पलट जाना
米国食品医薬品局(FDA)が承認していない治療におけるケタミンの奨励
17 अगस्त 2023
監督委員会は、不安やうつ病の治療法としてケタミンを使用した体験を論じたある利用者のInstagram投稿を残すというMetaの決定を無効と判断しました。
事例の概要
監督委員会は、不安やうつ病の治療法としてケタミンを使用した体験を論じたある利用者のInstagram投稿を残すというMetaの決定を無効と判断しました。委員会は、当該コンテンツがMetaのブランドコンテンツポリシー(Metaが利用者に広告を表示して対価を受け取る広告とは異なり、同ポリシーはクリエイターが外部の「ビジネスパートナー」から報酬を受け取るコンテンツに適用されます)および同社の制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反していたと判断します。本事例は、薬物を宣伝するブランドコンテンツや、薬物の購入、販売または取引の試みに対するMetaの厳しい制限が、施行において一貫性を欠く可能性を示唆しています。
事例の内容
2022年12月29日、ある認証済みのInstagramユーザーがキャプション付きの投稿1件の一部として、関連画像を10点投稿しました。有名なケタミン療法の従事者がその投稿の共同投稿者としてタグ付けされており、投稿は「タイアップ投稿」とラベル付けされていました。Metaのブランドコンテンツポリシーに基づき、Metaのビジネスパートナーは自身のコンテンツに当該ラベルを付して、第三者との商業上の関係を透明性のある形で開示しなければなりません。
この利用者はキャプションの中で、このケタミン療法の従事者の米国内の診療所2か所で、不安やうつ病の治療としてケタミンの投与を受けたと述べています。この利用者はケタミンが薬だと記述していますが、投稿では専門的な診断について全く言及しておらず、治療が免許を受けたクリニックで行われたという明確な証拠はありません。また、医学的管理の下で治療が行われたことを示す記載もありません。投稿には、この利用者の治療法は“magical entry into another dimension”(異次元への魔法の入口)だと記されています。また、“psychedelics”(幻覚剤) (投稿ではケタミンを含むと示唆されている)は、新興の精神衛生薬として重要であるとの考えが表されていました。10点の描画のうち数点には幻覚剤の画像が含まれており、この利用者の体験を絵コンテ式に描き、この利用者が“treatment-resistant depression and anxiety”(治療が効かないうつ病と不安)のための“therapy sessions”(セラピー治療セッション)を何度か受けたことを示しています。この体験を描写した利用者のアカウントには約20万人のフォロワーがおり、投稿は約8万5,000回閲覧されました。
3人の利用者が当該投稿に含まれる画像のうち1つ以上を報告し、当該コンテンツはMetaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に基づいて3回削除・復元されました。当該投稿が3回目に削除された後、コンテンツクリエイターがこの投稿をMetaに指摘しました。その後、同コンテンツは追加審査を求めてポリシーや対象分野の専門家にエスカレーションされ、最初に投稿が行われてから約6か月後に復元されました。それからMetaは、本事例の審査を委員会に要請しました。このコンテンツクリエイターのステータスが「マネージドパートナー」であったことが、この投稿のMeta内部でのエスカレーションを後押ししました。「マネージドパートナー」は、有名人などの個人や、企業・慈善団体などの団体を含め、さまざまな業界の者から成ります。マネージドパートナーは、専門のパートナーマネージャーへのアクセスなど、強化されたさまざまなレベルのサポートを受けることができます。
主な調査結果
以下に詳述するとおり、本事例は、薬物を宣伝するブランドコンテンツや、プラットフォームでの薬物の購入、販売または取引の試みに対するMetaの厳しい制限が、施行において一貫性を欠く可能性を示唆しています。
本事例のコンテンツはタイアップ投稿の一部として投稿されたため、ブランドコンテンツポリシーを適用する必要があります。委員会は、Metaが審査要請や当初の提出情報の中で、本事例のこの側面を記述しなかった点を懸念しています。委員会は、同社に質問を提出してから初めて、この投稿の有償性を把握しました。Metaのブランドコンテンツポリシーには「違法薬物や娯楽のための麻薬などの薬物および薬物関連商品」など、「特定の商品やサービス、ブランドは、ブランドコンテンツで宣伝できません」と記載されています。本事例のコンテンツは「タイアップ投稿」の一部であり、ケタミンの使用を明確に宣伝しているとともに、例外の適用対象ではなかったため、当該ポリシーに違反していました。委員会からの質問への回答でMetaは、「タイアップ投稿」ラベルを付されたコンテンツがすべてブランドコンテンツポリシーに照らして審査されるとは限らないこと、大規模なコンテンツ審査を行うモデレーターがこのラベルを見られないこと、このモデレーターがブランドコンテンツポリシーの施行を担当する専門チームにコンテンツを回すよう経路変更できないことを認めました。この事実は、この種のコンテンツに対する施行不足のリスクを増加させます。そのため、委員会は、ブランドコンテンツポリシーを含むすべての関連ポリシーに照らしてコンテンツを確実に審査するようMetaに強く促します。
また、委員会は、このコンテンツが制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反すると判断します。当該コミュニティ規定は、「医薬品」(処方箋を必要とする薬物、または医療従事者による投与が必要な薬物)の宣伝を許可する一方で、「非医療用の薬物」(意図された医療目的のために使用されていない、または気分の高揚を得るために使用される薬物または物質)の宣伝を禁止しています。しかし、本事例が示すとおり、一部の薬物はこれら両方のカテゴリに該当します。この矛盾する要素間の緊張を解決する最善の方法は、薬物を処方・投与する医療従事者の重要な役割を強調することでしょう。上の段落で指摘したとおり、ペイドコンテンツには、制限の度合いがさらに強い基準が適用されます。本事例のコンテンツには、「気分の高揚」を得るための薬物使用を強く示唆する記述が含まれるものの、医学的診断には直接言及しておらず、医療スタッフ(「医師」、「看護師」、「精神科医」など)についての言及もないため、委員会は、ケタミンが医学的管理の下で使用されたことを本事例の利用者が十分に実証していなかったと判断します。したがって、このコンテンツはコミュニティ規定に違反しており、削除すべきです。
委員会は、薬物に関連したMetaのポリシーの施行が一貫性に欠ける可能性についても懸念しています。2022年末の4週間の期間に掲載された広告の確認に基づいてWall Street Journalが最近行った調査により、「リスクを引き合いに出すことなく処方薬の利点を記述した、FacebookとInstagram上の2,100超の広告が、未承認の用法に関して薬物を宣伝したり、当事者によるものか会社の社員によるものかを明らかにすることなく証言を掲載したりしていた」ことが明らかになりました。National Association of Boards of Pharmacy (NABP)から委員会に寄せられたパブリックコメントでも、Metaのプラットフォームにおいて、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反するかどうかが曖昧なケースが頻繁に起こっているおそれがあると指摘しています。NABPは「1分とかからない大まかな検索をしただけでも」、明らかに娯楽目的で使用されるケタミンについて掲載した投稿を複数発見したと指摘しました。
監督委員会の決定
監督委員会は、本コンテンツを残す旨のMetaの決定を無効と判断し、当該投稿を削除するよう求めます。
委員会はMetaが次の対応をするよう勧告します。
- 「タイアップ投稿」ラベルについて、こうしたラベルに言及する場所にかかわらず(ブランドコンテンツの審査プロセスを含みます)、その意味合いを明確に示すこと。これには、ペイドコンテンツの承認や「タイアップ投稿」ラベルの追加において、ビジネスパートナーの役割を説明することが含まれます。
- 制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の文言で、「医薬品の使用を認める、またはその使用を宣伝する」コンテンツについては、その使用が「気分の高揚」をもたらす場合であっても、「医療現場での管理下」にある場合に限っては許可される旨を明確に示すこと。
- 審査プロセスを改善し、タイアップ投稿の一部として作成されたコンテンツの審査が、適用されるすべてのポリシー(コミュニティ規定およびブランドコンテンツポリシー)に照らして確実に行われるようにすること。Metaは、関係がある場合にはMetaのブランドコンテンツポリシーを適用でき、それを適用する訓練を受けた審査担当者または自動システムにコンテンツを確実に回すようにすべきです。
- ブランドコンテンツポリシー、および制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定のうち、薬物の販売・有料広告に関連するポリシーラインの施行を監査すること。その後、不備があれば、施行においてその不備を補う必要があります。
* 事例の概要はその事例の要約であり、先例としての価値はありません。
事例に関する決定の詳細
1. 決定の概要
