あるいは不完全なものとなった際に、少なくとも2件に関し、削除の対象となる主張を修正する必要がありました。間違いは生じ得ますし、新たなデータや調査によって既存のコンセンサスが疑われることになる場合や、主張の定義を精査する必要が生じる場合もあります。こうした現実を踏まえ、また、特定の主張がポリシーの幅広い基準を満たしているという判断を継続的に再評価する責任を負う旨Metaが理解していることを明確にするため、Metaはポリシーを明確化し、当時利用可能だった最善の証拠に基づいて判断を下したこと、これが進化する可能性があることを明らかにすべきです。

施行に関する勧告

82.勧告4: Metaは、WHOが新型コロナウイルス感染症について世界規模の衛生上の緊急事態を解除する一方で、他の地域の公的保健機関が引き続き公衆衛生の緊急事態として新型コロナウイルス感染症の指定を維持する場合に、ポリシーに関する決定や、今回のポリシーに関する忠告中の他の勧告に沿った、採るべき必要かつ相応の措置を特定するためのリスク評価プロセスを直ちに開始すべきです。このプロセスでは、全世界で一般的な表現の自由を脅かすことなく、重大かつ差し迫った実際の危険を助長する可能性が高い有害な偽情報に対処する措置を採用することを目指すべきです。リスク評価においては、(1) 設計上の決定、およびポリシーやポリシーの実施に関するさまざまな代替策に関する確固たる評価、(2) 表現の自由、健康に対する権利、生命に対する権利などの人権にこれらそれぞれがもたらす影響、(3) 国や地域ごとの施行アプローチの実現可能性も評価する必要があります。委員会は、Metaがリスク評価の実施方法について計画を公表し、リスクの検知と軽減に関する評価プロセスについて説明し、この情報を記載したうえでヘルプセンターのページを更新した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

83.勧告5: Metaは、社内実施ガイドラインを、同社のプラットフォームで実際に使われている言語に翻訳すべきです。委員会は、社内実施ガイドラインが翻訳され、この点に関して委員会に情報の提供があった時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

84.コンテンツモデレーターは、違反しているコンテンツや、規定された例外(例: ユーモア、皮肉、個人的な逸話、意見)に基づいてプラットフォームに引き続き掲載すべきコンテンツを特定する方法について詳しい情報を提示する、詳細な社内実施ガイドラインにアクセスすることができます。世界の異なる地点で一貫した施行を確保できるよう、Metaは、モデレーターが業務を行う言語でこれらのガイドラインを提供し、モデレーターがこれらにアクセスできるようにする必要があります。

85.委員会は過去に、モデレーターに提供される社内実施ガイダンスを、モデレーターがコンテンツを審査する言語に翻訳するようMetaに勧告しています(「アラビア語の単語の再生」[ 2022-003-IG-UA]、および「ミャンマーのボット」 [ 2021-007-FB-UA]の事例に関する決定を参照)。委員会に対する回答の中で、Metaは、「弊社のコンテンツの審査担当者が全員流暢に話せる言語で一連の内部ポリシーガイドラインを維持…することが、急速に進化する弊社のポリシーを標準化して世界規模で確実に施行する最善の方法であると考えています。…このガイダンスは急速に進化している(市場別の中傷を含む新しい説明、定義、言語を使用して定期的に更新されている)ため、翻訳に頼ると、不定期な遅延や信頼性が低い解釈につながる可能性があります」と述べています。

86.Metaが上記の説明を提供してから、イスラエルとパレスチナにおけるMetaのポリシー施行に関する独立評価において、アラビア語におけるMetaのポリシーの過度な施行の原因の1つに、コンテンツモデレーターの言語能力不足があると特定されました(Business for Social Responsibilityによる2021年5月イスラエルとパレスチナにおけるMetaの影響に関する人権デューデリジェンスを参照)。この調査結果を踏まえ、また、コンテンツモデレーターに提供されている社内ガイドラインの複雑さと微妙なニュアンスによる解釈の複雑さを考慮すると、委員会は、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーの過度な施行、あるいは施行の不足の危機が現実のものだと考えています。Metaは、これらのリスクを軽減し、ポリシーが全言語、全地域で一貫して適用されるよう確保する必要があります。

