أيد
トランプ前大統領のアカウント停止
تم النشر بتاريخ 5 أَيّار 2021
委員会は、Facebookが当時大統領であったドナルド・トランプ氏に対して同氏のFacebookページおよびInstagramアカウントへのコンテンツの投稿を制限した2021年1月7日の決定を支持しました。
この審査結果についてPDFで読むには、こちらをクリックしてください。
事例の概要
委員会は、Facebookが当時大統領であったドナルド・トランプ氏に対して同氏のFacebookページおよびInstagramアカウントへのコンテンツの投稿を制限した2021年1月7日の決定を支持しました。
しかしながら、アカウントを無期限に停止するという、不確定で基準を欠いた罰則をFacebookが課したのは、適切ではありませんでした。Facebookが課す通常の罰則には、違反コンテンツの削除、期間を限定した利用停止、該当するページやアカウントの永久的な利用停止などがあります。
委員会は、この事項をFacebookが再検討し、Facebookプラットフォームのその他の利用者に適用される規則に則った、相応な対応を判断してその正当性を示すことを要求します。Facebookはこの事項の再検討を、この決定の日付から6か月以内に完了する必要があります。委員会はまた、公共の安全を促進しつつ表現の自由を尊重する、明確かつ必要性と相応性に基づくポリシーをFacebookが策定するにあたって、Facebookが組み込むべきポリシーについての勧告も提示しました。
事例の内容
選挙は民主主義にとって欠かせない要素です。2021年1月6日、2020年の選挙人投票の集計作業が続く中、暴徒化した集団がワシントンD.C.の連邦議会議事堂に強引に侵入しました。このような暴力行為は、憲法に基づく手続きを脅かすものでした。この暴力行為を通じて、5人が死亡し、それを上回る多数の負傷者が出ました。こうした出来事が起きている間に、当時大統領であったドナルド・トランプ氏は2件のコンテンツを投稿しました。
暴動がまだ続いていた午後4時21分(東部標準時)、トランプ氏はFacebookとInstagramに動画を投稿し、その中で次のように述べました。
I know your pain. I know you’re hurt. We had an election that was stolen from us. It was a landslide election, and everyone knows it, especially the other side, but you have to go home now. We have to have peace. We have to have law and order. We have to respect our great people in law and order. We don’t want anybody hurt. It’s a very tough period of time. There’s never been a time like this where such a thing happened, where they could take it away from all of us, from me, from you, from our country. This was a fraudulent election, but we can't play into the hands of these people. We have to have peace. So go home. We love you. You're very special. You've seen what happens. You see the way others are treated that are so bad and so evil. I know how you feel. But go home and go home in peace. (私はあなた方が苦しんでいることを理解している。あなた方が傷ついていることも。この選挙は私たちから盗まれたものだ。選挙は圧勝だった。誰もが知っている。特に敵の陣営は。しかし、あなた方は今すぐ家に帰る必要がある。平和に行こう。法と秩序を守らなければいけない。法と秩序を守る偉大な国民に敬意を払う必要がある。負傷者が出るのを望んではいない。今はとても苦しい時期だ。こんなことが起こるなんて、未だかつてないことだ。私たちから、私から、あなた方から、この国から、この勝利が奪われるようなことが起こるなんて。今回の選挙は不正選挙だったが、不正を行った側の思うつぼにはまってはならない。平和に行こう。だから家に帰ってほしい。あなた方のことを愛している。あなた方は本当に特別な人たちだ。何が起こったかを目の当たりにした。ほかの人々が不当で邪悪な扱いを受けるのを見てきた。気持ちはわかる。しかし、家に帰ってほしい。平和的に)
午後5時41分(東部標準時)、Facebookはこの投稿を、Facebookの危険な人物および団体に関するコミュニティ規定に違反したとして削除しました。
午後6時07分(東部標準時)、警察が議事堂の安全を確保する中、トランプ氏はFacebookに次のような声明文を投稿しました。
These are the things and events that happen when a sacred landslide election victory is so unceremoniously viciously stripped away from great patriots who have been badly unfairly treated for so long. Go home with love in peace. Remember this day forever! (長い間ひどく不当な扱いを受けてきた偉大な愛国者たちから、神聖な選挙の圧勝がひどく乱暴に、悪意を持って奪い取られたことでこのような事態になった。しかし、平和的に、愛の精神で家に帰ってほしい。そしてこの日を永久に心に刻もう!)
午後6時15分(東部標準時)、Facebookはこの投稿を、Facebookの危険な人物および団体に関するコミュニティ規定に違反したとして削除しました。また、トランプ氏に対して、FacebookとInstagramへの投稿を24時間にわたって禁止しました。
1月7日、Facebookは、トランプ氏の投稿、Facebook以外での最近の発言、連邦議会議事堂での暴力行為の深刻さについての追加情報をさらに検討したうえで、この禁止措置を「期限を定めず、権力の平和的な移行が完了するまで、少なくとも以後2週間」にわたって延長しました。
1月20日、ジョー・バイデン大統領の就任式が行われ、トランプ氏は米国大統領の座から去りました。
1月21日、Facebookは本事例の審査を委員会に依頼したことを発表しました。Facebookが判断を求めたのは、トランプ氏によるFacebookおよびInstagramへのコンテンツの投稿を無期限に禁止した1月7日の決定は、正しい判断であったかについてでした。同社は併せて、利用者が政治的指導者である場合の利用停止措置に関する提言も求めました。
1月6日の2件の投稿以外にも、Facebookは過去に、ドナルド・J・トランプ氏のFacebookページに投稿されたオーガニックコンテンツには、同社のコミュニティ規定への違反が5件あると判断していました。これらの違反のうちの3件は昨年のものでした。これら5件の違反投稿は削除されましたが、アカウントレベルの制裁措置は適用されませんでした。
主な調査結果
委員会は、トランプ氏による1月6日の2件の投稿は、Facebookのコミュニティ規定およびInstagramのコミュニティガイドラインに著しく違反していると判断しました。1番目の投稿の「We love you. You’re very special (あなた方のことを愛している。あなた方は本当に特別な人たちだ)」という部分と、2番目の投稿の「great patriots (偉大な愛国者たち)」および「remember this day forever (そしてこの日を永久に心に刻もう)」という部分は、暴力行為に関与する人々の称賛または支持(支援)を禁止しているFacebookの規則に違反するものでした。
委員会は、トランプ氏は選挙に不正があったとする根拠のない説明を繰り返し、行動を促す呼びかけに執着し続ける中で、暴力行為が発生する深刻なリスクが懸念される環境を作り出したと判断しました。トランプ氏がこれらの投稿を行った当時、危害が生じる差し迫ったリスクが明らかに存在し、また、この暴動に関与している人々を支持するトランプ氏の言葉は、これらの人々による暴力的活動を正当化するものでした。大統領として、トランプ氏には強い影響力がありました。トランプ氏の投稿が届く範囲は広く、Facebookでのフォロワーは3,500万人、Instagramでは2,400万人でした。
こうした違反行為の深刻さ、および暴力行為がさらに生じる危険性のある状況が続いていたことを考慮すれば、Facebookが1月6日にトランプ氏のアカウントを停止し、1月7日にその停止を延長したことには、正当な理由がありました。
しかしながら、Facebookが「無期限の」利用停止を課したのは、適切ではありませんでした。
Facebookが利用者に対して期限を定めずにプラットフォームの利用停止を継続し、アカウントがいつ再開されるのか、あるいは再開されることがあるのかについて基準を示さないことは、許容される対応ではありません。
この罰則を適用するにあたり、Facebookは明確で公開された手順に従っていませんでした。「無期限の」利用停止は、同社のコンテンツポリシーに記載されていません。Facebookが課す通常の罰則には、違反コンテンツの削除、期間を限定した利用停止、該当するページやアカウントの永久的な利用停止などがあります。
Facebookのコンテンツポリシーへの重大な違反に応じた必要かつ相応な各種罰則を設定する役割を負っているのは、Facebookです。委員会の役割は、Facebookの規則とプロセスが、同社のコンテンツポリシー、価値観、および人権への取り組みに則ったものとなるようにすることです。
あいまいで基準を欠く罰則を適用しておきながら、本事例の判断を委員会に依頼して解決を図ることで、Facebookは自らが負う責任を免れようとしています。委員会は、Facebookからの要請を拒否し、Facebookが明確な罰則を適用し、その罰則が正当である理由を提示するよう要求します。
監督委員会の決定
監督委員会は、トランプ氏によるFacebookおよびInstagramへの投稿を停止する2021年1月7日のFacebookの決定を支持しました。ただし、Facebookはトランプ氏のアカウントを「無期限に」停止したため、同社はこの罰則を見直す必要があります。
この決定の日付から6か月以内に、Facebookは1月7日に課した恣意的な罰則について再検討し、適切な罰則を決定する必要があります。この罰則は、違反の重大性、および将来に危害が生じる見込みに基づくものでなければなりません。また、重大な違反に関するFacebookの規則に則った罰則でなければならず、この規則も同様に、明確かつ必要性と相応性に基づくものである必要があります。
Facebookがトランプ氏のアカウントの再開を決定するのであれば、自社の規則をその決定に適用すべきです。ここでいう規則には、ポリシーに関する下記の委員会の勧告を受けて行った変更も含まれます。このシナリオでは、Facebookはさらなる違反行為が生じた場合、速やかに、同社の所定のコンテンツポリシーに従って対処しなければなりません。
委員会の少数派は、Facebookは人権に対する悪影響が繰り返されることを防止するとともに、利用停止後のアカウントの再開を希望する利用者が、自分の違反行為について認識し、以後は規則の遵守に取り組むよう徹底させるための措置を講じる必要があると強調しました。
Facebookは本事例の審査を委員会に依頼した際、「利用者が政治的指導者である場合の利用停止措置に関する委員会の見解と勧告」を明示的に要請しました。
委員会はポリシーに関する助言の中で、政治的指導者など影響力のある人物が引き起こす危害の深刻なリスクに関して、Facebookのポリシーにとって指針となる多くの勧告を行っています。
委員会は、大規模なオーディエンスを抱える他の利用者も危害をもたらす深刻なリスクを助長する可能性があることを認識しており、政治的指導者と影響力のある他の利用者との間に明確な区別を設けることは必ずしも有益ではないと述べました。
すべての利用者に同一の規則を適用すべきである一方で、危害の可能性と切迫性を評価する際には文脈や状況が重要になってきます。影響力のある利用者の投稿に、差し迫った危害をもたらす高い可能性が認められる場合、Facebookは同社の規則を執行すべく迅速に行動する必要があります。Facebookは本事例において「他の人に知らせる価値」という許容要件を適用しなかったと説明しましたが、委員会はFacebookに対し、影響力のある利用者に関する決定のあり方について広まっている困惑に対処するよう求めました。委員会は、重大な危害を防止するために緊急の対応が必要とされるときには、他人に知らせる価値の考慮は優先されるべきではないことを強調しました。
Facebookは、影響力のある利用者に対してアカウントレベルの制裁措置を課す際に用いる規則について、公式に説明する必要があります。そのような規則は、影響力のある利用者のアカウントに対して、重大な危害のリスクを減少させるために、期間を限定した利用停止措置を課す場合、利用停止措置の終了前に、そのリスクが減少しているかどうかをFacebookが必ず評価するよう義務付けるものであるべきです。その時点でその利用者が差し迫った暴力や差別、その他の違法な行為を扇動する深刻なリスクをもたらしているとFacebookが判断し、追加の措置が公共の安全の保護に必要とされ、そのリスクに対して相応である場合、期間を限定した追加の利用停止措置を課すべきです。