監督委員会は、米国内のケタミン療法の従事者の診療所で、不安とうつ病の治療としてケタミンを使用した体験について論じた、ある利用者のInstagram投稿を残すというMetaの決定を無効と判断します。この投稿には「タイアップ投稿」ラベルが含まれており、外部の「ビジネスパートナー」から投稿の報酬が提供されたことを示唆しています。このような投稿は、Metaのブランドコンテンツポリシーに従わなければなりません。当該ポリシーは、厳格な要件の下での薬局および処方薬の宣伝を除き、「違法薬物や娯楽のための麻薬などの薬物および薬物関連商品」の宣伝を禁止しています。委員会は、本事例がこの例外に該当しないと判断しています。このため、委員会は、この投稿がブランドコンテンツポリシーに違反していたと結論づけます。
この投稿がタイアップ投稿でなかったとしても、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反するというのが委員会の見解です。コミュニティ規定は医薬品の宣伝を認めていますが、「気分の高揚」を引き起こすために用いられる薬物の宣伝は禁止しています。ケタミンは医薬品ですが、同時に「気分の高揚」も引き起こし、セラピー治療上の重要な用法と、一般的な娯楽のための用法の両方で使われています。委員会は、「気分の高揚」をもたらす場合であっても、医学的管理下で投与されたことを投稿で明らかにしている場合に限っては、ケタミンを宣伝する投稿を認めるものとしてコミュニティ規定を解釈すべきだと判断します。本事例では、医学的管理の存在を実証する十分な証拠がなかったと委員会は判断します。
Metaの決定を無効と判断することに加え、委員会は、ブランドコンテンツポリシーを改定し、「タイアップ投稿」ラベルの意味を明確にするとともに、該当する場合にはコンテンツの審査担当者がブランドコンテンツポリシーを施行できる体制を整えるようMetaに勧告します。また、薬物の医療上の使用に伴って「気分の高揚」が生じる場合、その薬物を宣伝する投稿については、医学的管理について示す強固な証拠がある状況で使用を論じる場合に限って許可され得ることを反映させるため、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定で非医療用の薬物の定義を明確にするよう勧告します。最後に、委員会は本事例の範囲を越えてMetaのブランドコンテンツポリシーに関心を有しており、関連する場合には、当該ポリシーの施行とビジネスパートナーに関する追加情報を委員会に共有するようMetaに求めます。
2. 事例の説明と背景
2022年12月29日、ある認証済みのInstagramユーザーがキャプション付きの投稿1件の一部として、一連の関連画像を10点投稿しました。有名なケタミン療法の従事者がその投稿の共同投稿者としてタグ付けされていることから、この投稿は両アカウントのフォロワーに共有されており、両アカウントで通常の投稿として表示されます。投稿には「タイアップ投稿」ラベルが付されていました。Metaのブランドコンテンツポリシーに基づき、Metaのビジネスパートナーは自身のコンテンツに当該ラベルを付して、第三者との商業上の関係を透明性のある形で開示しなければなりません。こうしたラベルはコンテンツの投稿者のユーザーネームのすぐ下にテキストとして表示され、「とのタイアップ広告」という記載にビジネスパートナーの名前が添えられます。
一連の画像の下に添えられたキャプションで、この利用者は、米国内にあるケタミン療法の従事者の診療所2か所で、不安やうつ病の治療としてケタミンの投与を受けたと述べています。当該従事者のInstagramアカウントはキャプションで再度タグ付けされており、利用者はそこをクリックして当該アカウントに移動することができます。この利用者はケタミンが薬だと記述していますが、投稿では専門的な診断について全く言及しておらず、治療が免許を受けたクリニックで行われたという明確な証拠はありません。また、医学的管理の下で治療が行われたことを示す記載もありません。投稿には、この利用者の治療法は“magical entry into another dimension”(異次元への魔法の入口)だと記されています。また、“psychedelics”(幻覚剤)(投稿ではケタミンを含むと示唆されている)は、一連の新興の精神衛生薬として重要であるとの考えが表されていました。
一連の10点の画像はいずれも、個別のテキストオーバーレイが付いたプロ品質の描画であり、この従事者で利用者が体験した内容を伝えています。この描画は絵コンテ式で時系列に体験の内容を描いており、利用者が“treatment-resistant depression and anxiety”(治療が効かないうつ病と不安)のための“therapy sessions”(セラピー治療セッション)を何度か受けたことを示しています。いくつかの描画には、頭から出てくる虹や星などの物体、宇宙空間を背景とした日常的な物体など、幻覚状態を想起させる画像が含まれています。一部の描画は、人生の中で困難な時期に、時を同じくしてセラピーを求めていたことを振り返っています。他の画像では連続して、治療の準備(リラクゼーションのプロセスを伴います)、治療そのもの(ケタミンの2回の投与から成ります)、「再統合」(治療後の内省プロセスを伴います)を描いています。別の画像では、“[t]he feeling of both being pulled out of myself while being brought closer to my inner essential core”(自分自身から抜け出しつつ、自身の内面にある本質的な核心に迫るような感覚)という記述を含め、治療を称賛しています。利用者は、この治療を“any good trip”(楽しい旅)に例えました。Metaによる審査要請で主たる画像となったある画像は、診療所について肯定的な描写と記述をしており、利用者をサポートした“extraordinary staff”(素晴らしいスタッフ)にお墨付きを与えています。しかしながら、この一連の画像では正式な医学的管理について一切記述していません。例えば、うつ病や不安の医学的診断には直接言及しておらず、医療の専門家が治療を施したことについても直接言及していません。また、治療に従事した者が免許を受けた診療所なのかどうかも明記していません。
この投稿には約1万件の「いいね!」、1,000件未満のコメントが付き、約8万5,000回閲覧されました。自身の体験について述べたこの利用者のアカウントには、約20万人のフォロワーがいます。
合計で、3人の利用者が当該投稿に含まれる10点の画像のうち1つ以上を報告し、当該コンテンツはMetaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に基づいて3回削除・復元されました。最初の報告があってから30分経たないうちに、人間による審査によってこのコンテンツは削除されました。コンテンツの投稿者は削除に異議を申し立てました。異議申し立てを受けて、人間の審査担当者が、当初削除されてから5時間経たないうちにコンテンツを復元しました。約1時間後にこのコンテンツの2度目の報告が行われ、ほぼすぐに削除され、30分経たないうちに再度復元されました。この削除・復元は共に人間による審査によるものです。数週間後、このコンテンツは再度報告されました。この3度目の報告に対しては、コンテンツモデレーターが下した過去の決定を措置の基準として用いる自動システムによって施行が行われました。この自動システムは、コンテンツがInstagramコミュニティガイドライン、具体的には制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反すると判断し、同コンテンツを削除しました。
削除は、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定のみに基づいて行われました。委員会はMetaに対し、このコンテンツが薬物の有料広告を禁止するブランドコンテンツポリシーの違反として削除されなかった理由を尋ねました。同ポリシーに関する公開情報では、「タイアップ投稿」ラベルが付されたコンテンツすべてに同ポリシーを適用する必要があると示されているからです。Metaは、「『タイアップ投稿』ラベルで公開されているブランドコンテンツのうち、ブランドパートナーが実際に確認・承認したもの」のみに同ポリシーを適用しているため、当該ポリシーの適用はなかったと回答しました。さらに、Metaは、ブランドが「ブランドコンテンツで自身をタグ付けすることを、一定のクリエイターに対し、アカウントレベルで許可することができる(各投稿でタグを承認する必要がなくなる)」と説明しました。つまり、関連するブランドパートナーによる確認を一切必要とせず、タグが自動で承認される可能性があるということです。こうした場合、Metaの専門チームがブランドコンテンツポリシーに照らしてコンテンツを審査することはありません。また、Metaによれば、「タイアップ投稿」ラベルは大規模なコンテンツ審査の担当者には表示されず、これらの審査担当者はコンテンツが専門チームの審査を受けるよう経路変更できないため、ブランドコンテンツポリシーの施行に関与していません。
当該投稿が3回目に削除された後、コンテンツクリエイターがこの投稿をMetaに指摘しました。それから当該コンテンツはポリシーや対象分野の専門家にエスカレーションされて再審査を受け、復元され、委員会による審査が要請されました。3回目の復元は、コンテンツが当初投稿されてから約6か月後に行われました。
このコンテンツクリエイターのステータスが「マネージドパートナー」であったことが、このエスカレーションを円滑化しました。「マネージドパートナー」は、有名人などの個人や、企業・慈善団体などの団体を含め、さまざまな業界の者から成ります。マネージドパートナーは、「こうした関係性によってマネージドパートナーとMetaの戦略的目的を確実に達成する」ため、Meta製品の使用方法に関するトレーニングや、「プレゼンスの最適化、およびMetaのプラットフォームやサービスで創出できる価値の最大化」に協力してくれる専門のパートナーマネージャーなど、強化されたさまざまなレベルのサポートをMetaから受けることができます。