87.勧告6: ファクトチェックのラベルに対する利用者からの異議申し立てについては、最初の評価を行ったファクトチェッカーではなく、別のファクトチェッカーが審査すべきです。公平性を確保し、コンテンツのファクトチェックを受けた利用者による救済の利用を促進するため、Metaは自社のプロセスを修正し、所与の主張についてまだ評価を下していない別のファクトチェッカーが、ラベルを適用する決定を評価できるようにすべきです。委員会は、異なるファクトチェッカーに異議が申し立てられるメカニズムをMetaが利用者に提示し、この新たな異議申し立てメカニズムについて追記したファクトチェックに関するポリシーを更新した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

88.勧告7: Metaは、Metaの偽情報に関するポリシーを施行する第三者ファクトチェッカーによってコンテンツにラベルを付けられた(ページやグループだけでなく)プロフィールが、製品内の異議申し立て機能によって、別のファクトチェッカーに対してラベルに関する異議を申し立てられるようにすべきです。委員会は、この異議申し立て機能を全市場でプロフィールにまで拡大し、施行データを通じて、利用者がファクトチェックのラベルについて異議を申し立てられることを証明した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

89.利用者による異議申し立ては、誤りの訂正と、救済にアクセスする利用者の権利確保にとって重要な機能です。ファクトチェッカーは、複雑さ、技術的内容、文脈という点で大幅に異なるコンテンツを審査しています。誤りが生じることは避けられません。あるパブリックコメントでは、プラットフォームでシェアされる複雑な科学記事をファクトチェックするための科学的・技術的な知識がファクトチェッカーに欠けているのではないかという懸念が提起されました。ファクトチェックのラベルには、利用者に対する結果が伴います。ファクトチェッカーがコンテンツにラベルを適用し、そのコンテンツに「虚偽」または「改変」のラベルが付けられるのであれば、そのラベルはストライクを招く可能性があります。ストライクが重なると、機能制限や、そのプロフィールで共有するコンテンツの降格につながります。本勧告を実施することで、利用者が誤りが生じていると考えていることをファクトチェッカーに伝え、審査を円滑化するための追加情報を共有できるようになります。

90.勧告8: Metaは、報道の自由の指標(例: Freedom Houseによる報道の自由のスコア)が低く、ソーシャルメディアの普及率が高い国を優先して、全世界でデジタルリテラシープログラムへの投資を増やすべきです。こうした投資は、状況に合わせたリテラシー教育も対象とする必要があります。委員会は、投資の拡大に関して、投資額、プログラムの性質と対象国、当該プログラムの影響について得られている情報を明確に記述した記事をMetaが公表した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

91.質問への回答の中で、Metaは委員会に対し、「メディアリテラシーのスキルを向上させ、シェアされる偽情報の量を事前対応的に減らすため」、この3年間で700万米ドルを超える投資をしていると伝えました。Metaが提示した情報源によると、この投資は主に米国に集中していました。他国においては、メディアリテラシーに焦点を当てたソーシャルメディアキャンペーンや広告を配信するために、複数の団体と提携しています。

92.Metaが米国で行ったメディアリテラシープログラム(1つはPEN Americaと協力して行われたプログラム、もう1つはPoynter Instituteと協力して行われたプログラム)への投資の影響を評価した研究では、参加者がオンライン情報を評価する能力に著しい向上があったことが分かりました。例えば、参加者が新型コロナウイルス感染症関連の偽情報を見抜く能力は、参加前の平均53%から、参加後は平均82%に改善しました。高齢者向けのメディアリテラシープログラムでは、コースを受講した後、参加者が見出しの真偽を正確に判断する能力に22%の改善が見られました。

93.勧告9: 偽情報に関するポリシーに繰り返し違反する、Meta法人の個別のアカウントやネットワークに関して、Metaは、新たに公開されたペナルティ制度の効果(このような違反を防ぐためにシステムが設計された方法に関するデータを含む)に関する従来の調査を実施または共有すべきです。この調査では、健康に関する偽情報のキャンペーンを拡散、調整するアカウントの分析もすべきです。評価においては、有害な情報や虚偽の情報、誤解を招く情報を共有する金銭的な動機、利益に対処する際にMetaが現在用いている収益化停止のペナルティの効果について評価する必要があります。委員会は、この調査の結果をMetaが委員会と共有し、透明性センターで結果の概要を報告した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