委員会は、国家元首や他の政府高官はその他の人々よりも有害な影響を及ぼす力が強い可能性がある点にも触れました。国家元首や政府高官が、人権に関する国際規範上の危害が生じるリスクをはらむメッセージを繰り返し投稿した場合、Facebookはそのアカウントを、差し迫った危害を防止するうえで十分な期間にわたって停止する必要があります。利用停止期間は、違法行為を防止するのに十分な長さとすべきであり、また適切である場合、アカウントやページの削除を含めることができます。
他の勧告では、委員会はFacebookが次の対応を行うよう提案しました。
- 強い影響力のある利用者の政治的発言を含むコンテンツについては、言語学的・政治的コンテキストに精通した専門スタッフに速やかにエスカレーションする。このようなスタッフが政治的・経済的干渉や不当な威圧を受けることのないようにする必要があります。
- 世界中の影響力のあるアカウントを対象に、その各アカウントから危害が生じるリスクを評価するために、十分なリソースと専門知識を動員する。
- 他の人に知らせる価値という許容要件を適用するためのプロセスと基準を利用者が理解して評価するのに役立つ情報を、その許容要件が影響力のあるアカウントにどう適用されるかも含め、より多く提示する。Facebookはまた、クロスチェックによる審査の根拠、基準およびプロセスを明確に説明するとともに、通常の執行手順の場合と比較した、クロスチェックを通じて行われた判断の相対的な過誤率を報告すべきです。
- 選挙の不正説や、1月6日の暴力行為にまで発展した、米国内で深刻化する対立にFacebookが寄与していた可能性について、包括的な検討を行う。この検討は、設計とポリシーに関してFacebookが行ってきた選択のうち、同社プラットフォームが悪用される余地を生んだ可能性のあるものについて、率直に考察するものである必要があります。
- Facebookの人権に関する企業ポリシーの中で、犯罪、人権、人道に関する国際法への重大な違反に対する調査と可能性のある起訴に向けた協力のため、同社が情報を取得し、保持し、適切な場合に共有する方法を明確にする。
- Facebookのコミュニティ規定とInstagramのコミュニティガイドラインの中で、プロフィール、ページ、グループ、アカウントを制限する際の罰則適用までのストライク回数と罰則の運用プロセスについて説明する。
- プロフィール、ページ、アカウントに対する制限の回数を、地域・国別に情報を分類してFacebookの透明性レポートに記載する。
- 利用者に対して判定された違反の数、ストライク回数、課された罰則の数について、ならびに以後違反した場合はどのような結果となるのかについて、わかりやすく容易に確認できる情報を利用者に提供する。
- Facebookの通常のプロセスでは差し迫った危害の防止や回避が不可能であるような危機的状況や過去に例のない状況へのFacebookの対応に適用されるポリシーを策定し、公開する。この指針では、そのような対応をとる場合の適切な条件、例えば同社の決定を一定期間内に見直すという要件などを決めておくべきです。
*事例の概要はその事例の要約であり、先例としての価値はありません。
事例に関する決定の詳細
本事例では、Facebookは委員会に対し、次の2つの質問に回答するよう求めました。
Facebookが重んじる価値観、特に「意見」と「安全性」への取り組みに照らして、ドナルド・J・トランプ氏によるFacebookおよびInstagramへのコンテンツの投稿を無期限に禁止した2021年1月7日の決定は、正しい判断であったか。
無期限の利用停止を支持するか無効と判断するかについての委員会の審査結果に加えて、Facebookは、利用者が政治的指導者である場合の利用停止措置に関する委員会の見解と勧告を希望しています。
1. 決定の概要
委員会は、Facebookが当時大統領であったドナルド・トランプ氏に対して同氏のFacebookページとInstagramアカウントへのコンテンツの投稿を制限した2021年1月7日の決定を支持します。
しかしながら、アカウントを無期限に停止するという、不確定で基準を欠いた罰則をFacebookが課したのは、適切ではありませんでした。Facebookが課す通常の罰則には、違反コンテンツの削除、期間を限定した利用停止、該当するページやアカウントの永久的な利用停止などがあります。
委員会は、この事項をFacebookが再検討し、Facebookプラットフォームのその他の利用者に適用される規則に則った、相応な対応を判断してその正当性を示すことを要求します。Facebookはこの事項の再検討を、この決定の日付から6か月以内に完了する必要があります。委員会はまた、公共の安全を促進しつつ表現の自由を尊重する、明確かつ必要性と相応性に基づくポリシーをFacebookが策定するにあたって、Facebookが組み込むべきポリシーについても勧告します。
2. 事例の説明
選挙は民主主義にとって欠かせない要素です。選挙によって、世界中の人々が社会的対立を抑制し、平和的に解決することができます。アメリカ合衆国では、憲法の規定により、大統領は選挙人の投票を集計することで選出されます。2021年1月6日、2020年の選挙人投票の集計作業が続く中、選挙人投票の集計が行われていた議事堂に暴徒が強引に侵入しました。これは、憲法に基づく手続きを脅かすものでした。この暴力行為を通じて、5人が死亡し、それを上回る多数の負傷者が出ました。
1月6日までに、当時大統領であったドナルド・トランプ氏は、2020年11月の大統領選挙は盗まれたと証拠を示さずに主張していました。トランプ氏その他が選挙不正について提起した一連の法的申し立ては、70件以上が裁判所により退けられ、当時の司法長官は調査後に、「選挙結果が変わっていたかもしれない規模の」不正はなかったと述べています。しかしながら、トランプ氏はこうした根拠に欠ける主張を続け、その手段としてFacebookが使用されることもあり、また、以下に示すように、1月6日に予定されていた集会にも言及していました。
- 2020年12月19日、トランプ氏のFacebookページに次のような投稿がありました。「Peter Navarro releases 36-page report alleging election fraud 'more than sufficient' to swing victory to Trump - A great report by Peter. Statistically impossible to have lost the 2020 Election. Big protest in D.C. on January 6th. Be there, will be wild! (ピーター・ナヴァロ氏が36ページにわたる報告書を発表する。ナヴァロ氏のこの偉大な報告書は、トランプに勝利を呼び戻すのに「十分すぎるほどの」選挙不正があったことを断言している。2020年の選挙で負けたことは、統計的に見てあり得ない。1月6日には首都で大規模な抗議活動。参加を。ワイルドなものになるだろう)」
- 2021年1月1日、トランプ氏のFacebookページに次のような投稿がありました。「The BIG Protest Rally in Washington, D.C., will take place at 11.00 A.M. on January 6th. Locational details to follow. StopTheSteal! (首都ワシントンでの大規模抗議集会は1月6日午前11時に行われる。詳しい場所は追って通知。選挙を盗ませるな!)」
2021年1月6日の朝、トランプ氏はホワイトハウスの近くで開かれた集会に参加し、演説を行いました。トランプ氏は、選挙に勝ったのは自分だと事実無根の主張を繰り返し、副大統領マイク・ペンス氏が次期大統領ジョー・バイデン氏の勝利を覆してくれるはずだとほのめかしましたが、ペンス氏にそのような権限はありませんでした。トランプ氏は、「we will stop the steal (我々は選挙を盗ませない)」、「we’re going to the Capitol (皆で議事堂に向かう)」とも述べました。
この発言を受け、集会に参加した人々の多くが米連邦議会議事堂に向かって行進し、その場にすでに集まっていた他のデモ参加者たちに合流しました。デモ参加者の多くが議事堂の警備当局者を襲撃し、建物内に不法侵入し、議事堂内で暴動を繰り広げました。ペンス氏を始めとする国会議員は、暴力行為の矛先が向けられるおそれのある非常に危険な状況に置かれていました。この暴動を通じて、5人が死亡し、多数の負傷者が出ました。
これらの出来事が起きている間、トランプ氏は1件の動画と声明文を同氏のFacebookページ(当時のフォロワー数は3,500万人以上)に投稿しました。この動画はトランプ氏のInstagramアカウント(当時のフォロワー数は2,400万人以上)にもシェアされました。投稿は2020年の選挙について、「stolen (盗まれた)」、「stripped away (奪い取られた)」ものだと述べていました。また、当時議事堂内で暴動を続けていたデモ隊を称賛、支持していましたが、その一方で、平和的に振舞うようデモ隊に求めてもいました。トランプ氏のFacebookページとInstagramアカウントのいずれも、ページ名またはアカウント名の横に青いチェックマークアイコンが表示されています。これは、そのアカウントが公人・著名人の本物のプレゼンスであることをFacebookが認めたことを示します。
暴動がまだ続いていた午後4時21分(東部標準時)に投稿されたこの1分間の動画の中で、トランプ氏は次のように述べました。
I know your pain. I know you’re hurt. We had an election that was stolen from us. It was a landslide election, and everyone knows it, especially the other side, but you have to go home now. We have to have peace. We have to have law and order. We have to respect our great people in law and order. We don’t want anybody hurt. It’s a very tough period of time. There’s never been a time like this where such a thing happened, where they could take it away from all of us, from me, from you, from our country. This was a fraudulent election, but we can't play into the hands of these people. We have to have peace. So go home. We love you. You're very special. You've seen what happens. You see the way others are treated that are so bad and so evil. I know how you feel. But go home and go home in peace. (私はあなた方が苦しんでいることを理解している。あなた方が傷ついていることも。この選挙は私たちから盗まれたものだ。選挙は圧勝だった。誰もが知っている。特に敵の陣営は。しかし、あなた方は今すぐ家に帰る必要がある。平和に行こう。法と秩序を守らなければいけない。法と秩序を守る偉大な国民に敬意を払う必要がある。負傷者が出るのを望んではいない。今はとても苦しい時期だ。こんなことが起こるなんて、未だかつてないことだ。私たちから、私から、あなた方から、この国から、この勝利が奪われるようなことが起こるなんて。今回の選挙は不正選挙だったが、不正を行った側の思うつぼにはまってはならない。平和に行こう。だから家に帰ってほしい。あなた方のことを愛している。あなた方は本当に特別な人たちだ。何が起こったかを目の当たりにした。ほかの人々が不当で邪悪な扱いを受けるのを見てきた。気持ちはわかる。しかし、家に帰ってほしい。平和的に)
午後5時41分(東部標準時)、Facebookはこの投稿を、Facebookの危険な人物および団体に関するコミュニティ規定に違反したとして削除しました。
警察が議事堂の安全を確保する中、トランプ氏は午後6時07分(東部標準時)に次の声明文を投稿しました。
These are the things and events that happen when a sacred landslide election victory is so unceremoniously viciously stripped away from great patriots who have been badly unfairly treated for so long. Go home with love in peace. Remember this day forever! (長い間ひどく不当な扱いを受けてきた偉大な愛国者たちから、神聖な選挙の圧勝がひどく乱暴に、悪意を持って奪い取られたことでこのような事態になった。しかし、平和的に、愛の精神で家に帰ってほしい。そしてこの日を永久に心に刻もう!)