Metaは、医療、自助、娯楽の間の境界線を曖昧にする幻覚剤について議論が広まっており、その使用が米国で増加していることから、本事例が重要なものだと述べた上で、本事例の審査を委員会に要請しました。Metaによれば、こうした曖昧さにより、このコンテンツが医薬品を宣伝するものなのか(Metaのプラットフォームで一般に認められる)、それとも処方外の目的での薬物使用を記述するもの、あるいは「気分の高揚」を得るためのものなのか(一般に認められない)を突き止めるのが困難になっています。
委員会は、本事例における判断を下すにあたり以下の背景情報に留意しました。
- 委員会が意見を求めた専門家は、米国ではケタミンそれ自体は麻酔薬としての使用に限り、食品医薬品局(FDA)によって承認されていると説明しました。しかし、他の多くの薬物と同様、連邦・州レベルの規制で定められた制限を受けつつ、医師などの医療従事者がこれと異なるFDAの認可外の目的で合法的に投与することが可能です。
- FDAは、うつ病の治療法として、ケタミンを経鼻投与する形、エスケタミン(「スプラバート」とブランド名で呼ばれることが多い)を承認しています。ジェネリックのケタミンの広告とは異なり、スプラバートの広告はFDAが直接規制しています。つまり、さまざまな要件の適用を受けます。例えば、FDAは、スプラバートのような処方薬の広告では「薬物を使用するリスクをすべて」列挙するよう求めています。スプラバートのウェブページには、下の方に削除不可なポップアップが表示され、濫用や誤用に関する警告など、警告の一覧が記載されています。こうした要件は、薬物の広告に関してFDAが懸念している点を反映したものです。医薬品の広告に等しい投稿に対して委員会が取るアプローチには、このようなFDAの懸念点が影響しています。
- 医学会は、うつ病やその他の気分障害の将来有望な治療法として、FDA認可外の形でケタミンを使用することについて意義深い議論をしています。米国で精神衛生危機が継続する中において、気分障害の治療法としてケタミンが持つ将来性に関する査読付き研究の数が増加しています。世界保健機関(WHO)は、世界の障害の原因として最も多いのがうつ病だとしています。WHOの自殺に関するファクトシートは、世界全体で毎年70万人を超える人が自殺が原因で亡くなっており、15歳から29歳で4番目に多い死亡原因となっていて、未治療のうつ病が自殺の大きなリスク要因となっていると説明しています。
- 医学会は、ケタミンのセラピー治療での使用がもたらすリスクについても警告をしています。Journal of the American Medicine Association (JAMA)で公開された2017年コンセンサス・ステートメントは、ケタミンの濫用によって、認識機能障害や尿路損傷が引き起こされる可能性があると強調しています。2022年の文献レビューによると、「ケタミンの誤用リスクは、精神刺激薬やベンゾジアゼピンといった、濫用の可能性がある一般に処方されている既知の他の化学物質のリスクと同様だと見受けられる」ものの、この研究では、このことによって医師が適切な場合にケタミンを処方することが妨げられるべきでないとも指摘し、「処方を一括りに排除するのではなく、適切な場合には慎重に処方する同様のアプローチ」を強く促しています。ケタミンの毒性に関する2023年の専門家レビューによれば、ケタミンの過剰摂取は比較的まれなようです。別の研究では、米国のセラピー治療現場でうつ病を治療するためにケタミンを使用したことで、過剰摂取や死亡が生じた事例はないと指摘しています。
- 委員会が意見を求めた専門家らは、医療とは関係のないケタミンの使用がもたらすリスクについて指摘しました。専門家らはケタミン、あるいは「Special K」(娯楽で使用する人たちの間で口語的に知られている)がナイトクラブやバーで何十年も人気のある薬物であると指摘しました。この専門家らは、ケタミンの誤用が生じるのは比較的小規模だとされているものの、数は増加している可能性があると言及しました。ニューヨーク大学の2023年5月の研究によれば、「2017年から2022年までで、米国全体で麻薬の取り締まりにより押収された違法ケタミンは349パーセント増加したことが明らかに」なり、このことは、「医療とは無関係の娯楽目的での使用が増加していることを示している可能性」があります。また、研究では「近年、処方薬としてのケタミンの使用がメディア、診療で促進されていることが、闇市場での使用や入手のしやすさに拍車をかけていると警告」しています。
- 近年、ケタミン療法を行う診療所は大幅に増加しています。委員会が意見を求めた専門家の1人は、オフライン、オンラインの大量の診療所が、強迫症、依存症、摂食障害などさまざまな症状に対するケタミンの効果を売り込んでいると指摘しました。しかし、これまでに行われている調査の大多数がうつ病の患者に焦点を当てています。
- 別の専門家は、ケタミン療法を行う診療所の一部が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを背景として認められたテレヘルス企業として運営されていることを指摘しました。ケタミン療法を行うこうした診療所は、患者にケタミンを郵送することができます。しかし、テレヘルス企業として運営する診療所の許可は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行における最近の進展を踏まえると、まもなく終了する可能性があります。2023年現在、麻薬取締局はおそらく通信販売に関連して、少なくとも1か所のケタミン療法の従事者を閉鎖しました。
- 2021年7月、Metaは、「処方薬に関連した[広告]ポリシーの施行をより明確にし、強化するため、アップデートを行う」と発表しました。Metaはこれらのアップデートについて、「オンライン薬局、処方薬および危険物質の宣伝」に関する別個のポリシーを新規で作成することにより、「違法薬物などの危険物質の宣伝と、承認を受けた広告主による処方薬の制限付き宣伝との間の重要な区別をつける」ものだと述べました。また、Metaは、テレヘルスおよびオンライン薬局による処方薬の宣伝に新たに必要となる証明を促進するため、LegitScriptと提携すると発表しました。
- Journal of Medical Internet Researchで公開された2022年3月の記事では、「患者インフルエンサー」の増加が指摘されています。患者インフルエンサーとは、熱心なフォロワーがいるソーシャルメディアユーザーであって、「病気や疾患の体験について戦略的でキュレートされた内容をシェアすることにより、[これらの]フォロワーと感情的なつながりを作り出そうとする」者をいいます。患者インフルエンサーは製薬会社や医療会社から支払いを受けている場合がありますが、このような金銭的な関係はコンテンツを見る利用者には明らかでないことがあります。この記事は、インフルエンサーマーケティングにおける倫理的な問題と、偽情報の可能性について検討する必要性を強調しています。患者インフルエンサーとの面談で構成される2023年3月の研究でも、こうした潜在的な倫理的問題に対処する必要性が再度主張されています。
- 有償コンテンツと無償コンテンツとの区別に対しては、規制当局の関心も高まっています。本事例が生じた米国では、連邦取引委員会が最近ソーシャルメディアのインフルエンサーに関するガイドラインを改定し、さらに厳格な開示要件など、より厳しい要件をインフルエンサーに課しました。こうした規制は、金銭的報酬が発言の性質を大きく変えることから、「タイアップ投稿」の一部として作成されたことを知る権利を消費者に認めるべきだという見方を反映、裏打ちするものです。
3. 監督委員会の権限と範囲
委員会には、Metaが審査に付した決定を審査する権限があります(憲章第2条第1項、定款第2条第2.1.1項)。委員会はMetaのコンテンツポリシーと価値観に従ってコンテンツを審査し、決定を下します(憲章第2条)。定款は、「Metaのポリシー」を「プラットフォーム上のコンテンツに適用されるMetaのコンテンツポリシーおよび手続き(例: コミュニティ規定、コミュニティガイドライン)」と定義しています。委員会は、Metaのブランドコンテンツポリシーが「Metaのポリシー」に該当すると判断します。
委員会は、Metaの決定を維持するか、または無効とすることができ(憲章第3条第5項)、この決定は同社に対して拘束力があります(憲章第4条)。Metaは、類似した文脈にある同一のコンテンツについて、委員会の決定の適用が実現可能かどうかについても評価しなければなりません(憲章第4条)。委員会の決定には、拘束力のない勧告を含めることができ、Metaはこれに回答しなければなりません(憲章第3条第4項、第4条)。Metaが勧告に基づき行動することを約束する場合、委員会はその実施をモニタリングします。
4. 先例および指針の資料
本事例における委員会の分析は、次に掲げる基準および先例に基づいて行われました。
I. 監督委員会の決定
監督委員会による過去の決定のうち、最も関連度の高いものには以下の決定などがあります。
- スリランカに医薬品を(事例に関する決定2022-014-FB-MR)
- Adderall ®の要請(事例に関する決定2021-015-FB-UA)
- アヤワスカの醸造(事例に関する決定2021-013-IG-UA)
II. Metaのコンテンツポリシー
本事例には、Instagramコミュニティガイドライン、Facebookコミュニティ規定およびMetaのブランドコンテンツポリシーが関係しています。Metaの2023年第1四半期コミュニティ規定施行に関する報告には、「FacebookとInstagramには共通のコンテンツポリシーがあります。つまり、Facebook上で違反していると判断されるコンテンツは、Instagramでも違反していると判断されます」と記載されています。