透明性に関する勧告

94.勧告10: Metaは、Metaのニュースフィードやおすすめ機能のアルゴリズムといった各種の設計特性が有害な健康関連の偽情報をどの程度拡散しているか、そしてそれが人権にどう影響するかについて、委託による評価を実施する必要があります。この評価では、有害な健康関連の偽情報の拡散を助長するフィードランキングのアルゴリズムの主要要素、Metaのアルゴリズムによって拡散され得る偽情報の種類、この種の偽情報の影響を最も受けやすいグループ(また、これらの者が特にターゲットとなっているのは、Metaの設計上の選択によるものかどうか)に関する情報が提示されるべきです。また、この評価では、Metaのアルゴリズムや設計上の選択が健康関連の偽情報の拡散に及ぼした影響を評価する事前調査をMetaが実施しているのであれば、それについても公表する必要があります。委員会は、上記のような分析を含んだ人権影響評価をMetaが公表した時点で、Metaがこの勧告に従ったものとみなします。

95.表現の自由に関する国連特別報告者は、Metaによる偽情報の削除や第三者ファクトチェックプログラムを含め、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対するソーシャルメディアプラットフォームの対応について「概して肯定的」としつつも、虚偽情報が突きつける難題に対処するには「不十分」としました。特別報告者は、「虚偽情報や偽情報の多くの要因を支えるビジネスモデルを真剣に見直す」必要性を強調しています ( A/HRC/47/25、第65-67項)。

96.委員会は、Metaが自社のプラットフォームの設計特性や現在の措置が公衆衛生や人権(生命に対する権利、健康に対する権利、情報にアクセスする権利、パンデミックや関連する公衆衛生上の措置に関するアイデアや見方の表現の権利など)にどのように影響を及ぼすか、人権影響評価を実施していないのではないかと懸念しています。Metaは、人権に対する潜在的な影響を適切に評価するために、必要なあらゆる情報を利用できるようにすべきです。利用しやすい十分な情報、基本的なワクチン、医薬品、治療へのアクセス格差や、世界全体でのコンテンツモデレーションのリソース状況を踏まえると、人権影響評価は、差し迫った実際の危害を生じさせ得る新型コロナウイルス感染症関連の偽情報がMetaの製品内で世界的に拡散することに起因したリスクを評価するのに不可欠です。

97.勧告11: Metaは、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基づいて削除対象となる主張の完全なリストを提供するヘルプセンターのページに変更履歴を追加すべきです。委員会は、ヘルプセンターのページに変更履歴が追加された時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

98.コミュニティ規定には、ポリシーの変更が施行されたことを利用者に注意喚起するために変更履歴があります。一方で、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基づき削除対象となる具体的な主張を記載したヘルプセンターのページには、変更履歴、あるいは主張のリストが更新または修正された時期を利用者が判断するための手段がありません。このため、削除対象となる主張の追加や変更について追跡することは困難です。

99.2020年3月から2022年10月までの間、公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基づいて、削除される主張のリストにさまざまな主張が追加され、一部の主張は削除あるいは修正されたとMetaは委員会に伝えました。

100.表現の自由に関する国連特別報告者は、すべての個人が「公衆衛生上の危機について知るのに必要なコミュニケーションツールに本当の意味でアクセスできる」べきだと述べています( A/HRC/44/49、第63項(b))。ヘルプセンターに変更履歴を追加することにより、特定の主張が削除された時期を利用者に明確に知らせることができ、これは合法性の原則に合致します。新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関する科学的なコンセンサスや公衆衛生上の影響の理解は進化し続けているため、主張のリストがどのように進化しているかについて透明性を高めることは利用者のためになります。

101.ヘルプセンターに変更履歴を追加すると、勧告1および2に関連して、別の見方を持った利用者が、虚偽性や差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性について公的保健機関が下した評価に異議を唱える助けにもなります。このアプローチは、反対意見を持つ人が同意できない主張に異議を唱えることを可能にしつつ、公衆衛生に関するMetaの人権保障責任に応えるものです。

102.勧告12: Metaは、四半期施行レポートにおいて、偽情報の種類(実際の危害や暴力、有害な健康関連の偽情報、投票者または国勢調査への干渉、加工されたメディア)と、国・言語ごとに分類した偽情報に関する施行データを四半期ごとに提供すべきです。このデータには、異議申し立ての件数と復元されたコンテンツの数に関する情報を含める必要があります。委員会は、Metaの施行レポートに偽情報に関するポリシーの施行データを盛り込むことをMetaが開始した時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