午後6時15分(東部標準時)、Facebookはこの投稿を、Facebookの危険な人物および団体に関するコミュニティ規定に違反したとして削除したうえで、トランプ氏によるFacebookまたはInstagramへの投稿を24時間にわたって禁止する措置を課しました。
2021年1月7日、Facebookは、トランプ大統領の投稿、Facebook以外での最近の発言、連邦議会議事堂での暴力行為の深刻さについての追加情報をさらに検討したうえで、この禁止措置を「期限を定めず、権力の平和的な移行が完了するまで、少なくとも以後2週間」にわたって延長しました。また、トランプ氏が「民主的に選出された政府に対する暴力的な反乱を扇動するためにFacebookプラットフォームを使用した」ことに言及しました。
1月6日から数日後、一部の暴動参加者は、大統領の要請に応えて参加したのだと公に述べました。2021年1月16日のワシントン・ポスト紙には、ある参加者の次の発言が引用されました。「我が大統領に従っていたつもりだったのです...私たちは、飛行機でそこに向かうよう大統領からお願いされたのです。あの場所に来てほしいと。私は大統領からお願いされたとおりのことをしていたわけです」。ある動画には、議事堂の階段から警察官に向かって「我々は招待されてここにいるんだ!米国大統領に招待されてな!」と叫ぶ暴徒が映っていました。
コロンビア特別区は1月6日に非常事態宣言を発令し、同日中にこれを1月21日まで延長しました。1月27日、国土安全保障省(DHS)はNational Terrorism Advisory System Bulletin (国家テロ勧告システム公報)を発行し、この中で、「米国全土で脅威が高まっており、この情勢は、大統領就任式が無事に終了した後も数週間は続くものとDHSは見ている」と注意を促しました。また、「暴力行為の推進要因は2021年初頭まで残り、一部の者[国内の暴力的過激派]が、2021年1月6日に起きたワシントンD.C.の米国連邦議会議事堂への侵入によって自信を持ち、選挙で選ばれた当局者や政府施設を標的にする可能性がある」とも述べました。
Facebookが同社のコンテンツポリシーに違反していると判断した投稿は削除されましたが、トランプ氏のFacebookページとInstagramアカウントは、誰でも閲覧できる状態のままです。ページやアカウントには、Facebookが課した制限についての通知はありません。2021年1月21日、Facebookは本事例の審査を監督委員会に依頼したことを発表しました。
2021年1月6日の2件の投稿以外にも、Facebookは過去に、ドナルド・J・トランプ氏のFacebookページに投稿されたオーガニックコンテンツには、同社のコミュニティ規定への違反が5件あると判断していました。うち3件は昨年のものでした。これら5件の違反投稿は削除されましたが、アカウントレベルの制裁措置は適用されませんでした。Facebookは、違反のストライクが適用されたものがあるかどうかについての委員会からの質問への回答の中で、このページは、同社の新型コロナウイルス感染症関連の偽情報と危害に関するポリシーに違反した2020年8月の1件の投稿について、ストライクを1つ受けていると述べました。Facebookは、削除した他の違反コンテンツにストライクが付かなかった理由を説明しませんでした。
Facebookは「他の人に知らせる価値という許容要件」を設けており、Facebookのポリシーに違反するコンテンツであっても、「他の人に知らせる価値があり、公共の利益のために必要である」と同社からみなされた場合、この許容要件に基づき、そのコンテンツはプラットフォーム上に残ることが許容されます。Facebookは、「他の人に知らせる価値という許容要件を、トランプ氏のFacebookページまたはInstagramアカウントで投稿されたコンテンツに適用したことは一度もない」と主張しました。
Facebookは委員会からの質問への回答の中で、「トランプ氏のFacebookページおよびInstagramアカウント上には、コンテンツレビューチームまたは自動検知技術によって、当初Facebookのコミュニティ規定違反として扱われたものの、最終的には違反コンテンツではないと判断されたコンテンツが20件あった」ことを明らかにしました。
Facebookは、「執行の誤りが生じるリスクを最小限にする」目的で、「クロスチェック」体制を一部の「著名人」のアカウントに適用していると委員会に説明しました。これらのアカウントについては、Facebookのコミュニティ規定に違反していると判断されたコンテンツがある場合、同社内でのさらなる審査に回付されます。このエスカレーションを経て、Facebookはコンテンツが違反しているかを判断します。Facebookは委員会に対し、「政治的指導者が投稿したコンテンツに対して基準が甘くなる通則が同社にあったことは一度もない」と述べています。同一の通則が適用されるものの、「クロスチェック」体制があるということは、「著名人」である一部利用者に対しては意思決定プロセスが異なっていることになります。
3. 権限と範囲
監督委員会には、Facebookから回付された幅広い質問を審査する権限があります(憲章第2条第1項、規則第2条第2.1項)。これらに質問に対する審査結果には拘束力があり、ポリシーに関する助言が勧告とともに併せて提示される場合もあります。この勧告に拘束力はありませんが、Facebookはこれに回答する必要があります(憲章第3条第4項)。委員会は独立した苦情解決の仕組みであり、透明性が確保された、原則に基づく方法で紛争に対処します。
4. 関連する基準
監督委員会はその憲章に基づき、すべての事例を、以下に示す一連の基準に照らして検討する必要があります。
I. Facebookのコンテンツポリシー:
Facebookには、Facebook上で投稿が禁止されているコンテンツについて説明したコミュニティ規定があります。同様にInstagramには、Instagram上で投稿が禁止されているコンテンツについて説明したコミュニティガイドラインがあります。
Facebookの危険な人物および団体に関するコミュニティ規定は、「Facebookがテロ攻撃、ヘイトイベント、大量殺人またはその試み、連続殺人、ヘイトクライム、違反しているイベントと特定した出来事を称賛、支援または表現するコンテンツ」を禁止しています。また、「上述の団体、組織、個人、およびこれらの当事者により行われた行為を称賛するコンテンツ」も禁止しています。「上述の…」は、ここではヘイト団体や犯罪組織などを指しています。
Instagramのコミュニティガイドラインには、「Instagramは、テロリズムや組織的犯罪、煽動集団を支援したり称賛したりする場ではありません」と明記されており、危険な人物および団体に関するコミュニティ規定へのリンクが組み込まれています。
Facebookの暴力と扇動に関するコミュニティ規定には、同社は「人身に実際の危害を及ぼす、または公共の安全を直接脅かすおそれがあると思われる場合には、...コンテンツを削除し、アカウントを停止し、法執行機関に協力します」と明記されています。同規定は、「深刻度が高い暴力行為を擁護する発言」と「投票や有権者登録といった行為、あるいは選挙の管理または結果を理由とした、暴力を意図する発言、暴力行為の呼びかけ、条件次第で暴力を行使するとうたう発言、暴力行為を望むような発言、または暴力の擁護を含むコンテンツ」を明確に禁止しています。また、「差し迫った暴力または身体的危害のリスクを助長する偽情報および検証できない噂」も禁止しています。
Instagramのコミュニティガイドラインには、「明らかな脅迫を意図したコンテンツ」をFacebookは削除することに加え、「公共および個人の安全に害を及ぼす深刻な脅威となる投稿は許可されません」と明記されています。どちらのセクションにも、暴力と扇動に関するコミュニティ規定へのリンクが組み込まれています。
Facebookの利用規約には、利用者がFacebookの規約またはポリシーに「明白もしくは重大な違反を行い、または繰り返し違反した」とFacebookが判断した場合、同社がアカウントへの「アクセスを一時的または永久に停止することができます」と明記されています。コミュニティ規定の「はじめに」には、「Facebookコミュニティ規定への違反に対する処分は、違反の深刻さや、違反歴によって異なります」と記されています。
Instagramの利用規約には、Facebookは「コミュニティまたはサービスを保護する目的上、サービスの全部または一部の提供を直ちに拒否または停止することができます(Facebook製品やFacebookグループ企業の製品へのアクセス権の取り消しや停止を含む)。また、利用者の行為により弊社に何らかのリスクが生じたり、弊社が法的リスクを負うこととなったりした場合、[または]利用者が本利用規約もしくは弊社のポリシー(Instagramコミュニティガイドラインを含む)に違反した場合...についても同様とします」と明記されています。Instagramのコミュニティガイドラインには、「これらの規定範囲に従わない行為は、コンテンツの削除、アカウントの停止、またはその他の制限につながる可能性があります」と明記されています。
II. Facebookが重んじる価値観:
Facebookが重んじる5つの価値観については、コミュニティ規定の「はじめに」にその概要が示されています。Facebookはこれら5つの価値観を、同社プラットフォームで許容されるコンテンツについての指針を示すものだと主張しています。これらの価値観のうちの3つは、「意見」、「安全性」、「尊厳」です。
Facebookは「意見」に関して、「たとえ賛同できない、あるいは好ましくないと感じる人がいるかもしれない問題に関しても、利用者にとって重要な問題についてはオープンに話し合えるようにしたいと考えています。[...]弊社では自由な表現に対する取り組みを何よりも大切にしていますが、インターネットでは不適切なコンテンツが次々と現れ、増加していることも認識しています」と述べています。
Facebookは「安全性」を、「Facebookが安全な場所となるように」努めるFacebookの取り組みとして説明し、「利用者を脅かすような表現は、他の人を脅迫したり、排除したり、黙らせたりすることにつながる可能性があり、Facebookでは認められていません」と述べています。
Facebookは「尊厳」を、「すべての人の尊厳と権利は平等」という同社の信念として説明し、「利用者が他の人の尊厳を尊重し、嫌がらせや誹謗を行わないことを望んでいます」と述べています。
III. 人権基準:
2021年3月16日、Facebookは人権に関する企業ポリシーを発表し、その中で、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)に従って権利を尊重することへの決意を改めて表明しました。UNGPsは、国連人権理事会により2011年に採択された、人権に関して民間企業が負う責任について自主的な枠組みを定めた基準です。UNGPsに基づく取り組みを進めるグローバル企業として、Facebookは、事業を行うあらゆる地域で、国際的な人権基準を尊重する必要があります。監督委員会は、Facebookに適用される国際的な人権基準の観点から同社の決定を評価するよう求められています。