Instagramコミュニティガイドラインには「非医療用の薬物または医薬品の売買[は]認められていません」と記載されています。また、「非医療用の薬物の売買、取引の手配、寄付、贈呈、または依頼を意図したコンテンツ、および非医療用の薬物の個人的な使用を容認する(回復の文脈での場合を除く)、またはその使用を手配もしくは助長するようなコンテンツも削除されます」としています。それに続き、「その他の規制された製品の売買を行う場合は、必ず法律に従ってください」と記載されています。同ガイドラインにはそれから、Facebookの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定へのリンクが張られています。
Facebookの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定では、「個人、製造業者、小売業者が一定の商品およびサービスを購入、販売、抽選、贈呈、譲渡または取引する試みを禁止」しています。制限されている商品には、「医薬品(処方箋を必要とする薬物、または医療従事者による投与が必要な薬物)」および「非医療用の薬物(意図された医療目的のために使用されていない、または気分の高揚を得るために使用される薬物または物質)」が含まれます。Metaは、「非医療用の薬物」に関するコンテンツであって、「回復、治療、または薬物使用をやめるためのその他のサポートについて、それらを受けていることを認めたりそれらに言及したりすることなく個人使用を認めるもの」を削除します。また、「こうしたサポートなどについて認めたり言及したりするコンテンツにおいては、非医療用薬物について肯定的に発言したり、その使用を奨励したり、その手配をしたり、またはその作成・使用を指導したりしてはなりません」とされています。ポリシーの基本理念によれば、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定は、「安全を促し、有害な可能性のある活動を抑止する」ことを目的としています。
Metaのブランドコンテンツポリシーは、「コミュニティ規定またはコミュニティガイドラインに違反するもの」を禁止しています。「禁止されているコンテンツ」のリストには、「違法薬物や娯楽のための麻薬などの薬物および薬物関連商品」ならびに「安全が確認されていない商品やサプリメント」が含まれています。また、「薬局」や「処方薬」を宣伝するブランドコンテンツに関しては、「ブランドコンテンツのスポンサーであるビジネスパートナーが、サービスを宣伝するにあたり認証を受ける」ことが求められます。「薬局」に関する認証については、「薬物を宣伝するには、ビジネスパートナーがLegitScriptの認定を受け、Facebookによる書面での許可を取得している必要があります」とされています。「処方薬」に関する認証については、「処方薬を宣伝するには、ビジネスパートナーがFacebookに申請を行う必要があります」とされています。Facebookの許可を申請する資格のある事業体は、「オンライン薬局、テレヘルス企業、製薬会社」です。また、処方薬を宣伝するブランドコンテンツの投稿の対象は、「18歳以上の利用者および米国、ニュージーランド、カナダに制限されます。これらの所在地以外では、処方薬の宣伝が禁止されています」とされています。ブランドコンテンツポリシーは、Meta広告規定とは異なり(同規定は、広告主から受け取る対価と引き換えにMetaが利用者に表示するコンテンツに適用されます)、コンテンツクリエイターが外部の「ビジネスパートナー」から報酬(「金銭の支払いや無料ギフト」)を受け取るコンテンツに適用されると理解しておくことが重要です。
委員会は、Metaが「何よりも大切にしている」とする「意見」に対するMetaの価値観と、Metaが重んじる「安全性」および「尊厳」の価値観を基にコンテンツポリシーを分析しました。
III. Metaの人権保障責任
国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)は、国連人権理事会により2011年に採択された、人権に関して民間企業が負う責任について自主的な枠組を定めた基準です。Metaは2021年、企業人権ポリシーを発表しました。同ポリシーで、MetaはUNGPsに従って人権を尊重することへの約束を再確認しました。委員会は、本事例での人権に対するMetaの責任について、次に掲げる国際基準に基づき分析しました。
- 意見と表現の自由の権利: 市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第19条、規約人権委員会の一般的意見34 (2011年)、障害者の権利に関する条約(CRPD)第21条
- 健康に対する権利: 経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(ICESCR)第12条、経済的、社会的、文化的権利委員会の一般的意見14 (2000年)
5. 利用者からの陳述書の提出
この投稿の投稿者には委員会による審査について通知が行われ、委員会に陳述書を提出する機会が与えられましたが、この利用者は陳述書を提出しませんでした。
6. Metaからの情報提供
委員会に本事例の審査を要請するに当たり、Metaは、医療上の管理下にある精神作用物質の使用が増え続けるにつれ、「合法的な薬物の使用体験についてプラットフォームで発言したい人が増加するため」、同社のポリシーラインでは「持ちこたえられなくなる可能性がある」と主張しました。本件のような事例が今後発生することを見据え、Metaは「この分野で前進するための正しい方法を探るに当たり、委員会の手助け」を要請しました。
Metaは、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定において、「非医療用の薬物」の定義と「医薬品」の定義が、「精神状態の変化が目標となり得るような精神疾患の治療のために医療従事者が合法的に薬物を投与する場合には矛盾する」と説明しました。制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の適用方法に関する社内ガイドラインでは、利用者が医療現場での管理下で医薬品を使用することを認めたり、そうした使用を宣伝したりするコンテンツが認められています。Metaによれば、本事例の利用者のコンテンツは、「うつ病および不安に対する安全で合法的な医療」を受けた体験を扱うものです。また、Metaは、この投稿のうち、1) ケタミンを用いた治療法を“magical entry into another dimension”(異次元への魔法の入口)を提供するものだとする記述、2) “[t]he feeling of both being pulled out of myself while being brought closer to my inner essential core”(自分自身から抜け出しつつ、自身の内面にある本質的な核心に迫るような感覚)という記述、3) 治療が“good trip”(楽しい旅)だとする記述の3つの部分が、「『気分の高揚』すなわち精神状態の変化を得る」ことを目的として薬物が使用されたことを示しているとしました。
Metaは、この利用者が記述した体験が、上述した「医薬品」の定義と「非医療用の薬物」の定義との「矛盾」を示す好例であると考えています。Metaは、特に新型コロナウイルス感染症の世界的流行の後、うつ病や不安の割合が世界で増加していることを考えると、新たな治療法について論じるコンテンツが重要であると強く主張しました。また、うつ病の治療を目的とした、ケタミンを含む幻覚剤の使用に対して、科学的・規制上の対応が急速に進展している状況についても強調しました。Metaが引用した2022年の報告によれば、米国のセラピー治療現場でケタミンを抗うつで使用した結果として、過剰摂取や死亡が生じた事例は全くありません。Metaとしては、このコンテンツは「ポリシーで認めることとしたいコンテンツカテゴリにまさに該当する」ものです。一方で、同社は「合法的なケタミンの使用を支持することによって、一部の人がケタミンを違法な形で使ってみる気にさせる可能性がある」ことを認識しています。
Metaは、“medically administered ketamine”(医療上投与されたケタミン)を使った体験をこの利用者が描写したことにより、当該利用者の安全や他の利用者の安全に脅威が生じることはないと結論づけています。このため、Metaは、このコンテンツが制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反しないと判断しました。Metaは、本事例で自身が下した決定が、「気分の高揚、すなわち精神状態の変化を得る」ことを目的とした薬物(医薬品か非医療用かを問わない)の使用を宣伝するコンテンツをコミュニティ規定で一般に禁止していることと矛盾する緊張関係を生じさせるものだと認識しています。それにもかかわらず、同社はこの決定がコミュニティ規定の目的に合致したものだと判断しました。また、Metaは、「医療に関する議論を促進するという[同社の]ポリシー全体に沿うものであるため、ケタミンを医療上投与された医薬品として認めること、または宣伝することは許可される」と説明しました。Metaによれば、Instagramにコンテンツを残すという決定は「ポリシーの例外、ポリシーを廃止するもの、あるいはポリシーに反するもの」には該当しません。さらに、この決定は、大規模審査でコンテンツを評価する担当者か、エスカレーションを受けて評価する担当者かにかかわらず、「あらゆる審査担当者が下す」ことを同社が期待するものだとしました。