103.Metaが四半期ごとに公表するコミュニティ規定施行レポート(CSER)は、さまざまなコミュニティ規定に基づいて措置が講じられたコンテンツの数を示しています。しかし、偽情報に関するポリシーについての施行データはこのレポートに含まれていません。これは、偽情報に関するコミュニティ規定が2022年3月に正式に定められたこともあると委員会は理解しています。Metaは委員会に対し、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報のプラットフォームにおける表示頻度について、データがないと伝えました。Metaによると、これは、何が新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に該当するかの定義が進化していること、また、ポリシー策定前と策定後の表示頻度の有意義な比較をするのが困難であることによるものです。

104.しかしながら、Metaは、限られた集団での短い期間中の表示頻度を測定できています。Metaによると、2022年3月1日から2022年3月21日までの間、新型コロナウイルス感染症関連のコンテンツは、米国におけるFacebook投稿の表示数の1~2%を占めていました。これらの表示数のうち、約0.1%の該当コンテンツが偽情報と危害に関するポリシーに違反しているとMetaは推測しています。

105.委員会には、関連するデータポイントの中でも特に、偽情報に関するポリシーに基づいて措置が講じられたコンテンツ数について公開情報が不足していることにより、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対するMetaの既存の対応の有効性を研究者や関係者が評価しにくくなっていることを強調したコメントが世界中の関係者から多く寄せられました。Metaは、ポリシーの施行によって過度な誤検出が生じていないかどうか、過度な施行のリスクを低くするためにポリシーの施行を修正する必要があるかどうかを評価するためのデータを提供しなければなりません。この点について、表現の自由に関する国連特別報告者は、オンラインで虚偽情報に対抗するために採られた「措置の有効性について、透明性やデータへのアクセスが不足しており、客観的評価が妨げられている」と強調しています。このように透明性やデータへのアクセスが不足していると、関係者は、ポリシーが世界全体で一貫して適用されているのかどうかを把握することができません( A/HRC/47/25、第65項)。

106.委員会は過去に、コミュニティ規定施行レポートのデータを国ごと、および言語ごとに分けるべきだとMetaに勧告しています(「インドのRSSに対するパンジャブ人の懸念」[ 2021-003-FB-UA]の事例に関する決定、勧告1)。Metaは回答において指標の変更を約束しており、2023年末までにその指標を導入する目標を設定しています。国または言語ごとに施行データを分けることは、世界各地の問題の範囲や、Metaの施行措置の相対的有効性について理解するのに不可欠です。研究者や市民社会がMetaの取り組みを評価するのを可能にするような関連データがないため、委員会、およびさらに重要なことにMetaの関係者は、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対処するMetaの現在のグローバルポリシーや施行アプローチの有効性を完全に、有意義な形で理解することができません。

107.勧告13:Metaは、「コミュニティ規定施行レポート」に公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーの違反に対しコンテンツ審査を求める国家的主体の要請について報告するセクションを設けるべきです。このレポートには、国と政府機関による審査と削除の要請の件数、およびMetaによる拒否と承認の件数に関する詳細を記載する必要があります。委員会は、国家的主体からの要請のうち、このようなポリシー違反のために削除に至った要請に関する個別セクションを「コミュニティ規定施行レポート」の情報で公開した時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

108.「英国のドリルミュージック」の事例[2022-007-IG-MR]で委員会は、「国家的主体によるコンテンツの審査およびコミュニティ規定違反に対する削除要請に関するデータを公開」するようMetaに勧告しました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックのピーク時に、Metaが政府機関の要請を受けて新型コロナウイルス感染症関連のコンテンツを審査していることについての懸念が提起されました。こうした傾向は、政府の政策を批判する平和的なデモの参加者や人権擁護活動家を取り締まったり、国民の議論を沈黙させたりすることを目的として政府がこのような要請を行う国では、深刻なものとなる可能性があります。パンデミックの状況下で、平和的集会・結社の自由に対する権利に関する国連特別報告者は、世界中の政府が、緊急事態を敷いて民主主義社会に内在する正式な手続要件や制度上の確認、組織的均衡を回避するための口実としてパンデミックを利用している、との懸念を提起しています。これは、平和的な抗議活動に対する権利など、基本的人権に影響を及ぼすものです( A/HRC/50/42、第18項、A/77/171、第40項、第67項)。公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに基いてコンテンツを審査するよう求めた国家的主体の要請について、詳細なレポートを作成すれば、合法性の原則に沿って、利用者、特に市民空間が脆弱な、リスクの高い国にいる利用者にとって適切な手続を提供することになります。