委員会は本事例におけるFacebookの人権保障責任について、次のものを含む人権基準を考慮に入れて分析しました。
- 表現の自由の権利: 市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第19条および第20条、規約人権委員会の一般的意見34 (2011年) (一般的意見34)における解釈、ラバト行動計画(OHCHR、2012年)、意見及び表現の自由に関する国連特別報告者(UN Special Rapporteur on freedom of opinion and expression)報告書A/HRC/38/35 (2018年)、表現の自由に関する国際監視団による新型コロナウイルス感染症についての共同声明(2020年3月)
- 生命に対する権利: ICCPR第6条
- 身体の安全に対する権利: ICCPR第9条第1項。
- 差別を受けない権利:ICCPR第2条および第26条、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(ICERD)第1条および第4条
- 公共分野への参加と投票権:ICCPR第25条
- 救済措置を受ける権利: ICCPR第2条、規約人権委員会の一般的意見31 (2004年) (一般的意見31)、UNGPs原則22
5. コンテンツ作成者の陳述書
Facebookが事例の審査を委員会に依頼した場合、委員会はコンテンツに責任を負う人に、陳述書を提出する機会を提供します。本事例において、委員会への陳述書は、トランプ氏に代わってAmerican Center for Law and Justice (全米法律正義センター)とページ管理者を通じて提出されました。この陳述書では、「前米国大統領ドナルド・トランプ氏のFacebookアカウントに対してFacebookが課した無期限の利用停止措置を撤回させる」ことが委員会に求められています。
陳述書は、2021年1月6日にFacebookおよびInstagramから削除された投稿と、当日中のそれより前の時間に行われたトランプ氏の演説について書かれています。同文書は、これらの投稿は「当日に議事堂およびその周辺にいた人々に対し、平和に振る舞い法律を守ること、および警察の指示に従うことを呼びかけた」ものであり、「これら2つの投稿のいずれも、公共の安全を脅かすもの、または暴力を扇動するものと見られる可能性があるとは考えられない」と述べています。さらに、「トランプ氏の演説の中に、反乱の呼びかけや、暴力の扇動、公共の安全を脅かすようなものが一切なかったことは、あまりにも明白である」と述べているほか、「トランプ氏の演説と議事堂館内への乱入との間に、重大な関連性はまったくない」とも説明しています。
陳述書はFacebookが制限を課した理由についても論じており、「トランプ氏が集会参加者に語った内容には、合理的に見て公共の安全を脅かすようなものと解釈される可能性のあるものは一切含まれていなかった」のであるから、Facebookが制限を課した根拠を安全性に関するものとするのはあり得ないと述べています。また、「安全性に影響を及ぼしたとされるコンテンツには、暴力行為を引き起こす実際のリスクとの直接的かつ明白なつながりがなければならない」とも述べています。陳述書はさらに、集会の演説中に使われた「fight (戦う)」や「fighting (戦い)」という用語は、「合法的な政治的・社会的参加の呼びかけに関連するものであった」と説明し、「これらの言葉は、暴力的な反乱や法律の無視を呼びかけることを意図したものではなく、また合理的な観察者や聞き手から、そのような呼びかけだと判断されるようなものでもない」と結論付けています。
陳述書では「議事堂への乱入」も取り上げており、「トランプ氏に政治的に賛同する真の支持者は皆、法律を守っていた」のであって、乱入は「外部の勢力から間違いなく影響を受け、ほぼ確実に、外部の勢力によって焚きつけられたものであった」と述べています。また、オース・キーパーズ(Oath Keepers)のメンバーに対する連邦訴追請求状について説明し、この団体は「いかなる点でもトランプ氏やその政治団体とは無関係」であったと述べています。そのうえで、オース・キーパーズは「トランプ氏の集会を寄生的に利用し、選挙人に関する議論の問題を同組織自身の目的のために勝手に利用していた」とも述べています。
同文書はまた、暴力と扇動に関するコミュニティ規定には「トランプ氏のFacebookアカウントに対する利用停止措置の裏付けとなるものはない」とも述べており、その理由として、2つの投稿は「単に平和と安全を呼びかけたもの」であり、「トランプ氏の演説で使われたどの言葉も、その正しい文脈において検討されれば、合理的に見て、暴力や法律の無視を扇動するものと解釈される可能性はなかった」ことを挙げています。さらに、「平和的な権力の移行」に言及する、Facebookによる委員会への審査依頼を引用し、この「平和的な政権移譲の保証[原文ママ]に関する新たな場当たり的な規則は、過度にあいまいなだけでなく、Facebookがその規則の正当化に利用した出来事が起きるまで存在していなかった」と述べています。
陳述書ではまた、委員会は「この異議申し立てに関して、アメリカの法律に準拠する」必要があると主張し、表現の自由の権利を制限する場合の国際法上の基準、合法性、正当な目的、および必要性と相応性について、各要素を、米国憲法を参照して解釈しながら検討しています。合法性については、同文書は、誇張表現および虚偽の事実の言明の保護と、公共の議論にとってのFacebookの重要性を挙げています。同文書では、「何が「合理的」と思われるか、または「合理的な人」であればそのコンテンツにどのように反応すると考えられるかに基づいたコンテンツ判断基準を採用するのでは不十分」であり、Facebookは「はるかに高い基準を検討すべきである」と述べています。また、最高裁判所は政治的言論に制約を課す法律に対して厳格な精査を要求していることや、Facebookは市場において支配的な地位にあることについても述べています。その他、暴力の扇動に関する憲法上の基準についても論じています。正当な目的については、同文書では、公共の安全を保つことは正当な目的ではあるものの、トランプ氏の演説は安全上の懸念を生じさせるものではなかったと述べています。必要性と相応性については、制限の妥当性を否定し、罰則は不相応であったと述べています。
陳述書の結論には、利用者が政治的指導者である場合の利用停止措置に関する委員会からのポリシー勧告について、委員会向けの提言も含まれていました。そこには、委員会は「その指導者が統治している、または統治していた国民国家の法的原則に準拠する」べきだと述べられていました。加えて、特定の国家における法の支配の評価、権利の保障、法律の作成過程、司法審査の過程、および関連する法的原則の存在に基づき、その準拠に対する複数の例外についても述べられていました。
6. Facebookの決定についての同社からの説明
いずれの事例についても、Facebookは行った措置について委員会に説明し、委員会は、判断に必要な追加情報を明らかにするためにFacebookに質問します。本事例において、Facebookは、2021年1月6日に投稿された2件のコンテンツを、危険な人物および団体に関するコミュニティ規定に違反したとして削除したと述べています。具体的には、コンテンツは「指定した暴力的事象の称賛、支持、表現を禁止するFacebookのポリシー」に違反したとして削除されました。Facebookはまた、コンテンツには「組織的な暴力行為に関与した個人の称賛を禁じている、Facebookの危険な人物および団体に関するポリシーへの違反」があったとも述べていました。Facebookは、同社のコミュニティ規定では、テロ活動、組織的な暴力行為または犯罪活動などの活動「に関わる団体や組織とそのリーダー、もしくは個人に対する支援や称賛を表すコンテンツ」は明確に禁止されていること、およびそのような活動には、政治的目的を達成するために政府を威嚇する意図を持って人を負傷させようとする、集団的暴行や計画的な暴力行為を含むことに言及しています。
Facebookは、同社による評価は、同社のポリシーの文言と、声明が出されたときの周辺状況(議事堂で進行していた暴力行為を含む)の両方を反映したものだったと述べています。Facebookは、トランプ氏は投稿動画の中で、人々に「go home in peace (家に帰ってほしい。平和的に)」と呼びかけていた一方で、選挙に不正があったとする主張も繰り返し行い、「I know how you feel (気持ちはわかる)」と述べることで共通の目的を示唆していたと述べています。トランプ氏がコメントを出した時点で進行中だった不安定な状況と、トランプ氏の言葉の全体的な趣旨を考慮して、Facebookは、「We love you. You’re very special (あなた方のことを愛している。あなた方は本当に特別な人たちだ)」という発言には、議事堂に突入して法律に違反した人々を称賛する意図があったと結論付けています。Facebookはまた、トランプ氏が議事堂に突入した人々を「great patriots (偉大な愛国者たち)」と称し、「[r]emember this day forever (そしてこの日を永久に心に刻もう)」と強く促していたため、2番目の投稿にはこの出来事の称賛が含まれていると判断しています。
Facebookは、同社のポリシーに繰り返し違反する、または著しく違反するFacebookページやプロフィール、Instagramアカウントの機能を定期的に制限していると述べています。Facebookは、「差し迫った深刻な安全上のリスク」があるとの判断を下した場合、違反する言動が見られる利用者およびページに対し、Facebookの通常の執行手続きを超えて、より強い措置を講じます。そのような場合でも、Facebookの執行措置は依然として同社のコミュニティ規定およびInstagramのコミュニティガイドラインに基づいて行われると同社は述べています。Facebookは同社の方針について、次のように述べています。「永久的禁止を含む、利用可能なあらゆる執行手段を評価したうえで、個別の状況において採用すべき最も適切なものはどれかを判断する。幅広い関心を集める緊急の決定を行わなければならない場合は、その決定とその根拠を一般に開示するよう努める。多くの場合、この開示はFacebookのニュースルームでの掲載を通じて行われる」。
Facebookは、通常、ページでコンテンツを投稿する、またはコンテンツに対してアクションを行う機能を停止することはありませんが、Facebookのポリシーに著しく違反する、または繰り返し違反するページは削除すると述べています。ただし、ドナルド・J・トランプ氏のページのように、Facebookページがある個人の単独の意見を表現する場として利用されている場合、プロフィール向けの執行手続き(機能の停止を含む)がページに適用されることもあるとFacebookは述べています。本事例においてFacebookは、同社の通常の執行手続きに沿って、初めに、FacebookページおよびInstagramアカウントから投稿する機能に対して、24時間の利用停止措置を課しました。議事堂での暴力行為の進展状況と新たに判明した詳細をさらに評価した結果、Facebookは、24時間の利用停止では「トランプ氏が自身のFacebookおよびInstagramでのプレゼンスを通じて、さらなる暴力行為が生じる危険性を助長してしまうリスク」に対処するのに十分ではないと結論付けました。