委員会はMetaに書面で22件の質問をしました。質問は、マネージドパートナーのステータスとモデレーションの決定に異議を申し立てるために利用できるチャネル、利用者とケタミン療法を行う診療所との協力の性質、関連するコンテンツポリシーの施行における自動検知技術の役割、関連するコンテンツポリシーに照らしたコンテンツおよび背景情報のMetaによる評価、「ポリシーの精神」に照らした許容、およびMetaのブランドコンテンツポリシーに関するものでした。Metaはすべての質問に回答しました。
7. パブリックコメント
本事例に関して、監督委員会には5件のパブリックコメントが寄せられました。コメントは全て米国・カナダ地域からのものでした。3件は、ケタミン療法の医療上の利点と、Metaのプラットフォームでケタミン療法に関する議論を認める重要性に焦点を当てたものでした。また、2件は、娯楽目的でのケタミンの使用の危険性を強調するものでした。
委員会には、米国を拠点とする非営利団体であって、米国50州の薬事委員会のほか、コロンビア特別区、グアム、プエルトリコ、ヴァージン諸島、バハマおよびカナダ10州の薬事規制当局などから成る連邦薬事委員会連合(NABP)からコメントが寄せられました。同団体は、「1分とかからない大まかな検索をしただけでも」、「明らかに娯楽目的で使用されるケタミン」について掲載した投稿を多数発見したと強調しました。NABPは、委員会が決定を下したAdderallの要請の事例(PC-11235)で、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の曖昧な違反に対処する必要性に関して、同様の主張をしました。当該事例においてNABPは、「[アデロールとXanax]を販売しようとするコンテンツがFacebook上に残っている」と注意を促しました。本事例で同団体は、本事例のような「レアケースにリソースを費やすのではなく、明確な規定がある事例で措置を講じることを優先する」ようMetaに強く促しました。
委員会には、ケタミン療法の従事者であるMindbloomからも、米国における精神衛生危機の広がりについてコメントが寄せられました(PC-11234)。Mindbloomのコメントは、現在のうつ病治療は効果がないことに関する研究を指摘しています。また、意義深い研究が公開されているにもかかわらず、多くの人がケタミン療法を選択肢として認識していないため、ケタミンのような新たな治療法に関して情報を共有できるようにすることが非常に重要だと指摘しました。
本事例に関して提出されたパブリックコメントを読むにはこちらをクリックしてください。
8. 監督委員会による分析
委員会は、Metaが審査を要請した本事例を、医療上の使用に特化した一定の薬物の合法化および規定化との関連で、制限されている商品およびサービスに関するMetaのポリシーについて検討し、明確化する良い機会だとして選定しました。審査を進めた結果、委員会は、この事例が、医薬品の宣伝に関連した「タイアップ投稿」のコンテンツに関して重要な問題を提起するものでもあると気付きました。
委員会は、ブランドコンテンツポリシー、Instagramコミュニティガイドライン、Facebookコミュニティ規定などのMetaのコンテンツポリシーのほか、Metaが重んじる価値観および同社の人権保障責任を分析することにより、このコンテンツを削除すべきか否かを検討しました。
8.1 Metaのコンテンツポリシーへの準拠
I. コンテンツルール
委員会は、本事例のコンテンツが、「タイアップ投稿」の一部を成すコンテンツに適用されるMetaのブランドコンテンツポリシーに違反すると判断します。
また、当該コンテンツが「タイアップ投稿」の一部を成すものでなかったとしても、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反するだろうと判断します。
ブランドコンテンツポリシー
本事例のコンテンツは「タイアップ投稿」の一部として投稿されたため、ブランドコンテンツポリシーが適用されるべきでした。委員会は、Metaが審査要請や当初の提出情報の中で、本事例のこの側面を記述しなかった点を懸念しています。委員会は、何回かにわたる質問を経て、投稿が有する有償性を追求して初めて、本事例のこうした側面について情報を得ました。委員会は、Metaがこのような質問に対応してくれたことを感謝しており、医療に関する有料広告の掲載を目的としたマネージドパートナーによるInstagramの利用に対処する機会を得られたことを歓迎します。上記のセクション2で言及したとおり、薬物を宣伝するペイドコンテンツが突きつける特別な難題には、医学、法律の両分野で注目が集まっています。委員会は、これらのトピックに関する追加事例に関心を持っており、該当する場合にはブランドコンテンツポリシーやビジネスパートナーに関する情報を含め、委員会が選定を検討中の事例に関するあらゆる関連情報を共有するようMetaに要請します。
Metaのブランドコンテンツポリシーには、「特定の商品、サービス、ブランドをブランドコンテンツで宣伝することはできません」と記載されています。同ポリシーでは、禁止されている商品として「違法薬物や娯楽のための麻薬などの薬物および薬物関連商品」を挙げています。本事例のコンテンツは、ケタミンの利用を明らかに宣伝していました。この利用者が記述した体験や治療法は米国では合法であるように思われますが、Metaのポリシーは明らかに、Instagramではタイアップ投稿を通じてこのようなコンテンツを宣伝できないとしています。ブランドコンテンツポリシーにおいては、当該文脈においてケタミンの状態が「医薬品」なのか、それとも「非医療用の薬物」なのかは関係ありません。そのため、この特定の事例においては、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の緊張状態にMetaが取り組む必要なくして、当該コンテンツは削除すべきでした。
ブランドコンテンツポリシーは、「薬局」や「処方薬」を宣伝するコンテンツなど、一部カテゴリのコンテンツでは、コンテンツのスポンサーであるビジネスパートナーがサービスを宣伝するにあたり、Metaから「認証」を受ける必要があるとしています。他から切り出されているこの区分は、米国などの一部の法域に限って適用され、申請はオンライン薬局、テレヘルス企業、製薬会社のみが行うことができます。本事例では、コンテンツのスポンサーであるビジネスパートナーがこの認証を受けていなかったとMetaは認めています。したがって、この投稿は、ブランドコンテンツポリシーに基づく「薬局」や「処方薬」の宣伝の一般的禁止に対する限定的例外に適合した形で、適切な認証を受けていなかったため、違反に当たります。
制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定
Metaが認めているとおり、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定には、矛盾する要素間の緊張が内在しています。同社は医薬品の宣伝を許可する一方で、「気分の高揚」すなわち精神状態の変化を生み出すために使用される薬物の宣伝を禁止しています。医薬品が「気分の高揚」を生じさせる場合、これらの基準はそれぞれ反対の方向に作用します。本事例では、このコンテンツがタイアップ投稿の一部として作成されたことをめぐる問題はさておき、Metaは、自身が重んじる「意見」の価値観と、危害が生じる可能性が低いことが相まって、許可される医薬品に関する議論として本事例を扱う方が適切だと情報提供しました。
こうした状況における、矛盾する要素間の緊張は、Metaのコンテンツ審査担当者向け社内ガイドラインのとおり、「医療現場での管理下」を基準にして解決するのが最善だと委員会は判断しています。Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定では、「医薬品」とは「処方箋を必要とする薬物、または医療従事者による投与が必要な薬物」だと定義しています。また、「非医療用の薬物」とは「意図された医療目的のために使用されていない、または精神状態の変化を得るために娯楽として使用されている薬物または物質」だと定義しています。こうした定義によると、処方、あるいは現場での投与を通じた医療従事者による薬物使用の管理が、これら2種類の薬物を区別する鍵となります。確かに、「非医療用の薬物」の定義で離接語としての「または」を使用しているということは、「気分の高揚」を得るために用いられ得る物資であれば、たとえそれが「医薬品」にも該当しても、すべて「非医療用の薬物」と位置づけられるということです。しかし、委員会は、「医薬品」と「非医療用の薬物」のカテゴリは概念上の違いを示すために設けられており、医療従事者による管理によって区別されると判断します。この見解の論理的結論としては、「気分の高揚」を得るために使用され得る薬物であっても、その使用が医療従事者によって管理されている場合には「医薬品」とみなすべきだということです。
Metaは、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定内の矛盾を、本決定に沿って同規定を改定することによって解決する必要があります。コミュニティ規定は、「気分の高揚」を生み出す薬物が医学的管理の下で投与される限り、当該薬物の使用を認める無償コンテンツをより明示的な形で許可する必要があります。また、コミュニティ規定において、医学的管理については、医学的診断に直接言及したり、医療提供者の免許や医療スタッフを参照したりすることで立証可能だと説明すべきです。