109.平和的集会・結社の自由に対する権利に関する国連特別報告者は、テクノロジー企業に対し、自社の製品が「権利を支持する社会運動家」を監視下に置いたり統制したりする目的で政府によって利用されないよう確保しなければならないと助言しています(A/77/171、第71項)。委員会は、Metaの企業人権ポリシーでまとめられているとおり、同社が政府によるオンラインでの嫌がらせ、監視、検閲の要請に対抗して、Metaが人権擁護活動家に力を与える約束をしたことを高く評価します。Metaの偽情報に関するコミュニティ規定に基づいてコンテンツを審査・削除するよう求める政府の要請について透明性を高めることで、この約束が行動で示されることになります。

110.勧告14: Metaは、CrowdTangleやFacebook Open Research and Transparency (FORT)といった既存のリサーチツールを引き続き研究者が利用できるよう確保すべきです。委員会は、このようなツールを通じて研究者にデータを共有する約束が公表された時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

111.勧告15: Metaは、外部の研究者が新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の削除や配信の減少に関連したポリシー介入の効果について独立して研究できるよう、非公開データにアクセスできる経路を設けるべきです。同時に、これらの経路がMetaの利用者のプライバシー権やプラットフォーム内外の人の人権を保護するものであるよう確保する必要があります。このデータには、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報への介入にまつわる常習違反率など、これまで提供されていない指標も盛り込む必要があります。委員会は、外部研究者がこれらのデータセットを利用できるようになり、そのことについてMetaが委員会に確認した時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

112.表現の自由に関する国連特別報告者は、利用者、研究者、活動家が問題の性質を理解して明確に伝えることを可能にするような公開情報が十分にないこともあり、虚偽情報に対処するのが難しいことを指摘しています( A/HRC/47/25、第3項、第67項、第81項)。この目的を達成するため、表現の自由に関する国連特別報告者は、「研究、政策立案、モニタリング、評価」のためにデータを利用可能とするよう助言しています(A/HRC/47/25、第104項)。

113.CrowdTangleは、「FacebookとInstagram全体で影響力のある公開アカウントやグループ」を追跡し、偽情報を含め、関連するトレンドを分析することを目的として外部研究者が利用できるツールです。このツールのデータベースには、政治家、ジャーナリスト、メディア、パブリッシャー、有名人、スポーツチームその他の著名人など、すべての認証済み・公開のユーザー、プロフィール、アカウントが含まれています。また、国に応じた一定の規模を超える公開グループや公開ページも対象に含まれています。データベースでは、投稿されたコンテンツの日付や種類、コンテンツをシェアしたページ、アカウント、グループや、コンテンツで実行されたアクションの数と種類のほか、そのコンテンツをシェアした他の公開ページやアカウントについてのデータを共有しています。これはコンテンツのリーチや、非公開アカウントによって投稿されたデータやコンテンツ、有料コンテンツ、宣伝されたコンテンツまたはコンテンツにアクションを実行する利用者の利用者層データを追跡するものではありません。CrowdTangleには、700万を超えるFacebookページ、グループ、認証済みプロフィール、および200万を超える公開Instagramアカウントについてのデータがあります。

114.2022年、MetaがCrowdTangleの終了を計画しているとする報道がありました。Metaはこのことを公に認めていませんが、委員会は、同社がリサーチツールを終了するのではなく、むしろ強化すべきだと強調します。このような強化により、外部研究者は新型コロナウイルス感染症関連の偽情報を含め、Metaの製品の影響について理解することができます。

115.委員会は、学者や研究者にプライバシー保護の対象であるさまざまなデータセットを提供する、Facebook Open Research and Transparency (FORT)ツールの構築にMetaが取り組んでいると把握しています。同社によると、FORTのリサーチャープラットフォームでは、管理された環境下で社会科学者らが「社会現象について研究、説明するために、大規模な行動データ」に関するセンシティブな情報にアクセスすることができます。しかしながら、報道では、「制約の多い利用規約」や、研究者に提供される情報が不十分で有意義な分析ができないなど、学術研究を行うに当たってはこのツールに弱点があるとされています。そうは言うものの、委員会では、ほかのソーシャルメディア企業の状況からすると、Metaは外部研究者とデータを共有するために有効な施策を実施していると認識しています。委員会は、Metaがさらなる取り組みを進めることを奨励します。