Facebookは、無期限の利用停止をバイデン氏の就任後も維持していたのは、トランプ氏に関連のある暴力行為は収まっていないとする分析による部分もあったと述べています。Facebookが引用する国土安全保障省(DHS)の1月27日発行のNational Terrorism Advisory System Bulletin (国家テロ勧告システム公報)には、「米国全土で脅威が高まっており、この情勢は、大統領就任式が無事に終了した後も数週間は続くものとDHSは見ている」、「暴力行為の推進要因は2021年初頭まで残り、一部の者[国内の暴力的過激派]が、2021年1月6日に起きたワシントンD.C.の米国連邦議会議事堂への侵入によって自信を持ち、選挙で選ばれた当局者や政府施設を標的にする可能性がある」と記載されています。Facebookは、暴力行為のリスクが減少した場合でも、トランプ氏の1月6日の違反行為が深刻なものであることや、トランプ氏がバイデン氏の選挙は不正であったと主張し続けていること、それ以外にも偽情報をシェアしていること、トランプ氏がもはや大統領ではないことに基づいて、トランプ氏による投稿を永久的に禁止するのが適切である可能性があると述べています。
Facebookは、同社の決定は「国民の生命を脅かす社会的緊急事態が生じている状況における、表現の自由に対する必要かつ相応な制限を認めているICCPRの第19条および表現の自由に関する国連の一般的意見34に基づいて」行われたものであり、「本事例では、コロンビア特別区は米国連邦議会議事堂施設を守るために発令された非常事態宣言下にあった」と説明しています。Facebookは、国民的な憎悪や人種的憎悪、宗教的憎悪をあおることの禁止に関して、ラバト行動計画に掲げられている6つの背景要因も考慮に入れたと述べています。ラバト行動計画は、国連の支援を受けた専門家によって策定された文書であり、差別、敵意または暴力を扇動する人種的憎悪や宗教的憎悪、国民的な憎悪のあおりが深刻であるために、国が課す刑罰を最後の手段として用いるのが適切である場合に、国がICCPRの第19条および第20条第2項に基づく自らの義務に従って、表現の自由を保護しつつ対処するための指針となるものです。
Facebookは1月6日の一連の出来事のことを、米国の民主的プロセスと立憲体制に対する前例のない脅威を示すものであったと主張しています。Facebookは、公的な言論に制限を加えるにあたっては相応性と説明責任に基づいて行動するよう努めていると主張していますが、前例のない不安定な状況下であれば、永久的禁止を含むさらなる措置を講じる、運用上の柔軟な姿勢を保つ必要があると考えています。
本事例において、委員会はFacebookに46件の質問を行い、Facebookは、7件については回答を全面的に拒否し、2件については一部回答を拒否しました。Facebookが回答しなかった質問には、Facebookのニュースフィードや他の機能がトランプ氏のコンテンツの閲覧性に与えた影響の程度についての質問や、Facebookはそれらの設計上の決定を、2021年1月6日の一連の出来事に関連して調査したのか、または調査する予定があるのかについての質問、トランプ氏のアカウントのフォロワーが投稿した違反コンテンツに関する情報についての質問が含まれていました。委員会はまた、他の政治家に対する利用停止措置や他のコンテンツの削除に関する質問、トランプ氏のアカウントに対する利用停止措置について、Facebookは行政府の官職者やそのスタッフから問い合わせを受けたことがあるかに関する質問、および、アカウントの利用停止または削除により、広告主がフォロワーのアカウントをターゲットにする能力に影響が及ぶかどうかに関する質問も行いました。Facebookは、このような情報は憲章の意図に従った意思決定のために正当に要求されたものではないか、提供するのは技術的に不可能であるか、弁護士・依頼者間の秘匿特権の対象であるか、または法律、プライバシー、安全もしくはデータ保護上の懸念があるため提供できず、また提供すべきではないと述べました。
7. 第三者から寄せられた提案
本事例に関して、監督委員会には9,666件のパブリックコメントが寄せられました。これらのコメントのうち、80件はアジア太平洋・オセアニア、7件は中央・南アジア、136件は欧州、23件はラテンアメリカ・カリブ海地域、13件は中東・北アフリカ、19件はサハラ砂漠以南のアフリカ地域、9,388件は米国・カナダから寄せられたものでした。
これらの提案は、以下のように、委員会がパブリックコメントの募集に際して具体的に挙げていた問題を含む、さまざまな論題にわたるものでした。
- Facebookによるトランプ氏のアカウントに対する無期限の利用停止措置、Facebookが負っている表現の自由と人権を尊重する責任が果たされていた可能性、代替手段を用いるべきであったかどうか。
- Facebookが同社のコミュニティ規定を執行するにあたって(特に、該当のコンテンツが暴力を扇動する可能性がある場合において)行うFacebook外の背景情報の評価に関するポリシーと慣行。
- アカウントの停止に関するFacebookの規則の明確さに関わる問題。
- 政治家、官職者および元官職者に関するFacebookのグローバルコンテンツポリシー(Facebookの「他の人に知らせる価値」という許容要件の妥当性や、市民の情報に対する権利を含む)。
- Facebookのコミュニティ規定が政治的偏向に基づいて執行された場合の一貫性に関する懸念。
- トランプ氏の過去の投稿(特定の集団に対する危害や偽情報の拡散を助長した可能性があるものを含む)に関するFacebookのコミュニティ規定の執行についての懸念。
- 1月6日当日、およびそれ以前にトランプ氏が用いた表現が、暴力の扇動に相当していたか否か。
- 米国の選挙の結果とトランプ政権。
本事例に関して提出されたパブリックコメントを読むにはこちらをクリックしてください。
8. 監督委員会による分析
8.1 コンテンツポリシーへの準拠
委員会は、トランプ氏による1月6日の2件の投稿は、Facebookのコミュニティ規定およびInstagramのコミュニティガイドラインに違反していたとするFacebookの決定に同意します。Facebookの危険な人物および団体に関するコミュニティ規定には、利用者は、違反行為にあたる出来事「に関わる団体や組織とそのリーダー、または個人に対する支援や称賛を表す」コンテンツを投稿すべきではないことが記されています。Facebookは、議事堂への突入を「違反行為にあたる出来事」に指定し、また違反行為にあたる出来事を、指定された「暴力行為を伴う」出来事が含まれるように解釈すると述べました。
これらの投稿が行われた時点では、議事堂での暴力行為は進行中でした。どちらの投稿も、暴力行為に関与する人々を称賛または支持する内容のものでした。1番目の投稿の「We love you. You’re very special (あなた方のことを愛している。あなた方は本当に特別な人たちだ)」という文言と、2番目の投稿の「great patriots (偉大な愛国者たち)」および「remember this day forever (そしてこの日を永久に心に刻もう)」という文言は、当日に議事堂での暴力行為と出来事に関与していた個人に対する称賛または支持に相当するものでした。
委員会は、本事例では他のコミュニティ規定(暴力と扇動に関する規定を含む)への違反があった可能性について述べています。ただし、Facebookの決定はこの規定に基づいたものではなく、違反行為がさらに見つかったとしてもこの審査手続きの結果には影響しないため、委員会の過半数は、このような別の根拠について、いかなる判断も下すことを控えます。Facebookがトランプ氏のアカウントに制限を課したことを支持するこの決定は、危険な人物および団体に関するコミュニティ規定への違反があったことに基づいています。
委員会の少数派は、その他の根拠も考慮し、暴力と扇動に関する規定への違反があったと見ています。少数派は、選挙について「stolen from us (私たちから盗まれた)」、「so unceremoniously viciously stripped (ひどく乱暴に、悪意を持って奪い取られた)」と述べるこれらの投稿は、文脈の中で読めば、暴徒に対する礼賛とも相まって、暴力と扇動に関する規定が禁止している「行為の呼びかけ」、「暴力の擁護」、ならびに「差し迫った暴力または身体的危害のリスクを助長[した]偽情報および検証できない噂」に該当すると判断しています。
委員会は、これら2件の投稿はFacebookのポリシーに著しく違反していたと判断し、Facebookが1月6日と7日にアカウントとページを制限したことには正当な理由があったと結論付けました。この利用者は、複数の人が死亡し、国会議員たちが深刻な危害のリスクにさらされ、重要な民主的プロセスが中断される事態を招いた継続的暴動に関与していた人々を称賛し、支持しました。加えて、1月7日にトランプ氏に対する制限が延長された時点では、状況は流動的であり、深刻な安全上の懸念が残されていました。こうした状況を考慮すれば、トランプ氏によるFacebookおよびInstagramへのアクセスを1月6日および7日以降制限することは、暴力行為と混乱が生じる継続的リスクがあったことを踏まえれば、適切なバランスのとれた対応でした。しかし、以下で詳細に検討しますが、そのような制限の期間を「無制限」にするFacebookの決定は、その正当性を裏付けるものがコミュニティ規定内に見当たらず、表現の自由の原則に違反しています。
委員会は、クロスチェック体制、および他の人に知らせる価値という許容要件についての詳細な公開情報が限定的であると述べています。著名人のアカウントにも通常のアカウントにも同一の規則が適用されるとFacebookは述べているものの、プロセスが異なるために、実質的には異なる結果が生じる可能性があります。Facebookは、本事例において、他の人に知らせる価値という許容要件を、問題の投稿に適用しなかったと委員会に伝えています。残念ながら、これらの意思決定プロセスに関する透明性の欠如は、Facebookが政治的または商業的な考慮事項に過度に影響されているかもしれないと認識される一因となっているように思われます。
8.2 Facebookが重んじる価値観の遵守
上記の分析は、Facebookが明記している「意見」および「安全性」の価値観に合致しています。この見解において述べられている理由により、本事例において公共の秩序の保護は、表現の自由を制限する理由として正当なものでした。
委員会の少数派は、「尊厳」も関係していた点を強調することが特に重要と考えています。Facebookは「尊厳」を平等と関連付け、人々は他の人の「嫌がらせや誹謗を行う」べきではないと述べています。少数派は、トランプ氏によるFacebookプラットフォームへの過去の投稿は人種間の緊張と排斥を助長していたのであり、この背景状況は、トランプ氏のコンテンツの影響力を理解するうえで重要であったと考えています。多数派は本事例を他の根拠に基づいて取り扱ったため、これらの投稿について見解を述べるのは控えます。