この基準を本事例のコンテンツに適用した場合、当該コンテンツは削除されるべきだと委員会は判断しています。削除の措置は、利用者が医療現場での管理下における医薬品の使用を認めたり、そうした医薬品の使用を宣伝したりするコンテンツに限っては許可するMetaの審査担当者向け社内ガイダンス、および「気分の高揚」すなわち「精神状態の変化」を与える薬物を非医療用の薬物として取り扱うガイダンスに合致するでしょう。Metaは委員会への提出情報において、本事例の利用者が自身の体験を、“medically administered ketamine”(医療上投与されたケタミン)と記述したと主張しました。しかしながら、投稿において、本事例におけるケタミンの使用が医学的管理下で行われたこと(つまり、この薬物が医療従事者により投与されたこと)を確認する十分な記載が見られないことから、委員会はMetaに同意することはできません。具体的に言うと、投稿そのものに、この利用者がうつ病の医学的診断を受けていた、あるいはこの診療所がケタミンをうつ病の治療として投与することに関して免許を受けたクリニックであった、もしくは治療が医療従事者によって行われた(「医師」、「看護師」、「精神科医」への直接の言及はなく、「スタッフ」への言及があるのみ)という十分な記載がありませんでした。委員会は、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定を施行するコンテンツ審査担当者に対して、Metaがこの追加ガイダンスを提供することが重要だと考えています。
II. 施行
Metaによれば、2023年1月15日、3番目の利用者が「当該コンテンツに対する過去の施行措置[に基づいて]」自身の評価を報告した後に、自動検知技術がこのコンテンツを評価し、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に違反していると判断しました。Metaは、本事例で該当する自動検知技術は「制限されている商品・規制対象商品」の分類システムだと述べました。機械学習分類システムは、Metaのコミュニティ規定に対する違反を特定するために訓練されています。
Metaは委員会に対し、「制限されている商品・規制対象商品」の分類システムについては、「異議申し立ての結果を考慮に入れた最新の訓練データセット」を用いて、6か月ごとに再訓練していると説明しました。本事例においては、本事例のコンテンツには違反がないと評価した異議申し立ての結果を踏まえたMetaの分類システムの再訓練はまだ行われていませんでした。そのため、異議申し立てが認められたことは、Metaによればこれより前の削除決定では考慮に入れられていたものの、コンテンツを削除するという自動検知技術の決定では考慮に入れられていませんでした。
委員会は、6か月の遅れについて懸念を示すとともに、Metaに対し、データセットの完全性を維持しつつも、自動プロセスが可能な限り迅速に、認められた異議申し立てを考慮に入れるようにすることを強く促します。自動検知技術は結局のところ、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の適用について委員会が行った分析に合致した決定を下していたものの、その決定は、当該決定時におけるMeta自身のポリシーの解釈に従ったものではありませんでした。
Metaのブランドコンテンツポリシーの適用に関して委員会が行った質問への回答で、Metaは、「タイアップ投稿」ラベルが付されたコンテンツすべてがこれらのポリシーに照らして審査されているわけではないこと、実際には、大規模審査を行う人間のモデレーターはこのラベルを見たり、ブランドコンテンツポリシーの施行を担当する専門チームにコンテンツを回したりすることすらできないことを認めました。Metaは、コンテンツに付された「タイアップ投稿」ラベルがそれまでにブランドパートナーにより確認・承認を受けていない場合には、ブランドコンテンツポリシーに基づくコンテンツの評価は行われないと説明しました。委員会は、施行プロセスにおいて、自動モデレーターと大規模審査の人間のモデレーターが該当する場合、Metaのブランドコンテンツポリシーを含む関連するすべてのポリシーに照らしてコンテンツを審査できるようにすることをMetaに強く促します。
本事例は、ケタミンを宣伝するペイドコンテンツに関してブランドコンテンツポリシーが施行されなかったことに関するものです。しかし、さらに広く見ると、本事例はMetaの薬物に関するポリシーの施行不足の事例だと思われることを委員会は指摘します。2022年末の4週間の期間に掲載された広告の確認に基づいてWall Street Journalが最近行った調査により、「リスクを引き合いに出すことなく処方薬の利点を記述した、FacebookとInstagram上の2,100超の広告が、未承認の用法に関して薬物を宣伝したり、当事者によるものか会社の社員によるものかを明らかにすることなく証言を掲載したりしていた」ことが明らかになりました。National Association of Boards of Pharmacy (NABP)から委員会に寄せられたパブリックコメントでも、Metaのプラットフォームにおいて、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の違反が頻繁に起こっているおそれがあると指摘しています。本事例でNABPは、ケタミンが「明らかに娯楽目的で流通しており、Instagramで広く販売されている」と指摘しました。NABPがこの懸念を提起するのは初めてではありません。2021年のAdderallの要請の事例において、NABPは「[アデロールとXanax]を販売しようとするコンテンツがFacebook上に残っている」と指摘しました。また、米国麻薬取締局は、麻薬カルテルが品物を販売するためにソーシャルメディアプラットフォームを使用していることをつい最近指摘しました。ここで生じるのは、Metaは、薬物の販売や有料広告に関するポリシーの施行を精査する必要があるというテーマです。
III. 透明性
本事例のコンテンツがブランドコンテンツだったのかどうかを理解しようとする中で、委員会は、事実を明確にするための質問をいくつかMetaに尋ねました。その中で、当該コンテンツが「タイアップ投稿」の一部であったことが発覚しました。Metaは、「タイアップ投稿」ラベルは「その投稿が、クリエイターがビジネスパートナーから金銭その他の有価物の報酬を受けているブランドコンテンツである」ことを示すものであり、「クリエイターは、投稿がクリエイター、事業者、個人用アカウントからのものかを問わず、ブランドコンテンツを投稿する際には関連するブランドまたはビジネスパートナーをタグ付けしなければならない」と説明しました。
しかしながら、追加の質問を重ねる中で、Metaは「タイアップ投稿」ラベルがあっても、そのことは必ずしもタグ付けされたビジネスパートナーがそのラベルを承認したことを意味するわけではないと明らかにしました。ビジネスパートナーは、「ブランドコンテンツで自身をタグ付けすることを、一定のクリエイターに対し、アカウントレベルで許可することができる(各投稿でタグを承認する必要がなくなる)」ためです。このことは、利用者に混乱を生む可能性があります。Metaはこのトピックに関するMetaビジネスヘルプセンターの記事を委員会に提示しましたが、Instagramのポリシーからこの記事を探すには複数のステップが必要となります。さらに、Instagramヘルプセンターの「タイアップ投稿」ラベルを使用する方法に関する説明は、すべてのラベルが承認済みであることを暗示させるものです。委員会は、Metaのポリシーについて利用者に説明している透明性センターやヘルプセンターの記事などの場において、明確かつ分かりやすい文言でタイアップ投稿ラベルの意味合いを利用者に明確にするようMetaに勧告します。
8.2Metaの人権保障責任の遵守
委員会は、薬物を宣伝するブランドコンテンツや、非医療用の薬物の購入、販売、取引、取引の調整、寄付、贈呈または要請を試みるコンテンツをMetaが厳しく制限していることは、UNGP(原則13)に基づく、「人権への影響の惹起またはその助長を回避」し、「人権への悪影響の回避または軽減に努める」同社の人権保障責任に適合したものだと判断します。特に、今回分析対象となったような投稿が健康に対する権利および健康関連の情報に対する権利に示すリスクを踏まえると、これは妥当な判断です。以下の分析では、表現の自由(ICCPR第19条)を守るMetaの責任に照らして、この発言を制限することについて評価していきます。
表現の自由(ICCPR第19条)
ICCPR第19条第2項は、表現に対する幅広い保護を規定しています。この権利は「あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由」を含んでいます。規約人権委員会は一般的意見34において、第19条の対象に含まれる表現の具体的形態を列挙しており、表現の自由に対する権利には商業上の広告も含まれる可能性があるとしています(第11項、強調は引用者による)。委員会は、本事例のコンテンツの有償性は広告と似たもので、広告コンテンツおよびブランドコンテンツの両方を含むペイドコンテンツを、Metaは人権保障責任の一環として尊重することを検討すべきだと判断します。
CRPD第21条は、障害者の表現の自由の保護について規定しています。同条約第1条によると、障害者には、「長期的な身体的、精神的、知的または感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者」が含まれます。CRPDは、「あらゆる形態の意思疎通であって自ら選択するものにより」、「他の者との平等を基礎として」この自由を行使することができることを確保しています(CRPD第21条)。国連の経済的、社会的、文化的権利委員会は、「健康に関する教育および情報へのアクセス権」がICESCR第12条で認められる健康に対する権利の非常に重要な一部であることを明示しています(一般的意見14、第11項)。このことは、うつ病などの精神衛生疾患の割合が世界全体で増加している状況においては特に重要です。委員会が過去の決定で指摘しているとおり、ソーシャルメディア企業は医薬品および非医療用の薬物をめぐる表現の自由を尊重すべきです(スリランカに医薬品を、Adderall®の要請、アヤワスカの醸造の事例を参照)。