116.今回のポリシーに関する忠告のために実施したステークホルダーエンゲージメント活動を通じて、研究者らは、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するトレンドを追跡するこのようなツールの必要性を繰り返し強調していました。関連データへのアクセス権が限定されていることは、委員会が今回のポリシーに関する忠告の諮問の本案を評価する際にも問題となりました。こうしたデータの一部はMeta自身も利用できない一方で、一部のデータについては利用可能なものの、委員会を含む社外ステークホルダーには共有できない状況だと委員会は認識しています。Metaは、研究者らが新型コロナウイルス感染症関連の偽情報のプラットフォームでの表示頻度や、それに対処するための具体的措置の有効性を追跡できるよう、関連するデータへのアクセスを研究者に提供すべきです。このような情報は、上述の人権影響評価の実施にも必須のものです。

117.勧告16: Metaは、新型コロナウイルス感染症のポリシーに関する忠告のプロセスが進む中で委員会に提供した、中立的なラベルおよびファクトチェックのラベルに関する調査結果を公表すべきです。委員会は、Metaがこの調査結果を透明性センターに公開した時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

118.NITの継続的効果を評価するためにMetaが実施した実験の結果など、NITやコンテンツの降格の有効性に関する情報をMetaが委員会に共有したことを委員会は感謝しています。委員会は、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に対するMetaの対応の影響を把握しようとする外部研究者に、この実験結果を幅広く共有すべきだと考えています。

119.勧告17: Metaは、世界中の研究者が公平にデータにアクセスできるようにすべきです。ヨーロッパの研究者には、デジタルサービス法(DSA)を通じて、データアクセスに適用できる手段がありますが、Metaは、グローバルノースにある研究大学の研究者を過大に評価しないようにする必要があります。新型コロナウイルス感染症関連の偽情報の表示頻度やMetaのポリシーによる影響に関する研究は、今回の緊急事態や今後の緊急事態における健康関連の有害な偽情報について一般的な理解を形成し、このような偽情報に対する今後の対応を形作るものです。このような研究がグローバルノースに偏って焦点を当てると、対応もグローバルノースに偏ったものになります。委員会は、DSAに基づいて欧州連合加盟国に提供されているデータアクセスと同様のデータアクセスを、世界中の研究者に提供する計画をMetaが公表した時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

120.虚偽情報の流れに関する研究の大半は、米国および西欧で発生しているトレンドやパターンを不相応に反映させています。これにより、コンテンツポリシーによる介入の枠組みが、これらの地域特定の問題に応じて構築されてしまうおそれがあります。表現の自由に関する国連特別報告者は、エチオピアやミャンマーで民族紛争を刺激した、アイデンティティに基づいた虚偽情報キャンペーンを引用して、「脆弱なマイノリティコミュニティ」に対する虚偽情報の影響についてさらに研究すべきだと市民社会から要求があることを指摘しています( A/HRC/47/25、第26項)。デジタルサービス法に従って、また自社のFORTを維持してMetaはアクセス権を外部研究者に拡大していますが、同社は世界中の学者や研究者の表現を確保すべきです。

121.勧告18: Metaは、クロスチェックの早期対応二次審査(ERSR)システムが、偽情報に関するポリシーの施行の有効性に及ぼす影響を評価し、Metaのクロスチェックプログラムに関して委員会が行ったポリシーに関する忠告の勧告16および勧告17が公衆衛生上の緊急事態の間の偽情報に関するポリシーに違反するコンテンツを投稿するエンティティに適用されるよう確保すべきです。委員会は、その結果が委員会に共有され、公表された時点で、Metaが勧告に従ったとみなします。

122.Metaによると、クロスチェックプログラムは、最もリスクが高い、誤判定というモデレーションの誤りを最小限に抑えることを目的として導入されました。クロスチェックプログラムの第一段階は早期対応二次審査(ERSR)システムです。このシステムは、対象である特定のエンティティが投稿した、違反のおそれがあるコンテンツを人間が追加審査することを保証しています。Metaは、ERSRの恩恵を受ける権利のある者を決定し、その決定に基づいて対象となるエンティティのリストを保持しています。エンティティは、Facebookページ、Facebookプロフィール、Instagramアカウントという形をとることができ、個人やグループ、企業・組織を代表することもできます。これらのリストに含まれている利用者の多くが有名人、大企業、政府指導者、政治家などです。