8.3 Facebookの人権保障責任の遵守
委員会の決定は国の人権保障義務や国内法の適用に関わるものではありませんが、Facebookのコンテンツポリシー、その価値観、および事業者としてのその人権保障責任に焦点を当てたものとなっています。Facebookが支持している国連ビジネスと人権に関する指導原則(セクション4を参照)は、事業者がこのような責任を果たすために自主的に行うべき事項を定めたものです。これには、生じ得るおよび現に生じた危害を特定すること、ならびにそれらを防止する、またはそれらに対処するよう取り組むことなどを通じて、人権上の危害をもたらしたり助長したりすることを回避することが含まれます(UNGPの原則11、13、15、18)。これらの責任事項は、第三者に起因する危害にも適用されます(UNGPの原則19)。
Facebookは政治的議論にとって事実上欠かすことのできないメディアとなっており、このことは選挙期間において特に当てはまります。Facebookには、政治的見解の表明を認めること、および他の人権に対する深刻なリスクを回避することの両方の責任があります。Facebookは、他のデジタルプラットフォームやメディア企業と同様、偽情報を拡散し、賛否の分かれる煽情的なトピックを増幅させているとして強く批判されています。Facebookの人権保障責任は、時として競合することのある考慮事項を踏まえて理解されなければなりません。
委員会はFacebookの人権保障責任を、表現の自由と生命、安全、および政治参加に対する権利に関する国際基準を通じて分析します。ICCPRの第19条は、表現の自由の権利を定めています。第19条は、「すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と述べています。委員会は、非公開会社の行動には適用されない米国憲法修正第1条を適用しません。しかし、修正第1条に反映されている表現の自由の原則は、多くの関連する面において、ICCPR第19条における表現の自由の原則と類似ないし相似していると委員会は述べています。
政治的言論は民主的議論にとって重要であるため、人権法の下で厚く保護されます。国連規約人権委員会は、一般的意見34においてICCPR第19条に関する権威ある指針を提示し、この中で次のように述べています。「公共の問題および政治的問題に関する情報と見解の自由なやり取りが、市民、候補者、選出議員・政治家の間で行われることが不可欠である」(第20項)。
トランプ氏のFacebookページおよびInstagramアカウントを停止するFacebookの決定は、トランプ氏にとってだけでなく、人々が持つ政治的指導者の言論を聞く権利にとっても、その政治的指導者を支持しているか否かを問わず、表現の自由に影響を及ぼすものです。政治家が他の人々よりも広範な表現の自由の権利を持っているわけではありませんが、政治家の言論を制限することは、他の人々が情報を得て政治に参加する権利を害する可能性があります。ただし、国際的な人権基準では、国家的機関・団体が暴力行為を非難し(ラバト行動計画)、公共の利益に関する事項について正確な情報を国民に提供しつつ、偽情報の訂正も行うことが期待されています(2020年の表現の自由に関する国際監視団による新型コロナウイルス感染症についての共同声明)。
国際法では、一定の条件を満たす場合、表現を制限することが認められています。いかなる制限も、規則が明確でわかりやすく容易に閲覧可能であること、その制限が正当な目的のために設定されること、およびその制限が危害のリスクに対して必要かつ相応なものであること、という3つの要件を満たす必要があります。委員会はこの3つの部分からなるテストを使用し、Facebookがコンテンツまたはアカウントを制限する場合にとる措置を分析します。米国法における修正第1条の原則は、国の措置を通じて課される表現の自由に対する制限はあいまいなものであってはならず、政府にとっての重要な理由によるものでなければならず、また危害のリスクに合わせて厳密に調整されなければならないとも主張しています。
I. 合法性(規則の明確性とわかりやすさ・閲覧可能性)
表現の自由に関する国際法においては、合法性の原則により、表現を制限するために用いられる規則は、明確でわかりやすく容易に閲覧可能であることが求められます。何が許容され何が許容されないかを、人々が理解できなければなりません。同様に重要なのは、表現を制限する決定を下す担当者にとって指針となる、十分に明確な規則を設けることで、その規則を根拠に無制限の裁量が与えられることのないようにする必要があることです。無制限の裁量が与えられると、規則が一部にだけ選択的に適用される結果を招く可能性があります。本事例の場合、このような規則にあたるのは、Facebookのコミュニティ規定とInstagramのコミュニティガイドラインです。これらのポリシーの目的は、どのようなコンテンツを投稿できないのか、そしてFacebookがどのような場合にFacebookやInstagramのアカウントの利用制限を課すことができるのかについて規定することにあります。
危険な人物および団体の称賛および支援に対する同規定の明確性については、委員会が過去の決定(事例2020-005-FB-UA)において述べたように、改善すべき点が大いにあります。表現の自由に関する国連特別報告者(UN Special Rapporteur on freedom of expression)は、危険な人物および団体に関する規定のあいまいさについても懸念を提起しています(A/HRC/38/35、第26項、脚注67)。委員会が過去に事例2020-003-FB-UAにおいて述べたように、特定の文言が合法性に関する懸念を生じさせることもありますが、特定の事例に適用される場合、そうした懸念は必要ではありません。同規定の条項にあいまいさがあったとしても、それによって当該規定を本事例の状況に適用することの妥当性が疑わしくなることはありません。1月6日の議事堂での暴動は、Facebookのポリシーで定められている有害な出来事の種類にぴったり該当し、トランプ氏の投稿は、暴力行為が起きている中、そして国会議員たちがトランプ氏に助けを求めていた真っ只中のタイミングで、暴動に関与していた人々を称賛して支持していました。これらの事実と関連して考えると、Facebookのポリシーは、利用者に対する十分な通知と、規則を執行する担当者への十分な指針を与える内容のものでした。
違反行為に対する罰則に関して、アカウント制限に関するコミュニティ規定および関連情報は、利用規約、コミュニティ規定の「はじめに」、アカウントの保全性と実名の使用に関するコミュニティ規定、Facebookニュースルーム、およびFacebookヘルプセンターを含む、さまざまな場所で公開されています。事例2020-006-FB-FBRにおいても述べましたが、委員会は、適用される複数の規則がパッチワーク状に配置されているため、利用者にとって、いつどのような理由でFacebookがアカウントを制限するのかを理解するのが困難であり、合法性に関する懸念を生じさせていることを改めて指摘します。
委員会は、危険な人物および団体に関する規定が、表現の自由についての明確性およびあいまいさに関する基準を満たすうえで、本事例の状況の下で十分に明確であることに満足しています。一方、Facebookが「無期限の」制限を課したことは、あいまいさが残り、根拠が明確ではありません。「無期限の」制限はコミュニティ規定に記載がなく、この罰則がどのような基準に基づいて適用されるのか、またこの罰則を維持または解除するにあたってどのような基準が用いられるのかが不明確です。Facebookは、その他の事例において過去に無期限の利用停止措置を課したことがあったのかについて、何らの情報も提供しませんでした。委員会は、1月の件のような緊急時には、Facebook側の一定の裁量でアカウントを利用停止にする必要性があることを認めますが、利用者が、期限の設定なしに不確定な状態に置かれたままとなることがあってはなりません。
委員会は、明確な基準なく課して解除した無期限の制限を委員会が支持するよう求めるFacebookの要請を拒否します。裁量権に対する適切な制限は、裁量の正当な行使と、Facebookが危害に結び付かない言論を不当に封じ込めたり、人々の保護に不可欠な措置を遅延させたりする、世界中で起こり得るシナリオとを区別するうえで、極めて重要です。
II. 正当な目的
正当な目的の要件とは、表現を制限する手段はICCPRの第19条第3項に掲げられている目的のためのものでなければならないことを意味します。ここに掲げられている目的は包括的なものです。正当な目的には、公共の秩序の保護や、他者の権利の尊重などがあり、ここでいう他者の権利には、生命、安全に対する権利、ならびに選挙に参加する権利およびその選挙結果が尊重され履行される権利が含まれます。単に気に入らないから、または不快だからという理由でその言論を検閲したいがために安全または他者の権利を保護する目的を持ち出す場合など、ある目的が表現を抑圧するための口実として用いられる場合、その目的は正当とはみなされません(一般的意見34、第11項、第30項、第46項、第48項)。「違反行為にあたる出来事」、暴力行為または犯罪活動に関与した個人に対する称賛や支援に関するFacebookのポリシーは、上記の目的と合致していました。
III. 必要性と相応性
必要性と相応性の要件とは、表現に対する制限は、とりわけ、正当な目的を達成するうえで最も干渉性の低い方法でなければならない(一般的意見34、第34項)。
委員会は、Facebookは危害をもたらす可能性のある言論に対処して他の人の権利を保護するとき、可能であれば、コンテンツの削除やアカウント制限に訴える前に、それよりも制限性の低い措置を用いるべきであると考えます。したがって、差し迫った暴力や差別など、違法な行為のリスクをもたらす言論に対処するにあたり、可能で相応である場合にはその言論を全面的に禁止するのではなく、言論の増幅を回避できるような仕組みを開発することが最低でも望まれます。
Facebookは委員会に対し、トランプ氏が「選挙の完全性に対する信頼を切り崩す目的で、Facebookその他のプラットフォームを繰り返し使用したこと(そして偽情報を訂正する公式ラベルをFacebookが度々貼ることを余儀なくされたこと)は、プラットフォームの異例の不正利用であった」と考えていると述べました。委員会は、Facebookプラットフォームの設計上の決定(アルゴリズム、ポリシー、手順、技術的機能を含む)によって、選挙後にトランプ氏の投稿がどの程度増幅されたのかについて、および、Facebookはそのような設計上の決定が1月6日の一連の出来事を助長した可能性があるかどうかの社内分析を実施したかどうかについて、明確にするようFacebookに求めました。Facebookはこれらの質問への回答を拒否しました。このため、厳格性の低い手段がこれより前に講じられていたら、他者の権利を保護するのにそうした措置で十分だった可能性があるかを委員会が評価するのは困難です。