国が表現を制限する場合、その制限は合法性、正当な目的、および必要性と相応性の各要件を満たさなければなりません(ICCPR第19条第3項)。これらの要件はよく「3要件のテスト」と呼ばれ、これらの要件は商業上の発言や広告に対する制限にも適用されます。委員会は、審査対象であるコンテンツに関する個別の決定、およびコンテンツガバナンスに対するMetaの幅広いアプローチの両方に関して、この枠組みを用い、人権に対するMetaの自主的な取り組みを解釈します。表現の自由に関する国連特別報告者が述べているとおり、「企業には政府と同じ義務はないが、影響力が高いため、ユーザーの表現の自由に対する権利の保護に関して、企業も政府と同様の問題を評価する必要があります」(A/74/486第41項)。
I. 合法性(規則の明確さとわかりやすさ・閲覧可能性)
国際的な人権法に基づく合法性の原則により、表現を制限する規則は、明確でわかりやすく、公開されていることが求められます(一般的意見34、第25項)。表現を制限する規則は、「表現の自由の制限の施行を担当する者に対して、その制限に関して自由裁量を与えるものであってはならず」、「どういった表現が適切に制限され、どういった表現が制限されないのかを、施行を担当する者が確かめられるよう、十分な指針を提示」しなければなりません(同項)。表現の自由に関する国連特別報告者は、オンラインでの発言を管理する規則に当てはめた場合、当該規則が明確かつ具体的である必要があると述べています(A/HRC/38/35、第46項)。Metaのプラットフォーム利用者は規則にアクセスしてそれを把握できなければならず、コンテンツの審査担当者には適用に関する明確な指針が用意されていなければなりません。
ブランドコンテンツポリシー
委員会は、Metaのブランドコンテンツポリシーは十分に明確であり、「タイアップ投稿」への参加を希望する利用者にとって十分アクセスしやすいもので、利用者が許可の条件を理解できるものだと判断しています。ブランドコンテンツでの「薬物および薬物関連商品」の禁止が、薬物を投与するサービスを対象として含んでいることは、委員会にとって明確です。うつ病に対するケタミン療法が大幅に増加していることを踏まえると、薬物を基にする治療やセラピーが「タイアップ投稿」のコンテンツで禁止される旨を明示することにより、さらなる明確化を図ることができます。
また、同ポリシーでは、処方薬と薬局については「ビジネスパートナーが、サービスを宣伝するにあたり認証を受け」ている場合に限り、タイアップ投稿のコンテンツに盛り込むことができる旨も明らかにしています。原則とこの明白な例外の関係についてはより良い形で説明できますが、この一覧は範囲が絞り込まれていて明確です。委員会は、オンラインで2つのバージョンのブランドコンテンツポリシーが表示されるものと把握しています。1つはMetaの「ビジネスヘルプセンター」のもので、これはFacebookとInstagramの両方に適用されるように見えます(透明性センターのコンテンツポリシー一覧にリンクが張られています)。もう1つはInstagramのヘルプページのもので、これはInstagramに適用されるように見えます。これらのルールは一貫しているように見えますが、重複を排除することで、明確さを高める助けとなるでしょう。
委員会は、大規模審査のコンテンツ審査担当者が、「タイアップ投稿」のコンテンツを評価する際にそのコンテンツが「タイアップ投稿」の一部である旨を見られないことを深く懸念しています。このため、審査担当者は、コミュニティ規定に基づいた評価に加え、ブランドコンテンツポリシーに照らしてコンテンツを評価することが必要かどうか、判断することができません。このアプローチは、Metaのブランドコンテンツポリシーの施行不足が生じる可能性をはるかに高めることになります。本事例ではコンテンツクリエイターの指摘から数か月にもわたる期間がかかりましたが、これは、2022年12月末の最初の報告時に、コンテンツがブランドコンテンツポリシーに照らして適切に審査されていれば防げたはずでした。医薬品の宣伝を背景としたブランドコンテンツはすべて、投稿の前に事前対応的に評価するか、あるいは投稿の後に入念に評価する必要があります。
制限されている商品およびサービスに関するポリシー
委員会は、制限されている商品およびサービスに関するポリシーが採る「非医療用の薬物」の定義と「医薬品」の定義が合法性の要件を満たすものでないと判断しています。上記にまとめたとおり、2つのルールを、医療上管理された処方薬の使用に適用し、当該薬物が「気分の高揚」すなわち「精神状態の変化」を生じさせ得る場合、この2つのルールは矛盾するように思われます。「医薬品」に関するルールはそのようなコンテンツを認めるように思われる一方で、「非医療用の薬物」に関するルールは当該コンテンツを禁止するように思われます。
委員会は、ルールが不明確であり、審査担当者がより良いガイダンスを要すると判断します。明確なルールは、主として発言が制限され得る人にとって重要であると同時に、ルールを課す人にとっても重要です。迅速に決定を下さなければならない審査担当者には、自信をもって適用できるルールを示す必要があります。
委員会は、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の施行が一貫性に欠ける可能性についても深く懸念しています。同規定は一般に、非医療用の薬物や医薬品の「購入、販売、または取引を試みる」ことを禁止しています。委員会がAdderallの要請の事例で強調したように、違反しているコンテンツがオンラインに残されている場合、「施行に一貫性がないことで、(中略)Facebook上で認められるコンテンツに関し混乱が生じ得」ます。
II. 正当な目的
ICCPR第19条第3項に基づき、発言は、規定された、限定的な一連の理由により制限されることがあります。本事例では、非医療用の薬物の宣伝、および非医療用の薬物や医薬品を購入、販売または取引しようとする試みに関する、ブランドコンテンツポリシーおよび制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定のポリシーラインはいずれも、公衆衛生を保護するという正当な目的に資するものだと委員会は判断します。これらのポリシーは、健康に対する権利や、健康関連の情報に対する権利など、他人の権利も保護するものです(スリランカの医薬品の事例を参照)。
III. 必要性と相応性
必要性と相応性の原則は、表現の自由に対するいかなる制限も「その保護機能の達成に適したものでなければならず、その保護機能を達成する可能性がある手段の中で最も干渉性の低いものでなければならず、保護すべき利益に相応でなければならない」(一般的意見34、第34項)と規定しています。
上記セクション2で説明したとおり、うつ病の症例は世界全体で増加しています。その対応の一部として、うつ病の治療を目的としたケタミンの使用も増加しています。こうした治療は将来有望ですが、依然として初期段階にあります。さらに、娯楽目的でのケタミンの濫用も増加しているようです。これに鑑み、当該コンテンツを削除することは、公衆衛生を保護し、健康に対する権利や健康関連の情報に対する権利を保護するために必要かつ相応な表現の制限に当たります。
ブランドコンテンツポリシー
委員会は、WHOの医薬品の販売促進に関する倫理基準が明快だと考えています。この基準は、「薬物中毒や薬物依存と戦う」ために、薬物(特に麻薬や向精神薬)の「広告を一般に公開すべきでない」(第14項)と述べています。この基準はソーシャルメディアよりも何十年も前から存在しますが、現在、さらにいっそう実際的な意味を帯びているように思われます。米国における別の状況が、ブランドコンテンツポリシーにおける薬物の宣伝禁止の必要性および相応性について委員会が検討する助けとなりました。Wall Street Journalの報道によると、Metaのプラットフォームで大々的に広告を打ったテレヘルス企業2社が両方とも、「一部の臨床医が精神刺激薬を処方しなくてはというプレッシャーを感じていること」、また一部の患者や従業員が「これらの企業のマーケティング手法が規制物質の濫用につながっていると述べたこと」を同紙が報じた後、米国司法省の調査の対象になっています。
したがって、委員会は、FacebookとInstagramの利用者における娯楽目的でのケタミンの使用の宣伝リスクに対処するために、ケタミン療法の「タイアップ投稿」による宣伝を制限することは必要だと判断しています。健康情報に関わるタイアップ投稿のコンテンツは、特に容易に濫用され得る薬物に関する場合には、利用者の健康関連情報にアクセスする権利および健康に対する権利を弱体化させる可能性があります。インフルエンサーがソーシャルメディアで、健康状態が不安定な可能性のあるオーディエンスへのアクセスを企業に提供する大きなインセンティブを与えられている場合、こうしたリスクは高まります。有料広告が必要な医療、あるいは違法な娯楽上の用途に関連するものである場合、Metaは、自身のプラットフォームが濫用に資する可能性を認識する責任を負います。委員会の見解では、特定の薬物やサービスを宣伝する商業上の発言は、商業に関係ない発言とは区別すべきです。「医薬品」や「非医療用の薬物」を取り扱った無償コンテンツに関して不相応だと判断され得る制限でも、同一の製品やサービスを宣伝するペイドコンテンツに適用される場合には相応なものとなる可能性があります。
委員会は、Metaがアルコールやタバコ(これらも同様に、個人の精神状態を変える物質)に関して行っているように、一定の年齢より上の利用者に閲覧を制限するなど、より干渉性の低い手段によってこの種のペイドコンテンツを制限することがより相応であるかどうか、検討を加えました。しかしながら、この種のコンテンツに関連したリスクは、若年層のオーディエンスに限定されていません。特に「患者インフルエンサー」の証言がすべての人に適切とは限らない一定の医療を美化しており、適切な安全上の警告やリスクの最小化に欠けている場合、大人もその証言の影響を受けやすくなる可能性があります。WHOの倫理基準を踏まえ、委員会は、本事例のコンテンツに関してMetaが「タイアップ投稿」に厳しい制限を課すことは相応だと判断しています。