123.Metaのクロスチェックプログラムのポリシーに関する忠告で、委員会はMetaが、「人権の観点から、表現を追加的に保護するに値する利用者」と、「事業上の理由で対象となる者」を区別する、「誤り防止に向けたエンティティベースの、分かりやすい公開の資格基準」を定めるよう勧告しています。

124.政治家はMetaの第三者ファクトチェックプログラムの適用外です。つまり、政治家がシェアした虚偽の情報であって、有害な健康関連の偽情報に関するポリシーに基づいて別段削除されないものについては、第三者ファクトチェッカーが審査やラベル付けを行うことができません。ERSRは特定のコミュニティ規定の有効性を評価するというよりも、施行の誤り防止を目的として構築されたため、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーの有効性にERSRシステムが及ぼす影響を評価することはしていないとMetaは説明しました。したがって、Metaの社内チームは、新型コロナウイルス感染症関連の偽情報に関するポリシーの影響についてデータを追跡または分析していません。

125.内部調査、および今回の新型コロナウイルス感染症のポリシーに関する忠告のために行われたステークホルダーエンゲージメントに基づいて、委員会は、偽情報の拡散者の多くが、ERSRプログラムの恩恵を受けられる有名人、政治家、国家的主体、宗教者などの著名な発言者であることを知りました。例えば、メディア・マターズ・フォー・アメリカからの提出意見(PC-10758)は、Metaのクロスチェック制度が、偽情報に対処する取り組みを損なう影響を及ぼしていることついて注意を喚起しました。有名人、政治家、ジャーナリストなどの著名な利用者は、コンテンツの違反に対して「よりゆっくり、あるいはより寛大な施行が認められて」いたため、プラットフォームに偽情報を引き続き掲載することが認められました。表現の自由に関する国連特別報告者は同様に、「著しく有利な立場にある個人」が広める「信頼できない情報」について、これが「悪意によるものかどうかを問わず、深刻な危害を生じさせるおそれがある」として、懸念を示しています。国家的主体も、ウイルスの起源、症状に対処するための薬の利用可能性、および自国などでの新型コロナウイルス感染症の状況に関して、「見境のなくなりがちな主張」を広めていました。国連特別報告者は、公職に就く者に自己の言動に対しての責任を課すよう助言しています( A/HRC/44/49第41項、第45項、第63項(c)。有名人がより一般に偽情報を広めていると特定したA/HRC/47/25、第18項も参照)。

126.ERSRプログラムの対象であるエンティティが投稿する偽情報であって、公衆衛生や安全に対する差し迫った実際の危害のリスクを直接助長する可能性が高いものは、有害な健康関連の偽情報に関するポリシーに沿って削除されます。しかし、通常であればファクトチェックやラベル付けに値するような偽情報は、政治家などの対象エンティティが投稿したという理由で第三者ファクトチェックを免れるだけでなく、ERSRシステムによって違反のおそれのあるコンテンツには人間による追加審査が行われていることにより、施行の遅滞の恩恵も受けることができます。つまり、規定された80の主張に該当しない新型コロナウイルス感染症関連の偽情報であって、対象のエンティティが投稿するものについては、ファクトチェックのラベルを付されることなくプラットフォームに引き続き掲載され、全く審査を受けない可能性があります。

*手続きに関する注記:

監督委員会によるポリシーに関する忠告は、5名のメンバーからなるパネルにより準備され、委員会の過半数の承認を得ています。委員会の決定は、必ずしもメンバー全員の個人的見解を反映したものではありません。

今回のポリシーに関する忠告のために、独立した調査が委員会に代わって委託されました。委員会は、ヨーテボリ大学に本部を置く、6つの大陸の50名を超える社会科学者からなり、世界各地の3,200名を超える専門家と連携する独立調査機関による支援を受けました。また、委員会は、地政学、信用と安全、テクノロジーを横断的に扱うアドバイザリー会社であるDuco Advisorsによる支援も受けています。このほか、ソーシャルメディアのトレンドに関するオープンソース調査に従事する組織、Memeticaによる分析の提供も受けました。

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