決定的に重要な問題は、トランプ氏のアカウントの利用を制限するFacebookの1月6日および7日の決定は、他者の権利を保護するうえで必要かつ相応であったかどうかです。1月6日の投稿がもたらしたリスクを理解するために、委員会は、11月の選挙以降にトランプ氏が行ったFacebookとInstagramの投稿、およびプラットフォーム外のコメントについて評価を行いました。トランプ氏は、選挙に不正があったとする根拠のない説明を繰り返し、行動を促す呼びかけに執着し続ける中で、暴力行為が発生する深刻なリスクが懸念される環境を作り出しました。1月6日、トランプ氏は暴動に関与する人々に支持の言葉を送り、その暴力的行為を正当化しました。トランプ氏のメッセージには、人々に平和的に行動するよう形だけは呼びかけているように見える表現も含まれていました。しかし、緊張を緩和し、トランプ氏による支持表明が助長した危害のリスクを取り除くにはそれだけでは不十分でした。Facebookがトランプ氏の1月6日の投稿を、米国で高まっていた緊張、およびトランプ氏が他のメディアや公的行事で行った一連の発言を背景状況として踏まえて解釈したことは適切でした。
委員会は分析の一環として、ラバト行動計画に掲げられている以下の6つの要因に立脚し、差別や暴力、その他の違法な行為を扇動する深刻なリスクを言論が生み出す可能性を評価しました。
- 背景状況: 一連の投稿は、2020年11月の大統領選挙が盗まれたとする根拠のない主張をめぐって、政治的緊張が高まりを見せていた中で行われました。トランプ氏の陣営はこうした一連の主張を裁判所に提起しましたが、証拠をほとんど、あるいは一切提出せず、これらの主張は一貫して退けられました。それにもかかわらず、トランプ氏は、これらの主張に信用性を持たせるために、国家元首としての権威ある地位を利用しながら、FacebookとInstagramを含むソーシャルメディア上でその主張を続けました。トランプ氏は、「選挙を盗ませない」よう1月6日に国の首都に来るよう支持者を促し、そこで起こることは「ワイルドなもの」になるだろうと示唆しました。1月6日、トランプ氏は支持者に対し、議事堂の建物に向かって行進し、選挙人票の集計に異議を示すよう強く訴えました。これらの投稿の時点では、深刻な暴力行為が続いていました。1月7日に制限が延長された時、状況は依然として不安定でした。中でも、コロンビア特別区が議事堂での出来事をめぐって暴力行為のリスクが高まっていることを警告する措置を講じたことは、当時の背景状況をよく表しています。
- 発言者の地位: トランプ氏がFacebookやInstagramで行う投稿は、米国大統領および政治的指導者としての同氏の立場からのものであるため、強い影響力を持ちます。トランプ氏は大統領として一般の人々から信用できる権威ある人物と見られており、そのことが1月6日の出来事を助長したと委員会は述べています。重大な責任のある国家元首としてのトランプ氏の地位は、その言葉の影響力と信用性を高めていただけでなく、トランプ氏の支持者が自分は刑罰を受けずに行動できると受け取る危険性を生みました。
- 意図: 委員会は、トランプ氏の意図を確定的に判定する立場にありません。しかし、トランプ氏の発言に連動して暴力行為が生じる可能性があることは明らかでした。委員会は、トランプ氏はこうしたメッセージが暴力行為を正当化または奨励する危険性をもたらすことを認識していた可能性が高いか、または認識すべきであったとみなしました。
- コンテンツと形式: 1月6日の2つの投稿は、暴徒に平和的に家に帰るよう呼びかけていた面はあったものの、暴徒を称賛、支持する内容のものでした。また、これらの投稿は、選挙が盗まれたとする根拠のない主張を繰り返していました。この主張は、一部の暴徒から、その行動を正当化してくれるものと受け取られていたとの報告があります。ここでの証拠からは、トランプ氏が、議事堂の襲撃者を擁護し、法に則った選挙人票集計を阻止しようとして大統領の地位が持つコミュニケーション上の権力を利用したことがわかります。
- 範囲とリーチ:トランプ氏は大規模なオーディエンスを抱えており、Facebookでは3,500万以上のアカウントから、Instagramでは2,400万以上のアカウントからフォローされていました。このようなソーシャルメディア投稿は、マスメディアのチャネルや大規模なオーディエンスを抱える著名なトランプ氏支持者らによって取り上げられ、より広範囲にシェアされることで、投稿が届く範囲が大幅に拡大することが頻繁にあるという点も重要です。
- 危害の切迫性: これらの投稿が行われたのは、暴力行為が続く不安定で流動的な時期でした。生命、選挙の完全性、および政治参加への危害が生じる差し迫ったリスクが、明らかに存在していました。議事堂での暴力行為は、Facebookや他のソーシャルメディアを介して呼びかけられた集会から1時間以内に開始されました。実際、トランプ氏が投稿している間にも、暴徒は議会のホールで暴動を繰り広げており、議員たちはホワイトハウスに助けを求めたり大統領に事態の鎮静化を懇願したりして恐怖を伝えていました。この暴動は、議会が選挙人票の集計という憲法に基づく責任を果たす能力を直接的に阻害し、このプロセスを数時間遅延させました。
委員会はこれらの要因を分析した結果として、本事例における侵害行為は、それが人権にもたらす危害という点で重大なものであったと判断します。Facebookがアカウントレベルの制限を1月6日に課し、1月7日にはその制限を延長したことは、必要かつ相応でした。
委員会の少数派の見解では、期間を延長した利用停止や永久的な利用停止は1月6日の出来事のみに基づいて正当とみなせる一方で、相応性の分析には、2020年11月の大統領選挙より前の時期における、トランプ氏のFacebookプラットフォームの使用状況についての情報も踏まえる必要があるとみています。特に、人種間の不平等撤廃を求める抗議活動を背景に行われた、「when the looting starts, the shooting starts (略奪が始まれば、銃撃が始まる)」という2020年5月28日の投稿のほか、「チャイナウイルス」に言及する複数の投稿について触れました。Facebookは、差別を受けない権利(ICCPR第2条第1項、ICERD第2条)を尊重するとともに、表現の自由の権利を制限する場合の要件(ICCPR第19条第3項)に沿って、Facebookプラットフォームが、敵意、差別または暴力行為を扇動するものとみなされる人種的または国民的な憎悪のあおりに利用されるのを防止する(ICCPR第20条、ICERD第4条)よう、取り組むことを約束しています。有害なメッセージの頻度、量、程度についての情報が、ラバト行動計画の扇動性に関する分析(ラバト行動計画第29項)、特に背景状況と意図に関する要因に反映されるべきです。委員会の少数派は、他の政治指導者に対する抑止手段、そして適切な場合に意識を改める機会としての役割を果たせる相応な罰則を検討するうえで、Facebookが1月7日に行った罰則の評価においてはこのような範囲を広げた分析結果が考慮されるべきであったと考えています。さらに、期間を限定した利用停止措置をFacebookが課すことを選択した場合、アカウントの再開に先立って必要となるリスク分析においても、これらの要因を考慮に入れる必要があります。多数派は本事例を他の根拠に基づいて取り扱ったため、これらの事項について見解を述べるのは控えます。
9. 監督委員会の決定
1月6日にトランプ氏のアカウントに制限を課したFacebookの決定には、正当な理由がありました。問題の投稿は、米国連邦議会議事堂で当時進行中だった暴動を含む、違反行為にあたる出来事の支援や称賛を禁止するFacebookおよびInstagramの規則に違反していました。こうした違反行為の深刻さ、および暴力行為がさらに生じる危険性のある状況が続いていたことを考慮すれば、Facebookがアカウントレベルの制限を課し、1月7日にその制限を延長したことには、正当な理由がありました。
しかしながら、Facebookが無期限の利用停止を課したのは、適切ではありませんでした。
Facebookは本事例において、明確で公開された手順に従っていませんでした。Facebookが同社の規則への違反行為に対して課す通常のアカウントレベルの罰則は、期間を限定した利用停止措置を課すか、利用者のアカウントを永久的に停止するかのいずれかです。委員会は、Facebookが利用者に対して期限を定めずにプラットフォームの利用停止を継続し、アカウントがいつ再開されるのか、あるいは再開されることがあるのかについて基準を示さないことは、許容される対応ではないものと判断します。
Facebookのコンテンツポリシーへの重大な違反に応じて適用する必要かつ相応な罰則を設定して伝える役割を負っているのは、Facebookです。委員会の役割は、Facebookの規則とプロセスが、同社のコンテンツポリシー、価値観、および人権尊重に向けた取り組みに則ったものとなるようにすることです。不確定で基準を欠く罰則を適用しておきながら、本事例の判断を委員会に依頼して解決を図ることで、Facebookは自らが負う責任を免れようとしています。委員会は、Facebookからの要請を拒否し、Facebookが明確な罰則を適用し、その罰則が正当である理由を提示するよう要求します。
Facebookは、この決定の日付から6か月以内に、1月7日に課した恣意的な罰則について再検討し、適切な罰則を決定する必要があります。この罰則は、違反の重大性、および将来に危害が生じる見込みに基づくものでなければなりません。また、重大な違反に関するFacebookの規則に則った罰則でなければならず、この規則も同様に、明確かつ必要性と相応性に基づくものである必要があります。
Facebookは、トランプ氏のアカウントを再開すべきと判断するのであれば、自社の規則をその決定に適用すべきです。ここでいう規則には、ポリシーに関する下記の委員会の勧告に従って行った変更も含まれます。また、Facebookは、トランプ氏に対するプラットフォームの利用停止を解除することを決定した場合、さらなる違反行為が生じたときには、速やかに、同社の所定のコンテンツポリシーに従って対処しなければなりません。
委員会の少数派は、Facebookの人権保障責任に対する委員会の評価を反映した最低限の基準を大まかに示すことが重要と考えています。多数派は、代わりにこの指針をポリシーに関する勧告として提示する方がよいと考えています。少数派は、Facebookが負っている人権尊重責任には、同社が助長した人権に対する悪影響の是正を促進することが含まれる(UNGPsの原則22)と明確に指摘しています。救済措置は、国際的な人権法をより幅広く反映したUNGPの「保護・尊重・救済」という枠組みの基本要素です(ICCPR第2条第3項(規約人権委員会の一般的意見31、第15項~第18項における解釈による))。Facebookは、悪影響が繰り返されないことを保証する責任を果たすために、トランプ氏のアカウントの再開によって、差別や暴力、その他の違法な行為を扇動する深刻なリスクをもたらすことになるかどうかを評価しなければなりません。このリスク評価は、上記のセクション8.3.IIIにおける必要性と相応性の分析の中で委員会が詳述した考慮事項に基づくべきです。これには、FacebookとInstagramの内外での背景情報と状況が含まれます。例えば、Facebookは、1月6日の利用停止措置の正当性を裏付けるような形でトランプ氏が選挙の不正に関する根拠のない主張することはなくなったという結果に満足すべきです。Facebookの執行手続きは、将来的な利用の再開を目的とするものであり、委員会の少数派は、この目的は人権法における満足の原則に十分に合致しているものと考えています。委員会の少数派は、Facebookの規則を通じて、利用停止後のアカウントの再開を希望する利用者が、自分の違反行為について認識し、以後は規則の遵守に取り組むよう徹底させるべきであると強調しています。本事例において少数派は、Facebookはトランプ氏のアカウントを再開するにあたって、暴動に関与した人々に対する称賛と支持を必ず撤回させるようにもすべきと提案しています。