委員会は、この投稿が「タイアップ投稿」として許可されるべきでなかったと判断していますが、同時に、コンテンツで医薬品または処方薬を宣伝可能な限定的状況でのこうしたタイアップの取扱いについても懸念を有しています。具体的に言うと、このような状況にあって「タイアップ投稿」ラベルに必要なのは、経済的な関係性を示すことです。インフルエンサーは当該ラベルを、新たな医療や実験段階の医療に対して適用するように、新しいレストランを宣伝する投稿に適用する可能性があります。新たな医療や実験段階の医療に対してラベルを適用するというシナリオにおいて委員会は、このようなラベルが目立たない形で適用されること、またリスクを強調したりそのリスクに関連した追加リソースを提示したりする個々の事情に応じた情報が不足することを懸念しています。
委員会は、「タイアップ投稿」ラベルに対するアプローチは、一定のカテゴリの健康に関する偽情報についての「関連情報提供の措置」に対するMetaのアプローチと全く対照的だと把握しています。例えば、このようなラベルは、ファクトチェッカーや公衆衛生当局の追加リソースにリンクしています(新型コロナウイルス感染症の偽情報に関するポリシーに関する忠告を参照)。さらに委員会は、このような投稿に利用者が「いいね!」したりコメントしたりするのを認めることで、当該利用者がMetaのプラットフォームにおいて、違法なケタミンなどの物質を販売する人の標的となるリスクをもたらし得ることを指摘します。こうした人の一部はうつ病を患っている、あるいは効果的な治療へのアクセスが限定されている場合があります。したがって、特にこのような売り込みの対象になりやすい可能性があります。
制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定
委員会は、コミュニティ規定を解釈するところ、発言の制限が薬物濫用の防止を目標とした必要かつ相応なものだと判断しています。委員会は、本事例と、過去に決定を下したAdderallの要請の事例とを区別して考えています。Adderallの要請の事例で委員会は、コンテンツと危害が生じる可能性との間に直接の関連性を認めませんでした。Adderallの要請の事例では、利用者は単に治療法について医師とコミュニケーションを取る方法に関するアドバイスを欲しているだけで、Adderallの販売や違法入手、宣伝をする意図はありませんでした。逆に、本事例では、利用者は医学的管理の必要性を強調することなく、ケタミンの使用を積極的に宣伝しようとしています。この場合には、特に大規模な類似コンテンツが積み重なると、利用者の安全にかなりのリスクをもたらします。Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定は、医学的管理下で使用される場合に限り、ケタミンの使用を描写したコンテンツを許可すべきです。Metaとは異なり、委員会は、本事例の投稿本文に、ケタミンの使用が医学的管理下で行われたことを確認できる十分な記述を認めることができませんでした。
委員会は、制限をより寛容なものにし、「セラピー治療」の管理下にある使用を描写するコンテンツを認めるべきかどうかを検討しました。委員会は、Metaが引用したレビューに注目しました。当該レビューでは、米国の「セラピー治療現場」で抗うつ剤としてケタミンを使用したことで、過剰摂取や死亡が生じた事例はないとしています。しかしながら、いくつかの理由により、委員会はより寛容な立場を取ることを否定します。第一に、ケタミンの違法使用が増加しているという証拠があり、2022年時点の状態は、濫用の撲滅方法を考える基準としては信頼性を欠きます。第二に、「セラピー治療」という言葉の弾力性により、審査担当者がポリシーを施行することが困難になります。最後に、委員会は、上記のセクション8.1で説明したとおり、Metaの「医薬品」の定義および「非医療用の薬物」の定義で黙示されている、医療従事者への依拠を重視しています。
また、委員会は、「医学的管理」という制限が、アヤワスカの醸造に関する事例で委員会が過去に下した決定と矛盾しないかどうかも検討しました。当該決定において、委員会はMetaに対し、同社のルールを変更し、非医療用薬物の伝統的・宗教的な使用を肯定的に論じることを利用者に認めるよう勧告しました。委員会は、薬物の使用が医学的管理下で行われるものでなければならないとは求めませんでした。
「医学的管理」という制限は、アヤワスカの醸造に関する事例での分析に沿ったものだと判断します。伝統的・宗教的な薬物の使用は通常、危害に対する防衛手段として作用する歴史が背景にあります。専門家によれば、「伝統的な民族植物学については、長く使用されてきた歴史により、安全性と有効性が実証」されています。さらに、委員会がアヤワスカの醸造の事例で公言したとおり、こうした儀式は、一部のコミュニティの精神的・伝統的なアイデンティティと関係があるため、尊厳の側面を有しています。
9. 監督委員会の決定
監督委員会は、当該タイアップ投稿のコンテンツを残す旨のMetaの決定を無効と判断し、当該投稿を削除するよう求めます。
10. 勧告
コンテンツポリシー
1.Metaは、透明性センターおよびInstagramヘルプセンターで、「タイアップ投稿」ラベルの意味合いを明確にする必要があります。これには、「タイアップ投稿」ラベルの承認におけるビジネスパートナーの役割を説明することが含まれます。委員会は、Metaのブランドコンテンツポリシーが更新され、この点の説明が示されたことをもって、この勧告が履行されたとみなします。
2.Metaは、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定の文言で、「医薬品の使用を認める、またはその使用を宣伝する」コンテンツについては、その使用が「気分の高揚」をもたらす場合であっても、「医療現場での管理下」にある場合に限っては許可される旨を明確にする必要があります。また、「医療現場での管理下」が何を指すのか定義し、制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定で、医学的管理については、医学的診断に直接言及したり、医療提供者の免許や医療スタッフを参照したりすることで立証可能だと説明する必要があります。委員会は、Metaの制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定が更新され、この点の説明が示されたことをもって、この勧告が履行されたとみなします。
施行
3.現在、Metaはすべてのブランドコンテンツをブランドコンテンツポリシーに基づいて審査しているわけではないことを踏まえ、Metaは、「タイアップ投稿」の一部として作成されたコンテンツの審査が、適用されるすべてのポリシー(コミュニティ規定およびブランドコンテンツポリシー)に照らして適切に行われるようにするために、審査プロセスを改善する必要があります。特に、Metaは、大規模審査の審査担当者が、ブランドコンテンツポリシーに違反している可能性のあるコンテンツを、関係がある場合にはMetaのブランドコンテンツポリシーを適用でき、それを適用する訓練を受けたMetaの専門チームまたは自動システムに回すための経路を確立する必要があります。委員会は、改善した審査経路の相互関係をMetaが共有し、上述のポリシーに違反する可能性が高い場合に、関連するすべてのプラットフォームポリシー、コンテンツポリシーを適用できるようにする方法を示したことをもって、この勧告が履行されたとみなします。
4.Metaは、ブランドコンテンツポリシー(「以下のコンテンツの宣伝は禁止されています。[...]4.違法薬物や娯楽のための麻薬などの薬物および薬物関連商品」)、および制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定(「以下のコンテンツの投稿は禁止されています。[...]以下に該当するコンテンツ[...]非医療用薬物の購入、販売、取引、取引調整、寄付、贈答、または要求を試みるもの」)に基づくポリシーラインの施行を監査する必要があります。委員会は、薬物の有料広告に対する厳しい制限(ブランドコンテンツポリシーに基づく)、および薬物の購入、販売または取引の試みに対する厳しい制限(制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定に基づく)を課す明確かつ正当化できるアプローチをMetaが取っていると判断します。しかしながら、委員会は、これらのポリシーの施行が一貫性に欠けるものとなり得る兆候を認めています。これが事実かどうかを明らかにするため、Metaは、医薬品および非医療用の薬物に関してブランドコンテンツポリシーおよび制限されている商品およびサービスに関するコミュニティ規定が施行されている状況を監査する必要があります。その後、不備があれば、施行においてその不備を補う必要があります。委員会は、Metaがこの監査の手法と結果を共有し、当該監査によって明らかとなった施行上の不備を補う方法を開示したことをもって、この勧告が履行されたとみなします。
*手続きに関する注記:
監督委員会の決定は、5名のメンバーからなるパネルにより準備され、委員会の過半数の承認を得ています。委員会の決定は、必ずしもメンバー全員の個人的見解を反映したものではありません。
本事例決定のために、独立した調査が委員会に代わって委託されました。委員会は、地政学、信用と安全、テクノロジーを横断的に扱うアドバイザリー会社であるDuco Advisorsによる支援を受けています。このほか、ソーシャルメディアのトレンドに関するオープンソース調査に従事する組織、Memeticaによる分析の提供も受けました。