10. ポリシーに関する助言
委員会は、本事例が提起する困難な問題を認識しており、寄せられた多くの考え抜かれた積極的なパブリックコメントに感謝しています。
Facebookはこの事項の審査を監督委員会に依頼した際、「利用者が政治的指導者である場合の利用停止措置に関する委員会の見解と勧告」を明示的に要請しました。委員会はFacebookに対し、「政治的指導者」という用語の解釈を明確にするよう求めました。Facebookは、「選挙で選ばれた、または任命された政府職員、および近く行われる選挙への立候補に向け積極的に活動している人々(候補者が選出されなかった場合は選挙後の短期間を含む)」を対象とするようにしているが、国家に関わる人すべてが対象であるわけではないと説明しました。委員会は、本事例について行った分析に基づき、提示する指針を公共の安全の問題に限定します。
委員会は、政治的指導者と影響力のある他の利用者との間に明確な区別を設けることは必ずしも有益ではないと考えます。大規模なオーディエンスを抱える他の利用者にも、危害をもたらす深刻なリスクを助長する可能性がある点を認識することは重要です。プラットフォームのすべての利用者に同一の規則を適用すべきですが、因果関係の問題、および危害の可能性と切迫性を評価する際には文脈や状況が重要になってきます。重要なのは、利用者が他の利用者に対して持つ影響力の程度です。
影響力のある利用者の投稿が、国際的な人権基準に基づく評価の結果、差し迫った危害をもたらす高い可能性を示している場合、Facebookは同社の規則を迅速に執行すべく対応する必要があります。Facebookは、影響力のある利用者の投稿を、その投稿がどのように受け取られる可能性が高いかという観点に沿って、文脈を踏まえて評価しなければなりません。たとえその投稿の煽情的なメッセージが、平和的に、法に従って行動するように表面的に呼びかける言葉など、責任を回避するための言葉で表現されていたとしても同様です。Facebookはラバト行動計画における6つの背景要因を本事例で使用しましたが、委員会は、危害をもたらす可能性のある言論のリスクを背景状況に応じて評価するうえでこれが有益な方法であると考えます。委員会は、このような状況においては時間が非常に重要であるという点を強調します。影響力のある利用者が重大な危害を引き起こす前に措置を講じることは、他の人に知らせる価値や、政治コミュニケーションの他の価値よりも優先されるべきです。
すべての利用者に同一のコンテンツポリシーが適用されるべきですが、政治的指導者の言論を評価する際には、独自の要素を考慮しなければなりません。国家元首や他の政府高官は、その他の人々よりも有害な影響を及ぼす力が強い可能性があります。Facebookは、国家元首や他の政府高官による投稿が、暴力行為を奨励、正当化、または扇動する高いリスクをはらんでいる可能性があることを認識すべきです。これは、重職者としての地位によってその言葉の影響力と信用性が高まるため、あるいは自分は刑罰を受けずに行動できるものと支持者が推測してしまうおそれがあるためです。同時に、人々が持つ政治的発言を聞く権利も保護することが重要です。それでも、国家元首や政府高官が、人権に関する国際規範上の危害が生じるリスクをはらむメッセージを繰り返し投稿した場合、Facebookはそのアカウントを、差し迫った危害を防止するうえで十分かつ明確な期間にわたって停止する必要があります。利用停止の期間は、違法行為を防止するのに十分な長さとすべきであり、また適切である場合、アカウントやページの削除を含めることができます。
言論に対する制限は、権力を持つ国家関係者によって、またはそのような人物の命令に基づいて、反対意見や政治的反対派に対して課されることがよくあります。Facebookは、政治的反対派の言論を封じ込めようとする政府からの圧力に抵抗しなければなりません。潜在的リスクを評価する際、Facebookは関連する政治的背景を特に慎重に検討すべきです。そして強い影響力のある利用者の政治的発言を評価する際、Facebookは、速やかにそのコンテンツのモデレーションを専門スタッフにエスカレーションするべきです。この専門スタッフは、言語学的・政治的コンテキストに精通し、政治的・経済的干渉や不当な威圧を受けることのない人物である必要があります。この分析では、危害をもたらす可能性のある言論に関連した背景や状況の全体を十分に評価できるように、強い影響力のある利用者のFacebookおよびInstagramプラットフォーム外での行動を調査する必要があります。さらに、Facebookは、世界中の影響力のあるアカウントを対象に、その各アカウントから危害が生じるリスクを評価するため、必ず十分なリソースと専門知識を動員するようにすべきです。
Facebookは、影響力のある利用者に対してアカウントレベルの制裁措置を課す際に用いる規則について、公式に説明する必要があります。そのような規則は、影響力のある利用者のアカウントに対して、重大な危害のリスクを減少させるために、期間を限定した利用停止措置を課す場合、利用停止期間の満了前に、そのリスクが減少しているかどうかをFacebookが必ず評価するよう義務付けるものであるべきです。その時点でその利用者が差し迫った暴力や差別、その他の違法な行為を扇動する深刻なリスクをもたらしているとFacebookが判断し、追加の措置が公共の安全の保護に必要とされ、そのリスクに対して相応である場合、期間を限定した追加の利用停止措置を課すべきです。
影響力のある利用者に適用される特別の手順をFacebookが実施するときには、その手順をきちんと文書化する必要があります。本事例においてはFacebookが異なる基準を適用したのかどうかが明確でなかったこともあり、委員会は、他の人に知らせる価値という許容要件が適用される可能性について、多くの懸念を耳にしました。重要なのは、Facebookがこの透明性の欠如とそれがもたらした混乱に対処することです。Facebookは、他の人に知らせる価値という許容要件を適用するためのプロセスと基準を利用者が理解して評価するのに役立つ情報を、より多く提示すべきです。Facebookは、他の人に知らせる価値という許容要件が、政治的指導者や他の公人・著名人を含む影響力のあるアカウントに対してどのように適用されるかを、明確に説明する必要があります。クロスチェックによる審査については、Facebookは審査の根拠、基準、およびプロセスについて、どのページやアカウントを対象に含めるか決める際の基準を含め、明確に説明する必要があります。また、通常の執行手順の場合と比較した、クロスチェックを通じて行われた判断の相対的な過誤率および主題の一貫性を報告すべきです。
Facebookプラットフォームが、影響力のある利用者により、人権に対する深刻な悪影響をもたらす形で不正利用された場合、Facebookはその出来事に対する徹底的な調査を実施する必要があります。Facebookは、Facebookを通じてどのような影響が及んだかを評価するとともに、今後の悪影響を特定、防止および軽減し、説明責任を果たすためにどのような変更を行うことができるかを評価する必要があります。本事例に関しては、Facebookは、選挙の不正説や、2021年1月6日の暴力行為にまで発展した、米国内で深刻化する対立にFacebookが寄与していた可能性について、包括的な検討を行うべきです。この検討は、設計とポリシーに関してFacebookが行ってきた選択のうち、同社プラットフォームが悪用される余地を生んだ可能性のあるものについて、率直に考察するものである必要があります。Facebookは、このデューデリジェンスを実施し、その調査結果に基づく行動計画を実践し、同社に関係のあった人権上の悪影響への対処方法についてオープンにコミュニケーションを取るべきです。
FacebookまたはInstagramの利用者が残虐な犯罪または重大な人権侵害、およびICCPRの第20条に定める扇動に関与していた可能性がある場合、コンテンツの削除やアカウントの停止は、危害のリスクを減少させる可能性がある一方、証拠を削除することなどから、説明責任への取り組みを損なうこともあります。Facebookには、犯罪、人権、人道に関する国際法への重大な違反に対する調査や可能性のある起訴に向けて管轄機関および説明責任機構に協力するために、情報を取得し、保持し、適切な場合に共有する責任があります。Facebookの人権に関する企業ポリシーは、同社がこれに関して整備している手続きを明確化したものである必要があります。このポリシーはまた、以前にFacebookプラットフォーム上で公開されていた情報が、国際的な基準および適用されるデータ保護法に準拠した調査を実施する研究者に向けて、どのように提供されることがあるかについても明確にする必要があります。
本事例によって、Facebookが対処すべき同社のポリシーの欠陥がさらに浮き彫りになりました。特に、Facebookの罰則の仕組みは利用者にとって十分に明確ではなく、同社の裁量の行使を規制するための十分な指針となっていません。Facebookはコミュニティ規定とガイドラインの中で、FacebookおよびInstagramのプロフィール、ページ、グループ、アカウントを制限する際のストライクと罰則の運用プロセスを、明解かつ包括的で、わかりやすく容易に閲覧可能な形で説明すべきです。これらのポリシーによって、ストライクがいつ課されるのかについて(適用される例外事項や許容要件を含む)、および罰則の計算方法について理解するのに十分な情報を利用者に提供する必要があります。また、Facebookは、利用者に対して判定された違反の数、ストライク回数、課された罰則の数について、ならびに以後違反した場合はどのような結果となるのかについて、わかりやすく容易に確認できる情報を利用者に提供すべきです。Facebookはその透明性レポートに、プロフィール、ページ、アカウントに対する制限の回数を、執行措置が講じられた理由と方法を含め、地域・国別に情報を分類して記載する必要があります。
最後に、委員会は、Facebookの通常のプロセスでは差し迫った危害の防止や回避が不可能であるような危機的状況や過去に例のない状況への対応に適用されるポリシーを策定して公開するようFacebookに強く求めます。このような状況を常に予想できるわけではありませんが、Facebookは、そのような対応をとる場合の適切な条件、例えば同社の決定を一定期間内に見直すという要件などを定めた指針を決めておくべきです。
*手続きに関する注記:
監督委員会の決定は、5名のメンバーからなるパネルにより準備され、委員会の過半数の承認を得ています。委員会の決定は、必ずしもメンバー全員の個人的見解を反映したものではありません。
العودة إلى قرارات الحالة والآراء الاستشارية المتعلقة بالسياسة